成績概要書(作成 平成11年1月)
課題の分類
研究課題名:水稲直播用種子生産のための機械収穫乾燥技術
(水稲直播用種子生産のための機械収穫乾燥技術の確立)
(水稲直播用高品質種子生産のための省力栽培法の確立)
予算区分:道費(補助)
担当研究室:中央農試 農業機械部 機械科、稲作部 圃場管理科
 植物遺伝資源センター 研究部 資源利用科
研究期間:平成7〜10年度
協力・分担関係:なし

1.目的
 水稲直播用極早生品種の発芽率を低下させない機械収穫乾燥条件を明らかにする。

2.方法
1) 供試品種    直播用極早生品種「きたいぶき」
2) 供試稲の栽培法 成苗ポット25日育苗による移植栽培
3) 供試コンバイン 水稲種子用自脱コンバイン R1-551、汎用コンバイン CA600
4) 供試乾燥機 静置乾燥 :実験用熱風乾燥装置、循環乾燥 :循環型乾燥機 SDN-8A 
5) 試験期日、収穫法と乾燥条件

6) 調査項目
収穫損失、収穫籾組成、籾水分、温度、乾燥速度、籾損傷、胴割れ、発芽率、発芽勢、平均発芽日数
発芽調査条件(シャーレ濾紙100粒2反復、13ml、明条件、塩水選1.06)
温度25℃(発芽勢は置床後4日目発芽率)
温度15℃(発芽勢は置床後11日目発芽率)
H7からH9は翌年3月調査、H10は12月調査

3.結果の概要
1) 種子用自脱コンバインによる「きたいぶき」の収穫損失は籾水分26.0、27.2%の時1.9〜5.6%であった。内訳はほとんどが短桿を原因とする扱ぎ残しによる未脱で、ささり・飛散損失は0.4〜0.8%であった。収穫で生じた子実の損傷(破砕粒)割合は、籾水分が26.0〜33.4%の条件で最大0.2%であった。
2) 手刈りはさ掛け区の発芽率は刈取り水分の高低に拘わらず95〜100%と高いのに対し、コンバイン収穫籾の発芽率は刈取り水分が高いほど低く、刈取り水分27%以上ではきわめて低いものが多かった。発芽率95%を確保するためには刈取り水分を27%未満とすることが必要である。
3) 発芽率は乾燥開始水分27%未満ではいずれもほぼ95%に達していたが、毎時乾減率が0.75%/hを超えると発芽率が95%未満、0.85%/h以上で90%未満と、乾燥速度が大きいと発芽率の低下する事例があった。安全を見込めば水稲原種栽培管理基準の毎時乾減率0.6%以下を守ることが望ましい。
4) 15℃の低温発芽率は機械収穫がはさ掛けよりも明らかに劣った。低温発芽率の低下を抑えるためには自脱コンバインの使用条件(刈取り水分、扱ぎ胴回転数)の検討とともに脱穀方式や充実度の高い種子の選別法の検討が求められる。


5.成果の活用面と留意点
1)「きたいぶき」について 種子用自脱コンバインを使用して種籾を収穫する際、籾の発芽率95%を確保するためには刈取り水分を27%未満とすることが必要である。
2)「きたいぶき」の機械乾燥に際し、籾の発芽率95%を確保するためには、穀温30℃以下、毎時乾減率0.6%以下の基準を遵守する。

6.残された問題点とその対応
1) 低温での発芽率及び苗立率の低下要因の解明。
2) 低温での発芽率及び苗立率を低下させない種子用コンバインの使用条件、損傷が少ない脱穀方式の検討。
3) 低温での発芽率及び苗立率の低下をより抑制できる乾燥法(二段乾燥など)の検討。
4) 充実度の高い籾の選別法の検討。
5) 他品種についての検討。