成績概要書            (作成平成12年1月)
研究課題名:トルコギキョウの秋季出荷栽培法の改善
       2.短日処理の効果
      (トルコギキョウの秋季出荷作型の開発)
予算区分:道費
担当科:花・野菜技術セ 研究部 花き第二科
研究期間:平成8〜11年度
協力・分担関係:

1.目的 道内の秋季採花栽培における、短日処理の効果について検討し、栽培の一助とする。

2.方法
1)は種期別の生育(平成10、11年)
   平成10年:は種 4/21、5/1、5/11、定植 6/15、6/25、7/6
    平成11年:は種 4/12、4/21、5/1、5/10、5/19 定植 6/11、6/17、6/28、7/6、7/12 
2)短日処理育苗(人工気象室)の生育への影響(平成8、9,10年)
  ①高夜温での短日処理育苗の効果(平成8年) [日長:8、12、16h、昼温;25℃(6時〜18時)、夜温;21℃ ] 品種「あずまの波」「天竜ホワイト」、は種期5/20、処理期間6/25〜8/1、定植期8/1 ②高夜温での短日処理育苗の効果(平成9年) [日長:8、12、16h、昼温;25℃(6時〜18時)、夜温;21℃、 日長8h・高温(昼温;30℃、夜温;25℃)] 品種「あずまの波」「アロハライトピンク」「天竜ホワイト」、は種期5/2、5/20、処理期間5/21〜6/25、7/9、定植期6/25、7/9 ③短日・夜冷育苗の効果(平成10年)[日長8h*夜温(15、18、21℃)、日長16h*夜温15℃、昼温;25℃(6時〜18時)] 品種「あずまの波」「アロハライトピンク」「エクセルホワイト」(以下の試験同じ)、は種期5/1、5/15、定植期6/25、7/9
3)育苗、定植後の短日処理効果(平成10、11年)
  ①短日処理育苗(平成10年)[日長8h(9時〜17時)、無処理]、は種期5/1、5/15、処理期間5/1〜6/25、7/9、定植期6/25、7/9 ②短日処理による開花調節(平成11年)[処理法(育苗・本圃)1. 無処理 、2.(短・無処理)、3.(短・短;20日)、4.(無・短;30日)、5.(短・短;30日)、6.(短・短;40日)、短日処理(日長8h・9時〜17時)]、は種期5/1、5/15、定植期6/28、7/12

3.結果の概要
 1)は種期別の生育
 5月中旬以降は種の生育、品質が劣る結果となった。秋採花栽培のは種期は、開花時期を考慮しなければ、5月上旬までがは種の適期と考えられる(表−1)。
 2)短日処理育苗(人工気象室)の生育への影響
 高夜温(21℃)育苗ではロゼットの発生がみられる。しかし、短日処理によりロゼットの発生を軽減でき、形質確保が可能であった(表−2)。また、低夜温の短日処理で開花が抑制され、切り花長が長くなった。
 3)育苗、定植後の短日処理効果
 育苗(15℃〜)での短日処理で、開花期の抑制、切り花重・長、茎径の増加等認められ、育苗中、並びに定植後の短日処理で、秋採花栽培で問題になる早期開花とそれに伴う形質不足が改善された。すなわち、短日処理により1ヶ月以上の開花抑制が可能である。①品種では中生で処理の効果が高い。②は種期は5月上旬、育苗短日処理(15℃〜、8h日長)と、定植後短日処理(8h日長)とする。③[育苗短日処理]で7日前後、[育苗+定植後20日短日処理]か[定植後のみ30日短日処理]で20日前後、[育苗+定植後30日短日処理]で30日前後、[育苗+定植後40日短日処理]で50日程の開花抑制が可能であった(表−3、4)。
 以上、秋採花(10〜11月)の栽培では、年、品種、は種期により開花早晩、品質等生育面で差が見られ、高温年では開花が早まり9月中の採花となる。そこで、生育面で劣り不安定な5月中旬以降は種を避け、5月上旬は種とし短日処理を組み合わせることで、開花時期を調節する。 その目安を図−1に示す。これは高温年の平成11年の結果を基にしているので、品種、その年の気象経過等により変動するので注意する。

表−1 は種期別の生育(平10、11年)

は種期 平10年 平11年
切り花長
有効
花蕾数
切り花長
有効
花蕾数


4/21 62.9 12.4 62.5 13.7
5/1 65.2 13.2 55.2 12.7
5/10.11 49.5 6.8 44.0 9.5


4/21 80.9 11.5 68.1 20.4
5/1 83.9 12.2 65.2 16.9
5/10.11 61.3 8.9 48.2 10.0


4/21 73.7 10.1 73.1 19.4
5/1 78.5 10.4 64.9 11.7
5/10.11 59.5 6.3 51.1 8.3

4/21 65.2 8.6 57.0 8.0
5/1 65.5 9.3 56.8 8.4
5/10.11 (55.0) (2.1) 44.1 5.9

表−2 高夜温育苗での短日の効果(平成9年度、5月2日は種)

日長処理 採花ま
で日数
切り花長
分枝数 有効
花蕾数
ロゼット率


8h 104 53.1 3.4 8.1 6.3
12h 107 47.8 3.1 6.2 8.6
16h ロゼット 35.1 2.5 2.7 68.6
高・8h ロゼット 50.9 3.5 7.0 47.6


8h 110 67.1 5.0 13.5 0
12h 115 66.1 4.4 8.9 5.9
16h 117 57.9 3.6 8.2 21.2
高・8h 127 55.0 4.2 7.3 32.1

8h 112 60.9 2.8 4.1 0
12h 113 58.5 3.0 3.9 0
16h 115 53.9 3.0 3.1 0
高・8h 115 55.8 2.7 2.8 0
( )は開花到らず

表−3 短日処理の生育への影響(平成11年度、5月1、15日は種)

日長処理 5月1日は種 5月15日は種
採花ま
で日数
切り花
長㎝
分枝数 有効
花蕾数
節数 茎径
採花ま
で日数
切り花
長㎝
分枝数 有効
花蕾数
節数 茎径




1.無処理 64 67.2 4.2 21.4 10.1 5.5 64 45.3 3.0 10.6 9.3 3.8
2.短・無処理 72 65.6 4.8 14.7 9.7 5.2 72 48.8 4.0 11.6 10.2 5.0
3.短・短(20) 78 68.2 5.7 14.6 11.6 6.2 93 53.2 4.6 13.1 12.5 6.0
4.無・短(30) 79 70.9 6.0 18.5 13.3 5.8 94 43.8 3.1 8.4 12.7 4.7
5.短・短(30) 92 76.5 4.4 14.5 13.0 6.2 122 50.8 3.3 7.1 12.6 6.8
6.短・短(40) 113 70.5 4.3 11.2 14.2 6.1 138 51.0 2.3 5.6 14.4 6.5





1.無処理 67 72.2 4.3 18.2 10.7 5.8 67 54.1 3.7 15.9 10.2 4.7
2.短・無処理 74 70.4 5.3 18.1 11.1 6.0 85 54.4 4.6 14.7 10.7 5.7
3.短・短(20) 88 72.8 5.8 23.1 12.4 7.0 115 59.3 5.1 14.4 12.2 6.0
4.無・短(30) 86 75.5 5.5 22.1 14.6 6.8 115 59.5 5.0 14.4 14.3 6.8
5.短・短(30) 98 74.7 5.4 18.1 13.0 7.2 128 60.8 3.8 10.9 12.7 7.4
6.短・短(40) 116 80.1 5.7 19.2 15.0 7.6 (156) 59.3 2.9 7.0 15.6 8.0





1.無処理 73 72.8 4.9 14.1 9.8 4.7 72 54.0 4.2 10.2 9.0 4.8
2.短・無処理 78 71.7 5.2 12.7 10.0 5.1 85 46.1 4.2 9.5 9.6 5.1
3.短・短(20) 91 79.0 5.5 15.2 11.3 6.1 110 57.6 4.0 9.0 10.7 6.4
4.無・短(30) 95 82.4 4.9 14.3 12.8 5.8 121 59.1 3.1 7.1 12.3 6.0
5.短・短(30) 103 79.6 5.0 15.7 12.2 6.3 130 57.8 3.1 7.0 12.1 6.9
6.短・短(40) 120 80.0 4.2 10.8 13.3 6.7 154 58.7 2.6 5.5 12.9 7.1
( )は採花始までの日数

表−4 処理・品種別の無処理に対する出蕾、採花まで日数の抑制効果(平11年)
品種/処理 5月1日は種 5月15日は種
あずまの波
(早)
アロハライトピンク
(中)
エクセルホワイト
(中)
あずまの波
(早)
アロハライトピンク
(中)
エクセルホワイト
(中)
出蕾 採花 出蕾 採花 出蕾 採花 出蕾 採花 出蕾 採花 出蕾 採花
短・無処理 +5 +8 +6 +7 +5 +5 +8 +8 +11 +18 +9 +13
短・短(20) 10 14 15 21 11 18 18 29 25 48 19 38
無・短(30) 9 15 16 19 17 22 8 30 27 48 24 49
短・短(30) 18 28 23 31 17 30 32 58 34 61 27 58
短・短(40) 29 49 29 49 26 47 37 74 43 89 33 82


図−1  短日処理による開花調節(平成11年、アロハライトピンク、エクセルホワイト)

4.成果の活用面と留意点
 1.育苗期短日処理中の高温によるロゼットに注意。
 2.短日処理効果の品種間差に留意する。
 3.定植後の短日処理効果は高温年の平成11年の結果であることを考慮する。

5.残された問題点とその対応
 1.新品種の短日処理に対する反応の確認。
 2.短日・低温期の開花適条件(電照加温栽培)の検討。