成績概要書                    (作成 平成12年1月)

研究課題名:宿根かすみそうの品質改善のための仕立て法・水分管理法および鮮度保持法

      (宿根かすみそうの作型に対応した品質改善技術)

予算区分:道費     担当科:花・野セ 花き第一科、花き第二科、土壌肥料科

研究期間:平9〜11年度          協力・分担関係:なし

1.目的

 用途別需要に対応したMSクラスの切花を量産するための仕立て法を開発する。また、透排水性不良な土壌における高品質生産のための水分管理法を確立する。そして新しい栽培法に対応した鮮度保持法の改善を図る。

2.試験研究方法

1)多茎仕立て法の開発(花き第一科)

供試品種:「ブリストルフェアリー」、「雪ん子」等5品種  作型:6月植え雨よけ9月切り

処理区別:摘心回数[1回,2回]、仕立て本数[慣行4本,8本,9本,10本,12本]、2回目摘心節位[6節,11節]

調査項目:採花時期、収量、品質、労働時間、市場性、経済性

2)栽培法式や作型に応じた水分管理法の確立(土壌肥料科)

場所:現地(滝川市、同一ハウス内の細粒褐色低地土と礫質褐色低地土)、花・野セ(ハウス、造成台地土)

品種:「ブリストルフェアリー」、作型:6月植え雨よけ9月切り、越年株無加温6月切り

処理:栽培方式[高畦(慣行)、隔離床、遮根シート]×灌水抑制時期[(出蕾期、開花枝展開期)又は(開花枝展開始期、開花枝展開後期)] 1回の灌水量は5〜10㎜

3)鮮度保持法に関する試験(花き第二科)

材料:1)、2)の試験で栽培したものを供試  保鮮処理:STS系5種、非STS系2種、その他10種

輸送シミュレーション:>5,10,15,20,25℃,変温   水挿し:10,20℃,室温

調査:重量、頂花ユニットの小花の全開、半開、蕾、「老け花」数割合

3.結果の概要

1)多茎仕立て法の開発:MSクラスの切花を量産するには2回摘心を行い8〜12本に仕立てる方法が適しており、摘心位置は1回目が5節目、2回目は各茎の11節目程度が適当であった。多茎仕立てにより採花期が10〜20日遅くなり、採花期間は約1カ月に拡大した。この多茎栽培により総労働時間は若干増えるが、採花・調製労力が軽減された。また、多茎栽培は慣行栽培よりも所得の変動が少なく、収益性の高い栽培法と考えられた。市場ではMSクラスの需要は大きく、計画的な出荷を望んでいた。

2)栽培方式や作型に応じた水分管理法の確立:排水不良な圃場については隔離床、遮根シートが有効であり、これらの栽培法では開花枝展開期までの灌水によって調製重や切花長の低下をできるだけ抑え、日持ち性を向上させることができる。その場合の水管理として、定植後は水を充分補給するためpF2.0程度を灌水の開始点とし、1回の灌水量は生育状況によって5〜10㎜で調節する。また、開花枝展開期以降はpF3.0程度を灌水の開始点とし、乾燥気味に管理する。

3)鮮度保持法に関する試験:多茎栽培した切花の日持ち性は、慣行栽培よりも良好で、かすみそう専用保鮮剤にしょ糖2.5%加えた処理により「老け花」発生抑制効果は更に高まった。また隔離床栽培、遮根シート栽培した切花は吸水能力が高く、保鮮剤処理および水挿しにおける重量増加が大きく、かつ輸送中の重量減少も少なくなり、採花後の「老け花」が抑制された。

 

表1 調製に要する時間(雪ん子、平成11年)

処理区

平均調製時間
(秒/本)

同左比
(%)

慣行
8本仕立て
12本仕立て

60.4
37.2
37.2

100
62
62

表2 経済性試算(10a当たり)

項目

慣行

8本仕立て

12本仕立て

出荷本数
単価
販売額

8,160
139
1,134,240

16,320
80
1,305,600

24,480
50
1,224,000

変動費

762,928

805,618

801,874

固定費

133,948

133,948

133,948

費用合計

896,876

939,566

935,822

所得
所得率

237,364
20.9

366,034
28.0

288,178
23.5


図1 隔離床,遮根シート利用による宿根かすみそう栽培の水管理法

 

4.成果の活用面と留意点

1)多茎仕立て法の成績は6月植え雨よけ9月切り作型の当年株に適用する。

2)水分管理法の試験は「ブリストルフェアリー」を対象とした

3)隔離床、遮根シートの作床は生育の安定性や設置作業性を考慮し30㎝位とする。

4)透排水性不良な土壌の条件は、土性:C〜CL、有効土層:60㎝以下、心土の緻密度:19㎜以上、透水係数(有効土層):10-4㎝以下、気相率:15%未満、地下水位:60㎝以上など、である(平成3年度および平成8年度成績会議資料)。

5)鮮度保持試験には仕立て法や水分管理法にかかわらず同一採花日の材料を供試した。 6)最適採花ステージ、保鮮剤最適処理濃度・処理時間は、産地において品種ごとに確認する。

5.残された問題点とその対応

1)多茎仕立て法の他の作型、栽培方式での検討。

2)当年株の量的外観形質の向上技術と灌水の簡易自動化。

3)宿根かすみそう用開花剤および非STS系保鮮剤の開発。