成績概要書                            (作成 平成11年1月)
課題の分類    北海道  生産環境  土壌肥料
研究課題名:花き土壌の養分実態と土壌診断指標
  (予算課題名:花きハウスの肥効調節型肥料と施用位置改善による負荷軽減効果)
予算区分 :補助(国費)
担当科:花・野菜技術センター 研究部 土壌肥料科
     北海道農政部農業改良課
研究期間 :平成10〜12年度
協力・分担関係:

1.目的
現在、北海道における花きハウスの土壌診断は未設定のため、野菜畑の基準値を準用しているが、施設(簡易主体)花きの土壌診断に支障をきたす場面もみられ、ニーズ的にも花き用の土壌診断基準値設定の要望が強いことから先ずここで指標値を示し、基準値作成の資料に供する。

2.方法
1).北海道における花きハウスの土壌養分実態(花野センター研究部土壌肥料科、滝川専技室)
  1.道央花きハウス土壌化学性の実態(石狩北部・・石狩北部農業改良普及センター)
  2.花き生育良・不良の土壌化学性比較(空知管内・・空知管内農業改良普及センター花き部会)
  3.花きの生理障害等発生土壌実態
2).花き土壌診断に関わる既往の成果
 (1)北海道における既往の成果
  ①S62年度指導参考事項(中央農試) ②H8年度指導参考事項(上川農試)など
 (2)他県における花き土壌診断指標・・静岡、神奈川、鹿児島、群馬、愛知、長野、栃木の7県
3).花き(切り花)の土壌診断指標(案)・・現行の野菜畑基準値をモデファイ

3.結果の概要
 本指標値(案)は、原則的には、現行(平成元年)の野菜畑基準値をモデファイしたが、実態調査結果、他県の基準値等を参考に作成した(表1)。
 ①作土層を対象し、先ず、PHはH2Oで6.0〜6.5とし、ユリ、リンドウについては、別扱いとした。
 ②電気伝導度(EC)は、施肥前と施肥〜植え付けまでを区別し、施肥〜植え付けまでの基準値はCECを基調に3段階設けた。
 ③有効態りん酸(P2O5)は、花き類はりん酸の増肥効果が少ない品目が多く、また、実態調査の結果でも過多な蓄積がみられるほ場が多く見られるので、10〜20mg/100g(トルオーグ法)に設定した。
 ④硝酸実態窒素(NO3-N)は、5g/100g以下とし、それ以上の場合は、残存窒素を評価し施肥対応する(土壌採取時期および作土層以下にも集積している場合の問題がある)。
 ⑤交換性の塩基類(CaO、MgO、K2O)の含量、石灰飽和度、塩基飽和度については、野菜の基準値を採用した。
 ⑥石灰・苦土(Ca/Mg)比は、4〜8(当量比)で野菜の基準と同じとしたが、苦土・加里(Mg/K)比については野菜の基準では2以上で範囲が示されていなかったが、本基準では2〜4の適性範囲を設けた(2県で設定され、また、カーネーションの葉先枯れ症に加里が関与していることが指摘され、Mg/K比が5程度で発生がみられているなどの理由により)。
 ⑦微量要素(B、Mn、Zn、Cu)については、現地実態調査の結果、各要素とも不足域のほ場は比較的少なかった。しかし、熱水可溶性ホウ素(B)は、適正範囲を大きく越えているほ場があり、今後、過剰症の発生を惹起する恐れもあるので、他県の基準値を参考に普通畑の基準を準用し設定した(他県においても花き生理障害の原因が微量要素の過不足を指摘している)

4.成果の活用面と留意点
 1)切り花栽培を対象とする。

5.残された問題点とその対応
 1)花き栽培における環境負荷軽減型の効率的施肥法の確立
 2)バラなどの長期栽培切り花の土壌および施肥管理法の確立
 3)土壌診断に基ずく施肥対応

表1.花き(切り花)栽培土壌の化学性診断指標
診 断 基 準 留 意 事 項 備  考
診 断 項 目 基 準 値
作土のPH
(H2O)
6.0〜6.5
  ユリ 5.5前後
リンドウ 5.0前後
電気伝導度
(EC)
施肥前:0.3ms/cm以下
施肥後〜植え付け時
細粒質土壌:0.8ms/cm以下
中粒質土壌:0.7ms/cm以下
粗粒質土壌:0.4ms/cm以下
  1:5(水)浸出
細粒質土壌:CEC
  25〜30me/100g
中粒質土壌:CEC
  15〜20me/100g
粗粒質土壌:CEC
  7〜10me/100g
有効態りん酸
(P2O5)
10〜20mg/100g   トルオーグ法
施肥前測定値
硝酸態窒素
(NO3-N)
5mg/100g以下 5mg/100g以上の場合は残存Nを評価し施肥対応 乾土(収穫後) 
交換性石灰
(CaO)
粗粒質土壌
100〜180mg/100g
CECの60%を越えないようにする   
中粒質土壌
180〜350mg/100g
細粒質土壌
280〜450mg/100g
交換性苦土
(MgO)
粗粒質土壌
20〜30mg/100g
CECの20%を越えないようにする  
中粒質土壌
25〜40mg/100g
細粒質土壌
30〜50mg/100g
交換性加里
(K2O)
粗粒質土壌
15〜25mg/100g
CECの10%を越えないようにする
(カーネーション:100mg)
 
中粒質土壌
15〜30mg/100g
細粒質土壌
25〜35mg/100g
石灰飽和度 40〜60%    
塩基飽和度 60〜80%    
石灰・苦土比
(Ca/Mg)
4〜8 バランスに注意する 当量比
苦土・加里比
(Mg/K)
2〜4 (カーネーション:1程度)
 
熱水可溶性
ホウ素(B)
0.5〜1.0ppm 高PH、砂質地、泥炭地は欠乏し易い。 熱水抽出法
易還元性
マンガン(Mn)
可溶性亜鉛(Zn)
可溶性銅(Cu)


2〜40ppm

0.5〜8.0ppm
連用すると過剰になり易い排水不良地
では、過剰害がで易い。
高PH、砂質土で欠乏し易い。
腐植が蓄積すると可溶化が低下する。
0.2%ハイドロキノン含有
中性酢酸アンモニウム液可溶
0.1N-塩酸抽出法(1:5)
0.1N-塩酸抽出(1:5)