成績概要書                        (作成 平成11年1月)
課題の分類
研究課題名:夏どりキャベツの内部成分の変動要因と指標値の策定
      (クリーン農産物の栄養性と機能性成分の評価)
予算区分:道 単
担当科:中央農試 農産化学部 品質評価科
研究期間:平成8〜10年度
協力・分担関係:

1.目 的
 キャベツの主要な栄養性・機能性成分含有率の実態と変動要因について検討するとともに、ビタミンC含有率について「指標値」を策定する。

2.方 法
1)内部成分含有率の実態 調査地点:南幌町(1996〜98年)、恵庭市(1998年)、千歳市(199 7〜98年)、計94点。収穫期:7〜10月。品種:ボール系「アーリーボール」,「プラディーボール」,「マヤボール」, 「マルシェ」。対象成分:ビタミンC,U、全糖、食物繊維(以下の試験も同様)。
2)内部成分含有率に及ぼす変動要因 
 a)生育に伴う内部成分含有率の経時的変化 場所:中央農試圃場。品種:「金系201号」。  作型:10月どり。定植後0〜90日の地上部を定期的に採取し、内部成分を分析した。
 b)生育時期別窒素供給と内部成分 場所:中央農試ガラス室。品種:「金系201号」。処理  期間:7月15日(定植)〜9月14日。養液栽培装置を用いて生育時期別に異なる濃度の窒素  供給(高200mg/L,低50mg/L)を行い、地上部生育量および内部成分含有率を調査した。
 c)窒素施用量と内部成分含有率の関係 場所:伊達市西胆振農業センター。品種:「北ひ  かり」(1996年),「金系201号」(1997,98年)。作型:7,8月どり(1997,98年),9,10月どり(19  96〜98年)。処理:標準区(施肥標準量N=22kg/10a)、30%減肥区(N=15.4kg/10a)、50%増  肥区(N=33kg/10a)、無窒素区(N=0kg/10a)。リン酸、カリは施肥標準量を施用。
3)ビタミンC簡易測定法の検討 抽出液の種類:5%メタリン酸、純水、搾汁原液。抽出方 法:ホモジナイザーによる磨砕、乳鉢による磨砕、ニンニク絞り器による圧搾。ビタミ ンC測定方法:高速液体クロマトグラフおよびRQフレックス。

3.結果の概要
1)現地調査の結果、キャベツの内部成分含有率(新鮮重100gあたり、以下同様)の平均値は、 ビタミンC34.3mg,全糖2.75g,ビタミンU2.89mg,食物繊維1.61gであった。
2)生育日数の経過に伴い、結球中のビタミンCおよび食物繊維含有率は減少し、全糖含有率は漸増した(図1)。また、ビタミンU含有率は結球肥大後期に急激に高まった。
3)結球重の増加によりビタミンCおよび食物繊維含有率は低下し、ビタミンU含有率は高まった(図2)。
4)生育時期別窒素供給試験および窒素用量試験の結果、高窒素濃度処理期間が長く、また 窒素施用量が増加するほど、結球重およびビタミンU含有率は高まり、ビタミンC,全糖および食物繊維含有率は低下する傾向にあった(表1)。また、ビタミンU含有率は作型による変動が大きく、9,10月どりよりも7,8月どりで高まった。
5)現地実態調査および各種栽培試験で得られた試料(477点)のビタミンC含有率の平均値 は34.3mgであった(図3,表2)。これらの点を勘案して、7〜9月どりキャベツの当面の改 善目標とすべきビタミンC含有率の指標値を35mgとした。
6)キャベツのビタミンC抽出はメタリン酸による磨砕抽出が望ましく、RQフレックス測定 値35以上で指標値(総ビタミンC含有率)をほぼクリアした。

 以上の知見を「内部成分含有率の向上に寄与する各種変動要因とその対応」(表3)と「キャベツ(7〜9月どり)のビタミンC含有率指標値と簡易判定法」(表4)としてとりまとめた。

4.成果の活用面と留意点
1)ビタミンC含有率の指標値は、技術開発上の最低値として利用を図る。
2)ビタミンC含有率測定において精度が必要とされる場合は、通常の分析方法を用いる。

5.残された問題とその対応
 内部成分含有率の非破壊分析法の検討