成績概要書                          (作成 平成11年1月)

課題の分類 研究課題名:気象要因の解析に基づく低アミロ小麦の発生危険度の予測
       道産小麦の品質向上試験(パートⅢ)
         4.低アミロ小麦回避技術の確立
          1)低アミロ小麦発生予測システムの開発と簡易検定法の実用化
担 当 科:中央農試農産化学部穀物利用科
予算区分:受 託
研究期間:平成7−9年度
協力・分担関係:中央専技室
          上川農試研究部畑作科・専技室
          十勝農試研究部作物科・専技室
          北見農試研究部土壌肥料科・専技室

1.目 的

 登熟期の気象要因が成熟期および成熟期以降のアミログラム最高粘度に及ぼす影響を明らかにするとともに低アミロ小麦の発生予測法について検討する。

2.方 法

 1)低アミロ小麦発生に関する登熟期気象要因の解析

 (1)登熟期の気象要因解析試験(供試品種:チホクコムギ、ホクシン)

   A 気象処理試験:人工気象室を用いた低温低湿および低温高湿処理

   B 穂発芽処理試験:成熟期15日前頃から3〜4日毎に圃場から穂を採取し穂発芽処理

 (2)成熟期の低アミロ耐性変動試験(供試品種:チホクコムギ、ホクシン)

     登熟期の低温高湿処理×成熟期以降の穂発芽処理

 2)低アミロ小麦発生予測法の開発

 (1)低アミロ化影響指数の設定

 (2)低アミロ化影響指数に関する補正係数の設定(低アミロ化に関する気象要因の抽出)

 (3)予測法の適合度確認と低アミロ化影響指数累積値の評価

3.結果の概要

1)登熟期の湿潤状態が低アミロ化に及ぼす影響は期間が長いほど、時期が遅くなるほど大きくなった。また、成熟期にα−アミラーゼが活性化していない場合であっても低アミロ耐性は低下しており、その後のより短期間の湿潤状態によりα−アミラーゼが活性化する傾向が認められた。

2)登熟期の湿潤状態によるα−アミラーゼ活性推移の変化は次の3つに区分された。①成熟期15〜10日前に湿潤状態となった場合は、成熟期のα−アミラーゼ活性は十分に低下するが、成熟期以降のより短期間の湿潤状態により活性化する。②成熟期10〜5日前に湿潤状態となった場合は、成熟期のα−アミラーゼ活性は比較的高く維持されており、成熟期以降のわずかな湿潤状態により活性化する。③成熟期5日前〜成熟期に湿潤状態となった場合は、成熟期においてα−アミラーゼ活性は上昇傾向にあり、成熟期以降の湿潤状態でさらに活性が上昇する(図1)。
3)湿潤状態が低アミロ化に及ぼす影響を指数化した(低アミロ化影響指数)。
   低アミロ化影響指数=A×成熟期基準経過日数+B(図3)
   (チホクコムギ:A=0.011 B=0.201  ホクシン:A=0.006 B=0.160)

4)低アミロ化影響指数を気象条件(降水量、最高気温、日照時間)に応じて補正し、補正後の指数を成熟期15日前から湿潤状態になるごとに累積し、当該日の前日までの累積値により低アミロ小麦の発生を予測する方法を開発した(図2、表1)。また、全道のアミロ粘度の調査結果を用いて適合性を確認した(図4)。
5)低アミロ化影響指数累積値について、0.50未満はほぼ健全である、0.50以上1.00未満は低アミロ小麦の危険性がある、1.00以上はほぼ低アミロ小麦であると評価できた。
      図1 登熟期の湿潤状態によるα−アミラーゼ活性推移の変化
( (両矢印):湿潤状態継続期間     (太線):気象変動区     (細線):対照区 )


図2 低アミロ小麦発生予測法フローチャート


図3 低アミロ化影響指数と成熟期基準経過日数の関係

表1 低アミロ化影響指数に関する補正係数


図4 低アミロ化影響指数累積値とアミログラム最高粘度の関係

4.成果の活用面と留意点

1)低アミロ小麦発生予測法は低アミロ小麦発生の危険程度を予測するものであり収穫物の品質を推定するものではない。したがって従来の収穫開始時期の判定基準に基づき収穫可能となった圃場は速やかに収穫することを前提とする。
2)本予測法はチホクコムギ、ホクシンを対象としたものである。
3)低アミロ小麦発生時期を予測することにより適期収穫について指導する際の参考となる。
4)本予測法に用いる成熟期は圃場観察によって確認するものである。

5.残された問題とその対応

   低アミロ小麦の簡易検定法の実用化