成績概要書        (作成 平成11年1月)

課題の分類:北海道  畜産・草地  畜 産   根釧農試
研究課題名: 牧草サイレージの調製条件とタンパク質分画との関連
(牧草サイレ−ジの蛋白質分解性および発酵品質に関する試験)
予算区分:道費
担当研究室:  根釧農試 研究部 酪農第一科
協力・分担関係:なし  研究期間:平成9〜10年度

1.目 的

牧草サイレージの水分含量、刈取時期、調製形態および添加剤の利用が、サイレージ発酵およびタンパク質分画に及ぼす影響を明らかにする。

2.方 法

 調査項目:化学組成、サイレージ発酵品質
        タンパク質分画 − 凍結乾燥したサイレージを用いて次の4分画を分析
        結合性タンパク質(CPb)、溶解性タンパク質(CPs)、
         非分解性タンパク質(CPu)およびNDF中CP(以下、NDFIP)

3. 成果の概要

  1. 水分含量55%以下のサイレージでは、水分含量の低下とともに、溶解性タンパク質(CPs)割合は減少し、結合性タンパク質(CPb)、NDF中CP含量(NDFIP)割合および非分解性タンパク質(CPu)割合は高まる傾向がみられた。水分含量が55%以上を越える場合では、水分含量にともなう変化は少ないと考えられた。(表1、図1)
  2. 出穂期に調製したサイレージの溶解性タンパク質(CPs)および非分解性タンパク質(CPu)割合は61%および24%であった。これに対し結実期に収穫調製したサイレージは、溶解性タンパク質(CPs)割合は54%、非分解性タンパク質(CPu)割合は31%と、原料草のステージの進行によりタンパク質分画は変化した。(表2)
  3. 2番草(1番草刈取後77日)は1番草(出穂期)に比べて、溶解性タンパク質(CPs)割合は低く、非分解性タンパク質(CPu)割合は高かった。この傾向は、ロールサイレージで大きかった。(表2)
  4. ギ酸添加により、サイレージ発酵が抑制される傾向がみられるとともに、NDFIPが増加し溶解性タンパク質(CPs)は低下した。(表3)
  5. 中水分ロールサイレージでは、越冬前利用に比べて越冬後は、溶解性タンパク質(CPs)は低く、非分解性蛋白質(CPu)は高かった。(表4) なお、ロールサイレージと細切サイレージのタンパク質分画については、差はみられなかった。
  6. サイレージの調製条件がタンパク質分画に及ぼす影響を表5に示した。

4.成果の活用面と留意点

  1. タンパク質分画を考慮した飼料設計を行う場合に有効である。
  2. 本試験で示したタンパク質分画値は、サイレージを凍結乾燥して分析した値であり、通風乾燥処理の場合に比べて溶解性タンパク質の値は高い。
  3. 非分解性蛋白質(CPu)は、酵素法で求めた値である。

5. 残された問題とその対応

  1. タンパク質分画に及ぼす排汁処理の影響の検討
  2. 通風乾燥(60℃)条件による値から凍結乾燥条件による値への補正式の検討
  3. タンパク質分画を考慮した効率的な飼料給与の技術確立