成績概要書(作成 平成11年1月)
課題の分類
研究課題名:水稲乾田直播におけるレーザー均平機の作業性能と均平効果
      (寒地における大規模乾田播種早期湛水生産技術システムの実証)
予算区分:実用化促進(地域総合)
担当研究室:北海道農試 総合研究部 総研1チーム
担当者:大下泰生・粟崎弘利・渡辺治郎・湯川智行・平岡博幸
研究期間:平成8〜11年
協力・分担関係:なし

1.目的
 水稲の乾田播種早期湛水栽培(乾田直播)においては発芽・苗立ちの安定、斉一性の確保が重要であり、この方策として圃場の均平性の向上が不可欠となっている。均平作業を高精度かつ高能率におこなうためにレーザー均平機が開発され、積極的に営農へ導入されているが、効率的な作業方法や均平性の評価法については十分に確立されていない。そこで、レーザー均平機の作業性能を明らかにし、乾田直播における均平の効果、さらには均平作業の推定法について検討する。

2.方法
1)レーザー均平機の概要:トラクタけん引式、作業幅3m、運土量約1m、レーザー発光器発光距離200m(半径)、受光センサ受光幅20.5cm(上下)。
2)所要動力・制御特性試験:北農試圃場(淡色黒ボク土、水田復元予定畑、前作小麦)
 調査項目はけん引力、走行速度、滑り率、排土板高さ等。
3)作業能率・水稲苗立ち試験:美唄市・妹背牛町栽培実証圃場(泥炭土)および北農試圃場、調査項目は均平作業前および作業後の圃場高さ、作業時間、苗立ち数等。

3.結果の概要
1)均平作業能率は走行速度1.0m/sで10a当たり約11.1分であり、均平作業前の最大高低差9cm、標準偏差1.9cmの圃場を最大高低差5.8cm、標準偏差1.2cmに平準化できる(図2〜3)。
2)レーザー均平機の動力特性は、けん引力が約2000kgf(19.6kN)、作業速度1.5m/sにおけるけん引動力が約30PS(22.1kW)であり、トラクタのけん引係数を約60%とすると機関出力50PS(37kW)、機体重量3t以上のトラクタに装着する必要がある。
3)排土板の高さ制御特性は上昇・下降速度30cm/s以上、応答遅れ0.29sであることから均平作業の基準高さに対して排土板を±3cm以内に維持するためには0.8m/s以下で走行する必要がある。実作業では土壌の緩衝作用や均平機の慣性力により排土板の上下動が 緩和されるため走行速度1.25m/sにおいても実用的な均平精度が得られる。
4)乾田直播では最高位から5cmを越える低位部で苗立ち数が減少するめ、均平作業では 標準偏差で1.2cm(最大高低差6cmまたは高低差5cm以内に95%)以内に均平化する必要 がある(図4)。
5)均平作業の効率化と作業計画作成ために、①高低分布が正規分布する水田、②圃場の 長辺方向および短辺方向にそれぞれ格子状に地ならしする縦横走行方式、③1回の地な らし作業の所要時間10分/10aを条件として、均平作業を行った後の最大高低差、標準偏 差および高さ分布割合を推定する均平作業モデルを作成した。このモデルを用いること によりにより作業前の最大高低差から所要の均平性(標準偏差1.2cm)が得られるまでの 作業行程数および作業時間を推定できる(図5)。

4.成果の活用面と留意点
1)乾田直播の均平作業の効率化、苗立ちの安定化に役立つ。また、他の栽培様式における均平作業の資料となる。
2)均平作業面積および作業時間の予測が可能となり、作業計画の作成に活用できる。
3)高低の分布が偏ったり一定の傾斜のある圃場では縦横走行方式が適用できないため、分布状態に応じた運土経路を別途検討する必要がある。

5.残された問題とその対応
 運土計画や均平精度および作業時間を最適化するための作業計画支援技術が必要であ る。また、作土層の減少や均平機の走行による土壌硬化等が水稲の生育に及ぼす影響について検討する必要がある。