成績概要書                        (作成 平成12年1月)
研究課題名宿根かすみそうの品質改善のための仕立て法・水分管理法および鮮度保持法
      (宿根かすみそうの作型に対応した品質改善技術)
      2)栽培方式や作型に応じた水分管理法の確立
予算区分:道費
研究期間:平9−11年度
担当科:花野センター 研究部 土壌肥料科  花き第一科 花き第二科
協力・分担関係:なし
1.目的
 宿根かすみそうは道央の水田転換畑等、透排水性の劣る圃場での栽培が多く品質の低下が懸念されている。そのため、灌水による土壌水分のコントロールが可能な隔離床や遮根シートを利用した栽培について、土壌条件に応じた栽培方式と水管理法を確立する。
 
 
2.方法
場 所:現地(滝川市東滝川、同じハウス内における細粒および礫質褐色低地土)、花野センター(造成台地土)
品 種:ブリストルフェアリー 
作 型:当年株・夏秋切り(6月植え雨よけ9月切り) 越年株・春夏切り(無加温6月切り)
処 理:栽培方式{高畦(慣行)、隔離床、遮根シート}×灌水抑制時期{出蕾期、開花枝展開期}または{開花枝展開始期、開花枝展開後期}、1回の灌水量は5〜10mm
施肥量:当年株(越年株);基肥全層(融雪期基肥表層) N-P2O5-K2O=10-10-10kg/10a
規 模:1区2.24㎡(0.8×2.8m)1区14株、1(現地)〜3反復(場内)、2440株/10a
栽植様式:ベット幅80cm、通路80cm、条間40cm、株間40cm、2条植え
 
 
3.結果の概要
(1)現地の高畦栽培調査から、宿根かすみそうの品質・日持ち性は根圏域の土壌水分が密 接に関わっており、排水性の劣る細粒褐色低地土は良好な礫質褐色低地土よりも調製重 はよいが日持ち性は劣り、特に越年株にその傾向が強い(図1、図2、図3)。
(2)隔離床区と遮根シート区の調製重は高畦区よりも低下するが、日持ち性は向上した。 このような傾向は特に越年株で明瞭であった(図4)。
(3)隔離床、遮根シート栽培において、当年株、越年株とも灌水抑制時期を出蕾期よりも 開花枝展開期まで遅らせる方が品質はよくなるが、日持ち性はやや低下する。しかし、 高畦栽培より日持ち性はよい(図5)。
(4)現地排水不良圃場(上記の細粒褐色低地土)における越年株の遮根シート栽培(灌水抑 制時期はH10年が出蕾期、H11年が開花枝展開期)の結果、場内試験と同様に、開花枝 展開期までの灌水効果が確認された(図6、図7)。
(5)したがって、高畦栽培が不適な排水不良圃場については隔離床、遮根シート栽培が有 効であり、開花枝展開期までの灌水によって調製重や切花長の低下をできるだけ抑え、 その後の灌水抑制で日持ち性を向上させることができる。
  その場合の水管理として、定植後は水を充分補給するためpF2.0程度を灌水の開始点 とし、1回の灌水量は生育状況によって5〜10mmで調節する。また、開花枝展開期以 降はpF3.0程度を灌水の開始点とし、できるだけ乾燥気味に管理する。
 
 
 
 
4.成果の活用面と留意点 
1)本試験はブリストルフェアリーを対象とした。
2)隔離床、遮根シートの作床は生育の安定性や設置作業性を考慮し30cm位とする。
3) 透排水性不良な土壌の条件は、土性:C〜CL、有効土層:60cm以下、心土の緻密度 :19mm以上、透水係数(有効土層):10−4cm/s以下、気相率:15%未満、地下水位:60cm 以上など、である(平成3年度および平成8年度成績会議資料)。
 
 
5.残された問題とその対応
1)当年株の量的外観形質の向上技術 2)土壌水分目標に対応した灌水の簡易自動化