(作成 平成11年1月)
成績概要書
研究課題名:水稲害虫の防除要否判定のための発生モニタリング法
 〜イネミズゾウムシ・アカヒゲホソミドリメクラガメ〜
 (水稲病害虫の要望所水準の設定と簡易モニタリング法の開発)  
予算区分:道 費
研究期間:平8−10年度
担当科:上川農試 研究部 病虫科
中央農試 稲作部 栽培第二科
協力・分担関係:

  1. 目 的
     クリーン農業では病害虫の発生に応じた防除を行うこと、すなわち発生対応型防除が基本である。そこで、イネミズゾウムシについて簡便な防除要否判定法を開発する。また、アカヒゲホソミドリメクラガメ(以下、カメムシと略記)について、捕虫網すくい取り調査場所の選定方法と調査場所における調査内容を具体化し、精度向上と省力化を図る。

  2. 方 法
    (1)イネミズゾウムシ : 上川農試、旭川市、当麻町。見取り法による成虫・食害の発生分布調査、及び分布様式の集計解析。
    (2)カメムシ : 中央農試、北村、長沼町、美唄市。捕虫網すくい取り法による成幼虫の発生分布調査、及び分布様式の集計解析。

  3. 結果の概要
    (1)イネミズゾウムシ
     ①要防除水準は成虫密度によって設定されていて、成虫密度の調査適期は本田での成虫発生最盛期であり、4月1日からの積算温度(13.8℃以上)で70日度〜100日度の期間にあたる。
     ②要防除水準(成虫数 0.5頭/株)に達しているかどうかを知るための成虫密度調査の必要株数は約120株である(図1)。
     ③要防除水準を成虫食害株率70%と設定する(図2)ことにより、成虫対象の調査より簡便になり、必要調査株数も 50株になる(水田中央部の畦畔から反対側の畦畔まで、等間隔に5カ所で10株ずつ、合計50株)。
     ④あらかじめ、水田中央部の畦畔から移植方向と直角に10列(10株)の成虫の食害状況を把握して、10株中1株でも食害を受けていない場合は、要防除水準に達しないので上記モニタリング調査を省略できる。
    (2)カメムシ
     ①畦畔・農道等では、カメムシは好適植物(スズメノカタビラ・レッドトップ)の多いところに多いので(図3)、発生モニタリング調査(捕虫網すくい取り)は、好適植物の多いところを選び、場所を固定して行うのが良い。
     ②水田内では、カメムシは均一かつランダムに存在する(図4)ので、発生モニタリング調査(捕虫網すくい取り)は、任意の場所を選んで行えば良い。

  4. 成果の活用面と留意点
    (1)イネミズゾウムシ
     ①発生対応型防除を実践するために、簡易モニタリング法として、生産現場で活用する。
     ②本モニタリング法は水田全面に対する防除要否判定に用いる。
     ③成虫発生最盛期の有効積算温度による予測法は、発生予察情報の精度向上に活用する。
    (2)カメムシ
     ①発生対応型防除および発生予測システムを実践する際に活用する。
     ②高度な減農薬法および簡便なモニタリング法を開発する際の資料とする。

  5. 残された問題点とその対応
    (1)イネミズゾウムシ
     ①水田内周辺防除法を活用するためのモニタリング法の開発。
     ②米の品質面に及ぼす害虫食害の影響解明。
    (2)カメムシ
     ①低密度発生時の簡便で正確なモニタリング調査法(捕虫網すくい取り)の策定。
     ②ハーブの導入等で畦畔等の植生を改変してカメムシの発生を抑制する方法の検討。