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課題の分類
研究課題名:下水汚泥・牛ふん尿融合コンポストの肥効 予算区分: 担当科:花・野菜技術センター 研究部 土壌肥料科 十勝農試研究部立壊肥料科 研究期間:平成9〜10年 協力・分担関係:なし |
1．目的
下水汚泥と牛ふん尿の利用促進を図るために、成分特性および形状の異なる両者を混合して得られた融合コンポストについて、その分解特性および野菜、畑作物への肥効を明らかにする。
2．試験方法
1)供試コンポスト
①バーク融合コンポスト(以下、バークコンポスト);肉牛ふん尿(敷料は針葉樹系バーク)
と乾燥汚泥のコンポスト。混合比は乾物当たりで肉牛ふん尿バーク1:汚泥0.50。
②麦稈融合コンポスト(以下、麦稈コンポスト);乳牛ふん尿(敷料は麦稈)と乾燥汚泥のコンポスト。混合比は乾物当たりで乳牛ふん尿麦稈1:汚泥0.93.
2)キャベツによる窒素利用率試験(施肥窒素がない条件、花・野菜技術セ、平成9,10年)
現物コンポスト1t,2t/10a(−N)区、標準区、無窒素区を設置。品種「アーリーボール」。
1㎡枠、2反復。栽培期間は6月上句〜8月初め。
3)作物に対するコンポスト施用効果(施肥窒素などがある条件)
(1)キャベツ(花・野菜技術セ、平成10年)
現物コンポスト1t/10a施用に、窒素3㎏、6㎏/10aおよび窒素−リン酸−カリ=3-2-5㎏/10aを減肥した区を組み合わせ、標準区も設置。その他は2)と同じ。
(2)てんさい(十勝農試、平成9,10年)
平成9年:窒素−カリ=3-9.5㎏/10a減肥した区、減肥区に現物コンポスト1t,2t/10aを上積み施用した区などを設置。品種「モノエースS」。場内ほ場。
平成10年:同上の試験処理であるが、現物コンポスト施用量は0.5t,1t/10aに変更。
(3)小豆(十勝農試、平成10年)
化学肥料標準量施用区、および標準量施用区に現物コンポスト0.5t,1t/10aを上積み施用した区を設置。品種「エリモジョーウズ」。場内ほ場。
3．結果の概要
1)コンポストの成分特性:ともに窒素、リン酸、カリが適度なバランスで含まれている(表1)。
2)キャベツの窒素利用率(施肥窒素のない条件)
施肥窒素のない条件では、キャベツにおける現物コンポスト0.5t/10a施用での窒素減肥可能量はバークコンポストが0.5kg程度、麦稈コンポストが2kg程度であった(表2)。
3)作物に対するコンポスト施用効果(施肥窒素などがある条件)
①施肥窒素がある条件では、施肥窒素がない条件に比べて作物の窒素吸胆力が高まり、キャベツにおける現物コンポスト0.5t/10a施用での窒素減肥可能量はバークコンポストが1.5kg、麦稈コンポストが3㎏程度であり、リン酸、カリ減肥可能量は両コンポストとも1kg,2,5㎏程度であった(表3)。
②てんさいに対するコンポスト2t/10a施用は、窒素過剰で修正糖量が低下した(表4)。
③てんさいにおける現物コンポスト0.5t/10a施用での窒素減肥可能量は、キャベツ同様、バークコンポストが1.5㎏、麦桿コンポストが3kg程度である(表4)。
④小豆はコンポスト施用によって増収し、その効果は0.5t/10a施用より1t/10a施用でより大きかった(表5)。
4)以上のことから、現物コンポスト0,5t/10a施用による野菜、畑作物での窒素減肥可能量は、バークコンポスト(平均含水率38%、乾物当たり平均窒素2.7%)が1.5kg、麦桿コンポスト(平均含水率28.0%、乾物当たり平均窒素3.3%)が3㎏程度である。リン酸およびカリの減肥可能量は、両コンポストともリン酸1kg、カリ2.5㎏程度が妥当である。ただし、窒素施肥量の少ない小豆については、窒素減肥を行わない。
表１ コンポストの化学成分
（乾物当たり平均%、重金属はppm）
| サンプル | 水分 | N | P2O5 | K2O | Zn |
| バークコンポ | 37.6 | 2.7 | 4 | 1.7 | 373 |
| 麦稈コンポ | 28 | 3.3 | 5 | 1.5 | 543 |
| サンプル | Cu | Mn | Cd | As | Hg |
| バークコンポ | 155 | 745 | 0.9 | 2.1 | 0.5 |
| 麦稈コンポ | 299 | 425 | 1.7 | 4.4 | 0.4 |
表２ キャベツの窒素利用率（施肥窒素なし）
| 処理区 | コンポストからの Ｎ吸収量（g/㎡） |
Ｎ利用率 （％） |
||
| Ｈ９ | Ｈ10 | Ｈ９ | Ｈ10 | |
| 標準 | 12.5 | 11.5 | 55.5 | 52.1 |
| バークコンポ (−N)1) |
2.4 | 0.7 | 6.5 | 5 |
| 麦稈コンポ (−N)1) |
9 | 3.9 | 14.9 | 15.9 |
表３ キャベツの総重と養分吸収量
(減肥区にコンポスト上積み、平成10年）
| 処理区 | 総重比 % |
N g/㎡ |
P2O5 g/㎡ |
K2O g/㎡ |
| 施肥標準 | 1001) | 3.55 | 1.67 | 5.51 |
| バーク1t(-N3)* | 95 | 3.18 | 1.66 | 5.39 |
| バーク1t(-325)** | 102 | 3.17 | 1.47 | 4.29 |
| バーク1t(-N6) | 88 | 2.59 | 1.42 | 4.72 |
| 麦稈1t(-N3) | 95 | 3.64 | 1.63 | 5.39 |
| 麦稈1t(-325) | 99 | 3.39 | 1.5 | 4.93 |
| 麦稈1t(-N6) | 100 | 3.3 | 1.67 | 5.02 |
表４ てんさいの収量と窒素利用率
| 処理区 | 平成9年 | 平成10年 | ||||||
| 根重比 % |
修正糖量比 % |
N吸収量 kg/10a |
N利用率 % |
根重比 % |
修正糖量比 % |
N吸収量 kg/10a |
N利用率 % |
|
| ①化肥減肥 (-N3､K9.5)* |
100 (6.5t/10a) |
100 (999kg/10a) |
16.9 | - | 100 (5.9t/10a) |
100 (917kg/10a) |
15.1 | - |
| ②バーク+① | 101 | 97 | 18.1 | 6.7 | 106 | 106 | 16.3 | 15.1 |
| ③バーク2倍+① | 105 | 95 | 25.6 | 24.2 | 103 | 100 | 18.2 | 19.6 |
| ④麦稈+① | 106 | 97 | 23.8 | 30.1 | 107 | 105 | 17.3 | 27.5 |
| ⑤麦稈2倍+① | 104 | 88 | 28.6 | 25.6 | 108 | 106 | 19.7 | 28.8 |
| ⑥無窒素 | 59 | 63 | 6.5 | 66 | 68 | 6.4 | ||
| ⑦窒素標準 | 101 | 103 | 19.5 | 109 | 107 | 17.1 | ||
表５ 小豆の収量と養分吸収量（平成10年）
（施肥標準量区にコンポスト上積み、平成10年）
| 処理区 | 子実重 kg/10a |
同左比 % |
N吸収量 kg/10a |
N利用率 % |
| ①施肥標準 | 223 | 100 | 7.71 | - |
| ②バーク0.5t+① | 236 | 106 | 8.43 | 13.8 |
| ③バーク1t+① | 268 | 120 | 9.37 | 10.5 |
| ④麦稈0.5t+① | 278 | 125 | 9.89 | 20.8 |
| ⑤麦稈1t+① | 291 | 130 | 10.41 | 16.9 |
| ⑥無窒素 | 125 | 56 | 4.46 |
4．成果の活用面と留意点
1)コンポスト(高分子系汚泥)の施用にあたっては、乾物汚泥そのものでO.5t/10a以上の施用は避けるなど「都市下水汚泥の農地施用基準」を遵守すること。
2)施用するほ場については、簡易モニタリング法(昭和63年指導参考)を活用して全亜鉛のモニタリング調査を実施すること。
5．残された問題とその対応
1)コンポストの成分量および含水率の均一性
2)土壌中重金属の蓄積