成績概要書          (作成 平成11年1月)
課題の分類
研究課題名 低コスト堆肥化施設の開発
      (低コスト堆肥化機械・施設の開発)
予算区分 道  費
担  当 根釧農試 研究部 酪農施設科
研究期間 平成6〜10年度
協力分担 ふん尿プロジェクト

1.目 的
 飼養頭数の増加、敷料不足によって糞尿水分の低下が不十分で高水分のまま、糞尿が堆肥盤に排出されるようになり、牛舎周辺には非常に取り扱いにくい糞尿があふれている。そこで、堆肥舎床・壁面構造の改善によって糞尿の水分低下を促進して、糞尿の取り扱い性を改善する技術を確立する。

2.方 法
1)れき汁排出促進型堆肥舎モデルの開発 ①片屋根堆肥舎 ②パイプハウス堆肥舎
2)「"O"パイプ+砕石+エキスパンドメタル」床の箱形発酵槽でのれき汁排出性
3)堆肥舎用浸出壁のれき汁排出効果 床面
4)固液分離固形分の堆肥化試験
5)堆肥舎被覆資材耐久性
6)堆肥の乾物分解率 図1 "O"パイプ断面
(塩ビ製、開溝部15mm)

3.結果の概要 
1)開発した片屋根堆肥舎の床構造(図2)は既製のコンクリートパネル(高さ1.5m、幅1.8m)を擁壁として使用し、5m間隔に"O"パイプ(図1)を敷設し、その左右1m幅、厚さ15cmの範囲に砕石(φ20)を敷き詰める。さらにその上に枠付エキスパンドメタル(190.5cm×99.5cm)を敷いたものである。れき汁は砕石、"O"パイプを通り、擁壁の外側に埋設してあるU字溝へ流れ、貯留槽に入る構造である。
2)パイプハウス堆肥舎(図3)の擁壁はL型コンクリートパネル(高さ1.8m、長さ2m)を使用し、パネル間に"O"パイプを1.2m間隔で5本敷設する。被覆資材として糸入りビニール(糸入り農ビエース0.15)を用いる。"O"パイプは水勾配をとり、片側の妻面に設置してあるU字溝に接続する。根釧農試に建設したパイプハウス堆肥舎は幅9m、長さ12m、有効面積93m3で建設コストは2万円/m2で、通常の床構造を持った片屋根堆肥舎の建設コスト4万円/m2に比べ、2万円/m2安い。
3)「"O"パイプ+砕石(20cm厚)+エキスパンドメタル」の床の箱形発酵槽ににわら混入堆肥(水分87.45%)を約6t堆積した。堆積後、16日目と30日目に切り返しを行った。その結果、44日間で堆肥水分が約4%低下した。また、減少水分の約3割がれき汁として床から排出された(表1)。れき汁の水分は95.6〜98%、粘度は10〜39mPa・sであった(図4)。
4)水分87%わら混入堆肥を用いてを床と浸出壁からのれき汁量を計測したところ、浸出壁からの排出量は水分減少量の2%であった。
5)糸入ビニールの引張り強度は暴露後の方が暴露前より大きくなったが、弾性は小さくなった。パイプハウスに使用している糸入りビニールは建設後約4年経過しているが、劣化による損傷は見られない。
6)原料水分75%以上の堆肥の乾物分解率は夏期間で0.2%/日、その他の期間で0.1%/日となった。


図2 れき汁排出促進型片屋根堆肥舎


図3 れき汁排出促進型パイプハウス


図4 れき汁の粘度と水分

4.成果の活用面と留意点
1)れき汁排出促進型堆肥舎では、2週間に1度切返すことで0.1%/日水分が低下し、その約3割排出されることを考慮し、れき汁貯留施設を増築する。れき汁は尿と同様に取り扱う。
2)片屋根堆肥舎は2棟を向かい合わせで、パイプハウス堆肥舎は複数棟を建てることで効率的な切返し作業が可能になる。
3)"O"パイプの末端は内部を掃除できるよう、開放させておく
4)堆肥舎の側壁に浸出壁を用いても積極的な水分低下は見込めないが、雨や雪が吹き込む構造の堆肥舎では壁側に雨水が溜るので、浸出壁を用いるとそれらを排除できる。

5.残された問題とその対応
 1)低コスト堆肥化機械の開発