成績概要書
研究課題名 米の簡易食味分析計の使用実態と改善指針
       (米の食味計の利用システム化試験)
担当 中央農試農産化学部
予算 受託(ホクレン)
担当科:中央農試農産化学部流通貯蔵科
担当者 
試験期間 平成9年〜平成10年
協力・分担関係  

1.目的 
道内には異なる食味計が導入され、米粒の蛋白含有率の測定等に利用されている。しかし、分析値がずれて現場で混乱している現状を踏まえて、食味計による蛋白含有率の測定値の状況を明らかにするとともに、これらの測定値を統一的に扱えるようにするための改善方策を明らかにしようとする。

2.試験方法
 1)食味簡易分析計測定値の実態  道内農協に導入された4機種による測定
   (1) 化学分析  蛋白含有率;ケルダール法 1g分解     1試料3点 
   (2) 供試米 きらら397、ほしのゆめ、あきほ 9年131点、10年92点
        普及センターを中心に農試、農協より集めた。
   (3)測定条件 場内野菜試験室 20±2℃
  食味計の調整:測定開始前(機器設置時)各メーカー
  調整用試料:平成9年は各メーカー持ち込み試料、平成10年は米麦改良協会の配布した道産米。
 2)現地使用実態調査
   (1)手合わせ測定(米麦改良協会)
   (2)アンケート調査
 3)測定誤差の要因検討
   (1)繰り返し測定
   (2)穀温
   (3)粒厚

3.結果の概要
1. 供試した4機種の蛋白測定値はいずれも化学分析値と明らかな相関関係が認められた。
 しかし、測定値間には機種間が認められ、4機種の測定値を合わせると蛋白含有率として1.5%もの違いが認められた。
2. 各機種毎に回帰式を作成し、それぞれの測定値の補正を行った。この結果、4機種を合わせた測定値のばらつきは減少し、化学分析値との差が±0.5%以内の測定値が90%以上となった。また、±0.3%以内の測定値は約80%あった。
3. 各農協による手合わせ分析では、同一機種でも測定農協間で大きな変動が見られた。
4. 測定を行う際の、室温等測定環境、穀温調整、測定回数、試料の採取範囲など測定条件の統一と確認を行うことの必要性が考えられた。
5. 食味計測定値の繰り返し誤差の大きさは機種により異なるが、測定値の精度向上のためには数回の反復が必要である。
6. 測定時の穀温の影響は比較的少ないものの認められ、また機種の違いにより異なる傾向が認められた。そのため測定条件として、できる限り同一条件(室温、20℃前後)に保つことが重要と考えられた。
7. 測定試料の粒厚による影響は、1.9mm未満のみを選別した場合は他の粒厚区分より高い値を示したが、粗玄米全体や他の粒厚区分では明らかな違いが認められなかった。
8. 今後の改善指針
 全道統一指標のもとに食味計測定値により米の差別化を図ろうとするならば、4機種が導入されている現状を鑑み、測定方法の統一を行い、機器の管理保守も同一レベルで行い、さらに厳重なチェック体制、組織を作る必要がある。このための体制について提案した。

                                         図 1  補正前後(10年)

         図2 補正による測定値の化学分析との偏差の変化


   表 1測定技術の向上と測定精度向上に向けた組織
    組織      基本的な業務(責務)
品質管理委員会 基準米の確保 基準米の配布 手合わせ分析試料の配付
補正勧告 測定技術指導
測定回数、試料採取方法の指示
農協(測定者)   測定環境の整備  測定環境(温度、穀温)、補正の記録
測定機の整備、基準米によるバイアス補正(メーカーの協力)
手合わせ分析結果の報告と補正(メーカーの協力)
測定回数、試料採取方法の遵守  

4.成果の活用面と留意点
1) 実際に米の食味計により品質区分を行う場合の参考とする
2) 普及センターに導入された機器も同一基準米による補正をおこなう事が望ましい。

5.残された問題点とその対応
1) 基準米の点数の検討 委員会で検討
2) アミロース測定精度の検証