成績概要書(作成 平成11年1月)

課題の分類
研究課題名:低動力型散気管方式を用いた乳牛ふん尿処理技術
予算区分:民間共同
担当:根釧農試 研究部 酪農施設科、エムエスケー東急機械株式会社
研究期間:平成9〜10年度
協力分担関係:なし

1.目的
 低コストに臭気を軽減させるために、動力を小型化・効率化できる散気管方式について検討を行う。

2.方法
1)生スラリーの曝気試験
 別海町のN牧場の7分割(槽No.1-1〜1-4,2-1〜2-3)してある地下貯留槽にビニールチューブ製の散気管とゴム製の逆流防止型のアジテータを各槽5個設置した。コンプレッサのモータは3kWで、電磁弁で10チャンネルを制御でき、通風を連続的に10本の配管に切り替えることができる。夏期の曝気試験ではスラリーを水道水で水分93%まで希釈し、曝気した。8月5日から8月8日までは24時間曝気をし、その後9月1日まで1時間につき15分曝気を行った。冬期曝気試験では 原料を希釈せず、11月18日から12月4日まで24時間連続曝気、〜12月25日まで12時間連続、〜1月7日まで6時間連続曝気を行った

2)固液分離液分の曝気試験
 根釧農試総合試験牛舎より排出された乳牛ふん尿を固液分離した液分を原料とした。原料は1日11m3を半地下のスラリー貯留槽(W8m×L9m×H3m)に投入し、14日間で162m3投入した。0.75kWのブロアで、1時間につき各チャンネル(1ch・3ch:ディフューザ、2ch・4ch:散気管)を各々10分間運転(計40分間)、残りの20分間を休止状態とし曝気を行った。
 測定項目:水分、粘度、pH、DO(溶存酸素量)、ORP(酸化還元電位)、ふん尿成分

3.結果の概要
1)生スラリーの曝気試験のうち、夏期の曝気試験では水分は低下し、粘度は上昇した。DOは上昇したが、ORPに大きな変化はなく、-300mV以下であった。冬期間の曝気試験では1-4槽の粘度が1×10mPa・s以下まで低下した。また、pHはいずれの槽でも低下した。曝気終了後、1-4槽の臭気強度は10000になり、原料に近い1-1槽の10000〜50000に比べ、やや小さくなったが、固液分離液分の処理液と比較すると低下は小さかった。

2)固液分離液を用いた曝気では曝気中のスラリーの温度は曝気開始1か月後に最高23℃まで上昇した。このとき貯留槽から泡が溢れた。曝気中の水分は96%前後、ORPは-450mVから-350mV、pHは8.0から8.6に上昇、DOは泡が溢れたあとは0.3mg/L〜0.37mg/Lの範囲で安定していた。粘度は原料で50mPa・sであったが、その後減少し、40mPa・s以下になった。泡は、20リットルのオイルを投入して、消泡した。原料の臭気強度は50000であったが、曝気2ヶ月後で積算通気量が貯留容量の約100倍に達した時点で1000にまで減少した。このときの体積あたりの積算電力量は3.7kWh/m3でエジェクタ方式の1/4になった。この期間に全窒素量は約8%減少した。

3)臭気や成分変化を判断すると、固液分離液に比べ、生スラリーの曝気効果は小さかった。固液分離液の積算通気量が貯留容量の約100倍に達した時点で乾物積算風量比(積算風量/乾物重)は2.6m3/kgになったが、生スラリーではこの値に達するのは困難なので、固液分離した液分を使うことが前提条件となる。

4)散気管に詰まりが生じ、通気量が小さくなり、通気静圧が大きくなった。スラリーの粘度、比重が水よりも大きいことや詰まりや配管の圧力損失、供給電圧の低下などの影響で、公表性能より曝気能力が低下することが推測されるので、貯留深さの2倍の水中静圧で必要空気量の4割増の能力を有するブロアを選択する必要がある。





4.成果の活用面と留意点
1)散気管で曝気を行うときは固液分離した液分を使う。
2)臭気軽減を目的に曝気をする場合は積算通気量を貯留容量の100倍にする。
3)貯留深さの2倍の水中静圧で必要通気量の1.4倍の通気能力を有するブロアを選択する。
  ブロアの能力 : 静圧 「貯留深さ(mm)×2(mmAq)」のとき、通気量
  1.4×(100×有効貯留容積(m3)/(1日の曝気時間(h)×曝気日数(日)×60))(m3/min)
4)発泡が著しいときは、食用油等を貯留容量の0.05%加えることで、消泡が可能である。

5.残された問題とその対応
1)曝気時のアンモニア揮散防止技術
 糞尿プロジェクト パートⅡで検討予定