成績概要書             (作成 平成11年 1月)

課題の分類
研究課題名:農協・第3セクターの地域支援型受委託における料金設定と評価
      (コントラクターの運営方式に関する調査研究)
予算区分:共同研究(地域農研)   担 当 科 :中央農試 経営部 経営科
                         十勝農試 経営科
                         根釧農試 経営科
研究期間:平8−9年度      協力・分担関係: な   し
 

1.目 的
 農協や第3セクターによる「地域支援型受委託」において、受委託の持続した展開の前提となる適正な料金設定のあり方を検討する。

2.方 法
 ①「地域支援型受委託」における料金設定の特質の整理、②てん菜移植・収穫作業における受委託の現状と現行料金水準の整数計画法等による評価、③水稲ラジコンヘリ防除作業および飼料収穫調製作業の受託標準費用算定

3.結果の概要
 1)「地域支援型受委託」を「地域の農業経営の維持展開の手段として、地域農業政策の一環として行われる受委託」と定義した。「地域支援型受委託」は公共的性格と企業的性格を同時に有し、料金設定においても多くの農業経営の委託需要創出と受託組織の収益性確保の両立が求められる。農業経営(委託者)重視のもとで、決定された料金水準の変更は難しく、受託組織の費用算定と料金設定は慎重におこなう必要がある。
 2)てん菜の移植・収穫作業の現行料金水準は、農業経営の期待収益を高めるが受託組織は採算性を得られない。料金値上げは、低料金で受託可能な農家請負の参入や、委託の判断基準となる農家の自家作業時のコストとの乖離拡大と需要縮小に結びつく。受委託の継続には、料金水準と受託コストの格差が補填される必要性がある。
 3)第三セクターによる水稲無人ヘリ防除の標準受託費用を農家請負との対比のもとで算出した。第三セクターでは、①オペレーターの労働時間の社会的制約のもとで、時期的に集中する委託作業をこなすため、天候不順時にも作業がなされ墜落事故が避けられない、②農家請負の場合変動費となる労賃が、第三セクターでは固定費となる、等から、著しく高コストとなる。
 4)根釧(牧草細切サイレージ)、十勝(牧草細切サイレージおよびコーンサイレージ)、天北(牧草細切サイレージおよび乾草)を想定し、飼料収穫調製作業と堆肥散布・運搬作業受託時の受託費用を試算した。現状では、堆肥散布・運搬作業等周辺作業の稼働率はおよそ50%以下であるが、これらの稼働率をあげることで、単位面積・時間当たりの作業費用は低下できる。

表1 てん菜作作業受託の費用
注:収穫①は自走式2畦用ハーベスタ、②はけん引式1畦用を使用。
○農協等の受託費用は、農家請負よりも高コストで、現行料金水準をも上回る。

表2 無人ヘリ防除の標準受託コスト
注:*=内訳はオペ2人、助手1人
**=無人ヘリライセンス取得経費
○第三セクタータイプは農家請負よりも高コストで、補助金を前提とする圧縮費用でも現行料金水準を上回る。

表3 飼料収穫調製作業の受託費用低減の試算
 ○収穫調製作業の稼働率100%の場合、堆肥運搬・散布作業の稼働率を60%への引上げにより、各作業の受託費用は低減する。
 
4.成果の活用面と留意点
 試算数値は特定の条件下におけるものである。利用には、地域の実情に即した修正・検討が必要となる。
 
5.残された問題とその対応
 「地域支援型受委託」の持続的展開に不可欠な、受委託における費用管理のあり方の解明が必要である。