成績概要書(作成 平成11年1月)
課題の分類
研究課題名:大区画水田における長辺方向管水路取水の有効性
(寒冷地大規模水稲作における省力・安定生産技術)
予算区分:補助(地域基幹)
担当科:中央農試 農業土木部 農村環境科
研究期間:平成7〜10年度
協力・分担関係:なし

1.目的
 水田の区画を拡大することにより代かき時などの水管理において、取水時間や用水量の増大を招く事態が見受けられる。そこで、対策の一つとして、長辺方向に設置した管水路で取水することにより、用水量の節減などに与える効果を実証する。

2.方法
1)試験地:大区画水田(場所〜深川市、面積〜1.7ha、土壌〜礫質褐色低地土)
2)管水路概要:管水路延長〜263.1m、口径〜250mm、勾配〜1/516、材質〜塩化ビニル、用排兼用の機能(図1)

3.結果の概要
1)試験ほ場(深川市)は礫質褐色低地土であり、透水性の大きな圃場である(図2)。
2)代かき取水時において、ほ場の短辺側からの取水(水口2箇所)では用水量がかなり大きくなり、また灌漑強度を3倍に上げても取水時間の短縮(約70%)が見られたものの、用水量はほとんど変わらなかった(表1)。
3)代かき時におけるほ場の短辺側からの取水において、水足が前進するための必要水量(一定時間内に水足が延びた面積でその時間内の用水量を割った数値)が、水口から50mを過ぎると250mmを越え、さらに200mを過ぎると1000mm以上必要とした。これは、ほ場の透水性の大きな部分の影響と考えられた(図3)。
4)代かき時におけるほ場の短辺側からの取水では、部分的に水足が衰える箇所が見られ、特に、縦軸の40〜70mで顕著であったが、長辺方向管水路からの取水では、水足が概ね順調に進み、著しく改善される様子が認められた(図4)。
5)ほ場の長辺方向に埋設した管水路からの代かき取水(水口4箇所)においては、短辺側からの取水と比較して(3カ年平均)用水量で80%、取水時間で75%の削減が図られた(表1)。この削減率の大きさは、ほ場が透水性の大きい褐色低地土であるというほ場条件が大きく影響しているものと考えられる。
6)管水路における4箇所の水口のうち、2箇所(No.1,No.3〜図4)で水管理を行ったが、収量に対する取水の影響は少ないと推察され、地力ムラなどの影響が大きいと考えられた(表2)。



4.成果の活用面と留意点
1)代かき時の用水量の削減や取水時間の短縮の方法として有効である。
2)本管水路は、水口の影響を緩和する上でも有効である。また、代かき時の用水量の削減や取水時間の短縮などの効果を最大限発揮させるためには、礫質褐色低地土などのような透水性が大きいほ場で効果が高い。

5.残された問題とその対応
1)管水路の掃砂機能と堆砂量の定量的な把握。
2)落水時の排水時間の削減等効果の確認。