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発生実態調査 : 苗腐病の主な病原菌の割合、苗立ち不良の原因としての関与程度
接種菌の生態・形態 : 菌の培養基上での生育適温、接種条件、遊走子等の形成
接種方法 : 菌糸懸濁液浸漬接種、菌糸間接接種、遊走子接種
1)発生実態調査
① | 3年間の分離結果を品種別にまとめると苗腐病に対する品種間差は認められなかった。 |
② | ほ場における Pythium と Achlya の分離率の年次間差は一定の傾向は認められなかった。 |
③ | Achlya の分離率には圃場間差が認められ、全く分離されない圃場が多かった。 |
④ | Achlya が単独で分離されることは殆どなく、Pythium との混合感染が多く、苗腐病の主因は Pythium であった。 |
⑤ | 苗腐病は鞘葉が伸長してからの感染が多く、出芽前枯死は他の原因によるものと思われた。 |
① | 湛水・低温下では無接種でも苗立ちは低下した。播種直後の低温は鞘葉伸長期よりも苗立ちが悪かった。これは従来の見解(鞘葉伸長期が最も低温に弱い)と異なった。 |
② | 無湛水では1週間程度の低温では苗立ちは良好であった。また、湛水下でも酸素不足とならなければ苗立率は高くなった。したがって、湛水による酸素不足が苗立ち不良に及ぼす影響は大きい。 |
③ | 苗立ちに対する影響は、湛水>>空気中(酸素が重要)、出芽時低温>鞘葉伸長期低温(ただし、Pythium を接種した場合は、鞘葉伸長期低温>出芽時低温)となる。 |
① | Pythium (fillamentous)の増殖は平板はV8A、液体培地は白米培地、培養温度は平板、液体培地ともに20℃が適当であった。 |
② | 白米液体培地の組成は白米粒数100粒/水1000ccが適当であった。 |
③ | 遊走子形成 : ペトリ液培養後2日目には菌糸の肥大および胞子のうの形成が、4日目には遊走子の放出が、6日目には多数の遊走子が観察された。 |
④ | 遊走子形成は白米液体培地は7〜10日間、ペトリ液は7日間前後の培養が適当であった。 |
① | 浸漬接種は稲に菌糸が絡み塊となるため検定には不適であった。菌糸浮遊(播種覆土後接種)、菌糸間接および遊走子接種は抵抗性検定に利用できると考えられた。 |
② | 検定には無催芽種子は不発芽が多く不適で、芽長5mm程度のもが適当であった。 |
③ | 接種期間は、おおよそ低温処理「10℃暗黒8時間-15℃照明16時間変温」は10日間、引続き 行う高温処理「15℃暗黒-18℃照明16時間変温」も10日間が適当であった。 |
④ | 播種深度は0.5〜1.0cm、水深は1.0〜1.5cmが、育苗土としては砂が適当であった。 |
① | 菌糸浮遊液接種ではItalica Livorno、Arroz Da Terra、Dunghn Shali、胆振早稲、96DSW1、96DSW3、緑系90595、ゆきひかり、菌糸間接接種ではDung han Shali、96DSW1、96DSW3、 96DSW5、96DSW6の発病がやや低い傾向にあったが、遊走子接種ともに、さらに検討を要す。 |
② | 菌糸浮遊液及び遊走子接種を混みにして見るとDunghn Shali、緑系90595の発病個体率は低い傾向にあった。 |
① | Achlyaの増殖は平板はCMA、液体培地は白米培地、培養温度は平板、液体培地ともに20℃が適当であった。 |
② | 増殖液体培地として白米100粒/水1000ccが適当であった。 |
③ | 遊走子形成は白米液体培地で7〜10日間、ペトリ液は7日間前後の培養が適当であった。 |
④ | 抵抗性検定 : 菌糸浮遊接種で50〜100%の発病個体率であった。反復した検定がないので、さらに、検討を要す。 |
◎菌糸浮遊液接種の手順 | ◎遊走子接種の手順 | ||||||||||||||||
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1) | 菌糸浮遊液接種は苗腐病抵抗性選抜の一手法として使用する。 |
2) | 検定の使用に当たっては温度管理や種籾の出芽程度の違いで発病が回避される傾向があるので留意する。 |
3) | 標準品種を決め比較の対照とする。 |
1) | 低温下における稲の生理(低温発芽性) |
2) | 溶存酸素と種籾の発芽、伸長 |