成績概要書                    (作成 平成11年1月)
課題の分類                
研究課題名:画像解析による米飯の白さ・つやの評価
      (極良食味米品種の早期開発、極良食味レベルの検定法開発)
予算区分:道費
担当科:中央農試農産化学部穀物利用科
研究期間:平成6〜12年度
協力分担:稲作部育種科、上川農試水稲育種科

1.目的
 白さおよびつやで表現される米飯の外観特性は、粘りや硬さといった物理的な食感とともに食味評価上の重要なファクターであるが、現在のところこれらを客観的に測定できる機器は開発されていない。そこで本試験では、米飯の外観特性である白さ・つやの評価のために、画像解析による新たな評価法を開発するとともに、極良食味品種選抜の検定法としての応用を目的とした。 

2.方法
1)選抜検定法としての測定条件検討:少量、多数の育成材料を同一条件下で比較評価するために、少量炊飯法、画像入力条件に関する詳細な検討をおこなった。
2)画像解析特性値による米飯外観特性の数値化:米飯画像の平均輝度値、つや面積(高輝度部画素数、つや強度(高輝度部平均輝度値)を測定パラメーターに設定し、官能評価による米飯の白さ・つやとの関連性を比較した。
3)北海道および府県産品種の外観比較と総合評価法の検討:画像解析による府県産品種との比較から、北海道米の外観評価をおこなった。また、3つのパラメーターを用い米飯の外観を総合的にイメージするための表現方法の検討をおこなった。

3.結果の概要  
◎米飯の白さ・つやの客観的評価を目的に、画像解析装置による新たな測定法の開発をこころみた。
1)米飯画像の輝度解析から、白さを評価するパラメーターとして平均輝度値を設定した(図1)。
2)ご飯のつやは周辺部に比較して一定以上の高い輝度を持つ部位であることが確認された(図1)。 また、つやの評価には量と強さ2つの要因が影響すると考えられ、これらのパラメーターとしてつや面積(輝度値185以上の画素数)およびつや強度(つや部分の平均輝度値)を設定した。
3)少量炊飯法、画像入力条件など測定条件の詳細な検討をおこない、少量の試料で安定的な測定をおこなうための測定スキームを作成した(表1)。
4)官能評価による米飯の白さおよびつやは、画像解析による平均輝度値およびつや面積と密接な関係が認められたことから、これらの値を米飯白さおよびつやの評価値とする事を提案した(図2)。
 
◎北海道米の現状評価および米飯外観の総合的評価法について検討した。
1)北海道うるち品種の炊飯米は、白さの点では府県産品種に近づいていると評価できるが、つやに関 しては明らかに劣っており、この点が外観上の重要な改善点であると考えられる(図3)。
2)ゆきひかりに比較して、それ以降に育成された良食味品種は、平均輝度、つや面積とも高く、食味とともに外観品質も向上していることが明らかとなった(図3)。
3)ダル、インデイカ系統を含む集団では、つや面積とつや強度の関係は一定ではなく、外観評価につや強度を含める必要があると考えられた。
4)米飯外観の総合的評価手法として、・平均輝度、・つや面積、・つや強度を3つの要素とした、トライアングルレーダーチャートを用いたところ、さまざまな米の外観的特徴がイメージしやすい形 で表現できた(図4)。


図1 画像解析による輝度分布に基づく米飯白さ・つや測定の模式図 

図2 米飯外観と画像解析特性値との関係


図3 画像解析による北海道、府県産品種の外観比較


図4 トライアングルレーダーチャートによる各種米飯のイメージ評価

4.成果の活用面と留意点
1)ここで開発した評価法は、育成材料の検定のほか、気象、土壌、栽培条件などによる米飯外観の違い、ブレンドのための指標などに応用できる。
2)他機関での応用に際して、測定機種、照明装置等が異なる場合は画像入力および閾値の設定に関して新たな条件検討が必要である。
3)具体的な測定値については、当面同一条件下での相対比較を原則とする。
 

5.残された問題点とその対応
1)米飯外観特性値と他の理化学的特性との関係解析
2)栽培環境(気象、土壌、栽培法)による変動性の解析
3)米飯流通段階での応用