成績概要書(作成 平成11年1月)

課題の分類
研究課題名:軟弱地盤水田における硬盤層造成による地耐力向上対策
 (寒冷地大規模水稲作における省力・安定化生産技術)
予算区分:補助(地域基幹)
担当科:中央農試農業土木部 生産基盤科
研究期間:平8〜12年度
協力・分担関係:中央農試農業機械部 農業機械科

1.目的
 水田では切り土、盛り土を伴う大区画整備事業が進められており、局所的にはトラクタの走行が不可能な軟弱地盤水田が出現している。その対策として、硬盤層造成が地耐力向上に及ぼす影響を検討する。

2.試験方法
1) 試験地と土壌
 深川字メム6号線山5線、山崎 兼雄氏圃場、細粒グライ土
2) 硬盤層造成
 平成4年に大区画水田として整備した圃場に平成6年春耕前に火山砂を用いた硬盤層を造成した。構造はトラクター作業幅として4.5m、作土を20cm剥ぎ、下層に火山砂をブルトーザで敷き均した。硬盤層の厚さを15cmと20cmの2タイプ造成した。
3) 調査方法
 施工後、水稲を栽培し造成後3〜5年目にかけ生育・収量、土壌の理化学性及び地耐力の測定を行った。

3.結果の概要
1)水田内管理作業に大型トラクタ(表4)を利用することを前提としてトラクタの走行が難しい軟弱地盤水田に地耐力の向上対策として硬盤層を造成し、その効果を検討した。
2)硬盤層造成で作土の物理性をみると透水性、減水深は高まる傾向にあった(表1)。
3)造成時の形状は5年後も維持されていて、硬盤層の土壌は硬く、トラクタの走行に支障はなかった。また耕盤層の厚さは15cmで十分と考えられた(図1)。
4)硬盤層の上では、籾/わら比が高くなり、収量が増加し、食味も向上した。これは硬盤層によって生育後期の窒素吸収が抑制されたためと考えられた(表2)。
5)硬盤層の資材としては粒度分布が不良で、細粒分は僅少が、または欠如しており、締固め度合いが良〜優で、排水性の良い砂が最適と思われた(表3)。



4.成果の活用面と留意点
1)湛水中の地耐力が弱い泥炭土を除く水田に適用する。
2)硬盤層造成資材は粒度分布が不良の砂で細粒度は僅少かまたは欠如している山砂を用いる。
3)造成幅は作業機種に応じて設定する。
4)硬盤層造成に伴う施肥管理等栽培管理に対する配慮は必要ない。
5)深耕等による造成硬盤層の作土への混入を避ける。
6)硬盤層造成圃場は水稲単作を続けることを前提とする。

5.残された問題点とその対応
1)造成硬盤層を必要とする地耐力の基準を明らかにする。
2)泥炭土における硬盤層造成法。