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① 直播栽培と移植栽培における病害虫の発生の比較
(1) | 場内試験(平成5〜7年):直播栽培用品種「きたいぶき」の直播栽培と移植栽培、移植栽培用品種「きらら397」の移植栽培の間で病害虫の発生程度や発生時期を比較した。 |
(2) | 現地調査(平成8年)空知管内の6軒の農家において、直播栽培圃場と隣接する移植栽培圃場の間で病害虫の発生程度や発生時期を比較した。 |
品種「ゆきまる」の直播栽培と移植栽培それぞれにイネドロオイムシの発生密度を変えた区を設定し、葉の食害程度と収量の関係を調査した。 |
(1) | 直播栽培田におけるイネミギワバエの産卵は、水面に接した「浮き葉」が多い場合に助長された(図1)。 |
(2) | イネドロオイムシの発生量は、移植栽培の中に直播栽培が点在する状況下では、直播栽培で少なく、また発生が遅くなった(図2)。 |
(3) | ただし直播栽培の稲の方がイネドロオイムシ幼虫の食害に対する補償作用が小さく、低い食害葉率(被害程度指数1前後)でも減収しやすいという結果が得られた(図3、図4)。 |
(4) | 移植栽培ではイネドロオイムシの食害の影響は主に穂数の減少や稔実歩合の低下に現れるとされているが、直播栽培では一穂籾数の減少に現れた。 |
(5) | フタオビコヤガ第1回幼虫の発生量は、イネドロオイムシと同様に直播栽培で少なかった。 |
(6) | アカヒゲホソミドリメクラガメおよび斑点米の発生量は、直播栽培用品種では慣行の移植栽培品種よりも多くなった(表1)。現地調査圃場では直播栽培と移植栽培で同じ内容の防除を行っており、斑点米率は基準以下に抑えられていた。 |
(7) | 紋枯病の発生は、直播栽培で少なくなる傾向が認められた(表2)。 |
(8) | 以上のことから、直播栽培における防除対策をまとめると、イネミギワバエは第2回成虫の発生期(6月)に浮き葉が多い場合には移植栽培に準じて防除を行う必要がある。イネドロオイムシは、移植栽培では防除不要な発生レベルであっても直播栽培では防除が必要な場合がある。フタオビコヤガは、第2回以降の幼虫に対しては移植と同様に防除を行う必要がある。アカヒゲホソミドリメクラガメの防除は、当面のところ慣行通りで問題はないと考えられた。紋枯病については減農薬できる可能性がある。 その他の病害虫は、慣行移植栽培に準じて防除を行う。 |
直播栽培における病害虫防除の目安として生産現場で活用する。
直播栽培におけるイネドロオイムシの要防除水準の設定
直播栽培における本田後期病害虫の発生の特徴と防除対策