成績概要書                     (作成 平成11年1月)
課題の分類:北海道 畜産草地 農業経営 十勝農試
        北海道 畜産草地 畜産草地
研究課題名: 分散処理型堆肥流通支援システムの機能と経済性
  (堆肥流通に向けた固形状ふん尿の処理・利用技術導入の経営経済的評価)
(稲作・畑作・園芸地帯における堆肥受け入れ体制及び流通システムの成立条件の解明)
予算区分:道費(糞プロ)
担当科:十勝農試 研究部 経営科
研究期間:平9〜10年度
協力・分担関係:根釧農試 研究部経営科

1.目的
 畜産経営におけるふん尿問題及び耕種経営における堆肥投入不足の問題を軽減するため、堆肥の流通を促進することが必要になってきている。
 ここでは、堆肥流通に向けた地域的取り組みのうち、分散処理型システムの機能、経済性と課題を明らかにする。

2.方法
1)管内における糞尿・堆肥流通の概況把握:既存資料の収集と分析
2)堆肥流通支援システムの仕組み、成果、費用及び課題等:事例調査と分析
3)堆肥及び麦稈利用に関する意向等:配票調査(酪農専門経営31戸、畑作専門・畑作野菜複合経営25戸)とその分析

3.結果の概要
1)対象事例は、堆肥の切返しと麦稈及び堆肥の流通とを組み合わせることにより、糞尿の地域内循環を促進しようとするものである。システムの事務局的機能は農協が担っているが、地域の企業と連携を組むことで、オペレータと機材を有利に確保している。
2)小麦を作付けしている経営の67%が有畜経営に麦稈を供給しており、面積換算では全小麦面積の43%になる。麦稈を導入している経営の大部分は酪農経営であるが、戸数割合は68%に達している。畑専・畑野菜経営1戸当たりの供給量は70個、酪専経営1戸当たりの導入量は90個であり、全体の流通量は6,100個あまりである。(図1)
3)酪専経営のうち堆肥を供給しているのは61%程度で、1戸当たり供給量は約265t、また堆肥を導入している畑専・畑野菜経営では1戸当たり約269tを導入している。酪専経営と畑専・畑野菜経営の間の堆肥の総流通量は、約8,300tと推定される。(表1)
4)堆肥切返しの作業日数は85日、1日当たり作業時間は5.7時間であるが、農協が時期的に集中するように調整している。総作業時間は480時間で、そのうち乳牛飼養経営が60%を占め、1戸当たり作業時間も多い。切返し回数が1回の場合平均作業時間は3.9時間、2回の場合は6.7時間である。(図2、表2)
5)切返しの作業料金は時間当たり8,000円であり、一般会社の受託料金と比較すると、1,500あまり低い料金設定である。時間当たり処理能率を100t程度とみると、t当たりの切返し料金は80円(農協・町の助成を見込むと農家負担は50円)となる。
6)本システムにおいて、堆肥を利用するための切返し費用及び運搬費用を試算すると、運搬の必要のない酪専経営では1回切返しの場合85円/t程度、畑専・畑野菜経営では運搬料金の負担が大きく5kmで450円強、10kmでは820円/t程度となった。(表3)
7)このシステムは、比較的安い費用で、麦稈の流通と切返しによって堆肥の有効な利用に一定の貢献をしているとみられる。課題としては、運搬費用の低減をはかること、協力会社との関係を良好な状態に維持すること、堆肥流通のメリットを追求するとともに畜産経営と耕種経営との相互理解を深めること、があげられる。


4.成果の活用面と留意点
・耕種経営と畜産経営(特に酪農)とが混在する地域で同様のシステムを構築する際に参考となる。

5.残された問題とその対応
・集中型処理方式の機能と経済性については糞プロパートⅡで検討の予定