成績概要書                (作成 平成12年1月)
研究課題名:にんじんの品種特性Ⅲ
       (地域の振興方向に対応した野菜の品種特性調査)、
       (野菜新品種導入促進事業)
予算区分:道 費
担当科:北見農試 研究部 園芸科
試験期間:平成10〜11年度
協力・分担関係:農産園芸課

1.目 的
  民間育成品種について、作型、地域適応性をふまえ、品質特性等を加味した品種特性を調査し、 産地における品種選択の資を提供する。さらに、現地からの要求の高い、春まき栽培で問題となっ ている抽台性に関する試験も合わせて取りまとめる。

2.試験研究方法
 (1)試験実施場所及び年次
  1)北見農試(平10、11) 
  2)帯広市(帯広市農業技術センター:平10、11)、北桧山町(北桧山町農業センター:平10)、斜里町(斜里町農業研究センター:平10、11)、伊達市(伊達市西胆振農業センター:平10、11)、富良野市(富良野農業協同組合:平10、11)
 (2)耕種概要(北見農試)
年度 作期 播種期 収穫期 栽植密度(cm) 施肥量(kg/a) 一区
面積
(㎡)
反復 備考
畦幅 株間 条数 P2O5 K2O
平成10 4.23 8.10 30 10 1 1.2 4.2 1.2 6.0 2 べたがけ40日間
5.26 9.14 30 10 1 1.2 4.2 1.2 6.0 2  
6.25 10.14 30 10 1 1.2 4.2 1.2 6.0 2  
平成11 4.27 8.13 30 10 1 1.2 4.2 1.2 6.0 2 べたがけ56日間
6. 1 9.21 30 10 1 1.2 12 1.2 6.0 2  
6.22 10.7 30 10 1 1.2 12 1.2 6.0 2  
平成11年度の北見農試の作期Ⅱ・Ⅲは、新畑につきリン酸多投。

3.結果の概要
  (1)北見農試において2年間供試し、各作期の評価が標準品種並からそれ以上であった品種及び系統は以下のとおりであった。
  作期Ⅰ(春まき)では、「ベーターリッチ」の評価が高く、また「美澄」も評価がやや高かった(表1)。「改良光彩2号」及び「JT201」は同等の評価であった。「ベーターリッチ」は各地域 農業センターにおいても各作期で供試されているが、根長がやや長く、ほとんどの地域農業センターで耐抽台性、収量性ならびに品質面において標準品種よりも優れていた。「美澄」は各地域農業センターでの供試例は少ないが、規格内収量が極めて多く、規格内率も年次を通して高く収量性に優れており、品質面も標準に優っていた。
  作期Ⅱ(晩春まき)では、「ベーターリッチ」及び「美澄」が標準品種よりも優れており、「改良 光彩2号」が標準よりもやや優れていた(表1)。また、「千浜五寸」、「JT201」及び「べによ し五寸」は標準と同等の評価であった。「ベーターリッチ」は根長がやや長く、耐抽台性・品質と もに優れたが、規格内収量は春まき栽培よりやや少なくなる傾向がみられた。「美澄」は耐抽台性にやや優れ、青首がみられず、外皮色・内部色・肌の粗滑などの品質面については標準よりも優っていた。
  作期Ⅲ(初夏まき)では、標準品種よりも優れている品種・系統は「UB201」のみであった (表1)。標準品種並と評価される品種・系統は、「寒太郎五寸」、「千浜五寸」、「改良光彩2号」及 び「べによし五寸」であった。「UB201」は耐抽台性であり、標準品種よりも収量性がやや優り、外皮色と肉色の品質が優れていた。「寒太郎五寸」と「千浜五寸」は外皮色と芯色が優れたが、収量性がやや劣った。「改良光彩2号」の規格内率は標準よりもやや劣ったが、平均一根重が上回り、収量性は標準並であった。「べによし五寸」は収量性と外皮色がやや劣ったが、耐抽台性と肌の粗滑がやや優った。

表1 品種特性総括表1)
作 期 品種及び系統名
 
草姿
 
肥大の
早 晩
抽台の
多 少
青首
 
収量性
 
根 型
 
外皮色
 
肉 色
 
芯 色
 
肌の
粗滑

(春まき
栽培)
向陽二号(標準) や直 や早 くさび
改良光彩2号 や開 や早 くさび
ベーターリッチ や円筒
JT201 や直 や早 くさび
美澄 や直 くさび
寒太郎五寸 や直 や早 くさび

(晩春ま
き栽培)
向陽二号(標準) や直 や早 くさび
改良光彩2号 や直 や早 くさび
ベーターリッチ や早 くさび
JT201 や直 や早 くさび
美澄 くさび
寒太郎五寸 や直 や早 くさび
千浜五寸 や直 や早 くさび
UB201 や直 や早 くさび
べによし五寸 や直 や早 くさび

(初夏ま
き栽培)
向陽二号(標準) や直 や早 くさび
改良光彩2号 や直 や早 くさび
寒太郎五寸 や直 や早 くさび
千浜五寸 や直 や早 くさび
UB201 や直 や早 くさび
べによし五寸 や直 や早 くさび
抽台の多少、青首、収量性、外皮色、肉色、芯色および肌の粗滑の評価は、◎(無、良、濃)
− ○(少、や良、や濃)− □(中)− △(や多、や劣、や淡)− ×(多、劣、淡)の5段階で示した.


図1 春まき栽培(平成11年)における抽台率の変化

A:早期から抽台し、収穫期の抽台率は70%を
  越える品種群.
B:早期から抽台するが、抽台率の推移は品種
  群Aよりもやや遅く、収穫期には抽台率が
  60%程度である品種群.
C:収穫期まで抽台率が20%程度で推移する
  品種群.
D:抽台率はやや低く、収穫期の抽台率が10%
  程度である品種群.
E:抽台がみられない品種群.

(2)平成11年の春まき栽培における抽台率の変化は図1のように表され、抽台率の推移する傾向によって5つの品種群に大きく分類することができた。2カ年を通して抽台が全く認められなかった品種は、「ベーターリッチ」、「紅晴五寸」、「ななか五寸」、「べによし五寸」で、ごく少程度の発生がみられたものは「寒太郎五寸」、「JT201」、「美澄」であった。

4.成果の活用面と留意点
にんじんの産地における品種選定時の資料となる。

5.残された問題点とその対応
(1)品質面や内部成分について改良が進んでいる現状に対応するため、さらに新たな品種及び系統での特性を検討する。
(2)早期出荷をねらった春まき栽培で問題となっている抽台性について、より再現性のある結果を得るため、環境制御下において生育期毎の耐抽台性を検討する。