(作成 平成11年1月)
成績概要書
研究課題名: RIPA法(迅速免疫ろ紙検定法)による作物ウイルス病の簡易検定技術
予算区分:道 費
研究期間:平成7−10年
担当科:中央農業試験場 病虫部 病理科
協力・分担関係:病害虫防除所 予察課

  1. 目 的
     植物のウイルス病の診断法として近年開発されたRIPA法(迅速免疫ろ紙検定法)を,ばれいしょ採種圃場におけるYモザイク病の検定,および野菜類におけるモザイク病の診断に利用する技術を確立する。

  2. 方 法
    1)ウイルス検出のための検定時期と検定部位の検討
    2)現地圃場における発病株からのウイルスの検出
    3)RIPA法試薬類および検定サンプルの保存方法の検討

  3. 結果の概要
     RIPA法(表1)によるばれいしょのYモザイク病(PVY)および野菜類のモザイク病(TMV,CMV)の簡易検定技術を確立した。RIPA法の検定手順は以下のとおりである。
     ①チューブに5mm角に切り取った検定葉を入れ,緩衝液中で磨砕する。
     ②この磨砕液に5mm幅の検定用ろ紙の先端をつけ,ろ紙の1/2から2/3まで吸いあげる。
     ③ろ紙を引き上げ,はさみで下端約3mmを切り落とす。
     ④このろ紙を別のチューブに入った着色ラテックスにつける。
     ⑤着色ラテックスが吸いあがり,ウイルスが含まれていると赤いバンドが検出される。
     検定時間は約10分で,操作も極めて平易である。また,特別な機材の必要もなく,圃場での検定も可能である。1回の検定に供するサンプル数は10点程度が適当である。
     本試験で明らかにした使用方法によってELISA法とほぼ同程度の検定精度が得られる。
    1)ばれいしょからのPVYの検出
    (1)採種圃場におけるPVY感染株の抜き取り作業に活用できる(表2)。
    (2)検定時期は開花〜開花3週間後までとする(図1)。
    (3)検定部位は,中位葉の複葉内の先端の小葉の葉身基部とする(図2)。
    (4)1株について2ヵ所検定する。
    2)野菜類からのTMV,CMVの検出
    (1)TMV,CMVによるモザイク病の診断に利用できる(表3)。
    (2)検定時期は定植2ヶ月までとする。
    (3)検定部位は,病徴が認められる上〜中位葉である。
    (4)1株について2カ所検定する。
    3)RIPA法試薬類および検定サンプルの保存法
    (1)着色ラテックスは,原液で4℃で保存すれば半年間は使用可能である。
    (2)検定ろ紙は,白色ラテックスを固定後,4℃乾燥状態で保存すればほぼ半年間は使用可能である。
    (3)検定用サンプルは,4℃で14日間まで保存可能である。

  4. 成果の活用面と留意点
    1)RIPA法(迅速免疫ろ紙検定法)によるばれいしょのPVYおよび野菜類のTMV,CMVの簡易検定技術を確立した。圃場における検定も可能で,10分で完了できる。
    2)ばれいしょ採種圃場におけるPVY感染株の識別に利用する場合,検定時期を開花〜開花3週間後までとし,1検体あたり2カ所検定する。
    3)野菜類のTMV,CMVの診断のための検定は,定植2ヶ月までの初期感染株を対象に用いる。
    4)RIPA法に必要な試薬類一式は,必要に応じて配布できる。

  5. 残された問題点とその対応
    なし