成績概要書                   (作成 平成11年1月)
課題の分類
研究課題名: 酸性硫酸塩土壌の露出した切土法面の緑化工法
予算区分: 土地改良事業費
研究機関: 北海道開発局開発土木研究所
担当科: 土壌保全研究室
担当者:
協力分担: 留萌開発建設部

1. 目的
 酸性硫酸塩土壌が露出した切土法面を緑化する場合、酸性害から植物を守る対策が必要であり、法枠工法(法面に法枠を打設し、枠内に20cmの置土を行う工法)を採用する場合が多いが、施工費が高い(16,000円m-2)。そこで、新たに考案した施工費の比較的安価な2種類の緑化工法を試験施工してその効果を検討し、酸性硫酸塩土壌が露出した切土法面に対して有効かつ経済的な緑化工法の確立を目指す。

2. 調査方法
1)試験地:留萌支庁管内 酸性硫酸塩土壌の露出した新第三紀シルト岩層 の切土法面
2)施工法:遮水シ−ト工法(第1図左)
切土法面に張り付けた遮水シ−ト上に、厚層基材吹付工により厚さ5cm
の植生基盤を形成。 施工費:8,000円m-2
中和工法(第1図右)
切土法面に炭カル吹付層を形成し、その上に厚層基材吹付工により厚さ
5cmの植生基盤を形成。 施工費:5,000円m-2
3)調査項目:容積重、土壌水分、孔隙分布、pH、交換性塩基、易酸化性イオウ、水抽出
性硫酸イオン、土壌断面、植物の生育状況

3. 結果の概要
1)両工法とも植生基盤の硫酸による強酸性化は確実に抑止する。
2)遮水シ−ト工法は、遮水シ−ト上の植生基盤のみに植物の根群域が制限されるため、植物に十分な水分を供給できず(第2図)、植物の生育を維持できない。
3)中和工法の酸性硫酸塩土壌層では、易酸化性イオウが酸化し硫酸が生成するが、深さ0〜15cmでは硫酸は集積せず、炭カル吹付層からカルシウムの供給を受けるため、深さ0〜15cmの強酸性化は抑制される(第3図)。
4)中和工法では、酸性硫酸塩土壌層の深さ0〜15cmの強酸性化が抑制されるため、この領域に植物が根を伸長させることが可能となり、植生基盤を含めて厚さ20cmの根群域が形成される。
5)中和工法では、上述の根群域の働きにより、植物が酸性硫酸塩土壌層からも水分吸収が可能となるため、水分不足とならず(第2図)、植物が良好に生育する。
6)中和工法の施工費用は 5,000円m-2と、既存の法枠工法(16,000円m-2)よりはるかに安価である。

4. 成果の活用面と留意点
 中和工法の施工にあたっては、以下の点を考慮する。
1)湧水が認められない海成酸性硫酸塩土壌の切土法面および盛土法面において、適用が 可能である。
2)中和剤は植生基盤の強アルカリ化を防ぐため、炭カルを使用する。
3)炭カル投入量の算定にあたっては、過酸化水素水処理により易酸化性イオウを完全に 酸化させた土壌試料を供試する。

5. 残された課題とその対応
1) 湧水が認められる法面における施工法の確立