成績概要書                           (作成 平成11年1月)

課題の分類   北海道   畜産・草地   畜産   −
研究課題名:オランダおよび国内における搾乳ロボット利用実態と導入のための諸条件
        (搾乳ロボットに関する予備的研究)
        (先端システム導入調査研究)
予算区分:道費
担当科:根釧農試 研究部
     酪農第一科、酪農施設科、経営科
研究年度:平成9〜10年度
協力・分担関係:なし、

1.目 的
オランダおよび国内における搾乳ロボットの利用実態の調査を基に、国内における搾乳ロボット導入条件や導入時の問題点を整理する。

2.方 法

    ①オランダの導入農家および研究機関の実態調査

     平成10年7月4日〜7月19日(16日間)にオランダ国内の搾乳ロボット導入農家9戸、研究機関2ヶ所において搾乳ロボットの利用状況、牛舎レイアウト、乳生産量等の調査を行った。

    ②国内の導入農家および研究機関の実態調査

 国内の搾乳ロボット導入農家5戸、研究機関6ヶ所において搾乳ロボットの利用状況、牛舎レイアウト、乳生産量等の調査を行った。

3.結果の概要

    ①オランダの導入農家および研究機関の実態調査

    1)プロライオン社とリリー社の2社の搾乳ロボットがオランダを中心として実際の酪農家に100台以上導入されており、今後の普及がさらに進むと考えられる。

    2)搾乳ロボットは既存の牛舎に一部を改造して設置されており、牛舎レイアウトは各農家によって様々であったが、基本的にワンウェイ方式が採用されていた。

    3)搾乳ロボット導入時の淘汰頭数は牛群全体の0〜10%程度であり、その理由は乳頭・乳房形状のほかに高齢牛であり、牛群内の初産牛の割合も31〜54%と高いことから年齢が適応性の要因の一つであると考えられた。

    4)馴致方法に関しては、導入時の最初の1週間程度は24時間牛を搾乳ロボットに入れることによって、以前の定時搾乳のリズムを24時間搾乳できる自由搾乳のリズムに順応させていた。

    5)調査農家の305日成績では、乳量は8,078〜10,100kgであり、搾乳ロボット導入後、乳量は増加し、乳成分は変化しないという意見が多かった。乳房炎牛は減少すると述べた農家が多かったが、その具体的な数字は明らかでない(表1)。

    6)搾乳ロボットによって1日の搾乳時間は1〜2時間となり、搾乳作業はコンピュータ操作や自動搾乳できなかった牛の対応、メンテナンス作業に変わった(表2)。

    7)1日の平均搾乳回数は2.8〜3.1回であり、搾乳回数の増加とともに乳量と濃厚飼料量、非搾乳回数(搾乳室に入ったが搾乳しない決定が成された牛)が増加する傾向がみられた。

    8)搾乳ロボット導入理由は労働力問題の解決、規模拡大方法の一つの選択、新たな労働体系の採用による生産性の向上への期待であった。

    ②国内の導入農家および研究機関の実態調査

    9)N牧場では搾乳ロボットでティートカップの自動搾乳できない牛と自動装着できる牛とを分けて2群管理していた。

    10)プロライオン社製の国内取り扱い業者のコマーシャル農場であるR牧場では定時3回搾乳を行っており、オランダにおける同機種をもつ農家とは利用方法が異なっていた。

    11)B牧場の搾乳ロボットの利用方法はオランダの調査農家と同様であったが、搾乳回数が3.6回であり、4回以上搾乳される頭数が多かった。

    12)M牧場では導入してから2ヶ月経過していたが、初産牛や泌乳初期牛では1日の搾乳回数が4回以上と多い反面、高齢牛や泌乳後期牛では2回以下と搾乳回数の差が大きかった。

    ③導入のための諸条件

    13)搾乳ロボット導入にはワンウェイカウトラフィックや飼養管理方式の変更が必要である(表3)。

表1 オランダにおける調査農家の概要

表2 搾乳ロボットにおける管理作業

表3 導入のための諸条件

4.成果の活用面と留意点

1)搾乳ロボットの改良により利用方法、導入条件が大きく変化する可能性がある。

5 残された問題とその対応

1)①乳質の評価、②淘汰基準の作成、③牛舎管理作業の量的・質的評価、④飼養体系・利用方法の違いによる導入効果、⑤国内での搾乳ロボット導入による労働生産性、所得効果などの変化を対象とした研究、⑥外部支援組織など経営確立、などが必要である。