成績概要書 (作成 平成12年 1月)
研究課題名 :上川北部地域における高品質レタスの栽培技術 (上川北部地域における野菜導入を前提とした新農業システムの確立) 予算区分 :国費補助(地域基幹) 担当科:上川農試研究部園芸科、病虫科 土壌肥料科 試験期間 :平成9〜11年 協力・分担関係 |
1.目的
酪農主体・畑作混在の上川北部地域に対して地域に豊富にある有機物資源を有効に活用し、冷涼を好み、軽労働で生産できるレタスを対象として内部品質(糖度3度)に優れ、環境負荷の少ない(浸透水中の硝酸態窒素濃度10ppm以下)栽培技術を検討する。
2.試験研究方法
1)試験場所 | 中川町 A、B試験地、美深町試験地、和寒町試験地(以上 褐色低地土) 上川農業試験場圃場(れき質褐色低地土) |
2)供試作物 | レタス(病害虫発生調査、有機物施用試験供試品種 「みずさわ」) |
3)処理区 | 品種、マルチ、内部品質の検討 品種 7、 マルチ(紙)の有無、定植時期 中川における病害虫の発生実態 無防除区 牛糞堆肥連用試験 0、3、6t/10a×窒素、カリ減肥、施用方法(全層、作条) |
4)耕種概要 | 定植時期 5月中旬〜8月中旬、育苗方法 セル成型苗、200穴/トレイ |
3.結果の概要
1)多雨または乾燥条件でマルチ(紙)の効果は大きく、気象変動に対応するにはマルチが必要であった。生育および規格内収量は「みずさわ」が全般によかった。最も冷涼な中川町では栽培は5月下旬定植から可能であり、低温障害を考慮して9月下旬までに収穫を終えることが安全である。
2)目標とする糖度3度は糖含量2g/100gに相当し、収穫2週間前の平均気温が18℃以下の場合、糖含量2g/100g、ビタミンC含量6mg/100g(4訂食品成分表)以上の内部品質を保証することは可能と考えられ、図1に示した作期で内部品質に優れたレタス生産が期待できる。また、平均気温が18〜20℃では収穫前5日間の降水量に内部品質は左右されるが、10mm以下であれば目標に到達でき、中川町では平年の平均気温は夏期でも20℃を越えることがなく高品質が期待できる。
3)中川町における5月下旬〜6月上旬定植のレタスでは、灰色かび病、軟腐病、ナモグリバエ、スリップス、ヨトウガおよびアブラムシ等の病害虫が発生したが、結球部にまで被害が及ぶことはほとんどなく、7月中に収穫する作期であれば被害をかなり回避できると思われた。6月中旬〜7月定植のレタスでは、上記に加え腐敗病、菌核病、ウリハムシモドキおよびウワバが発生した。この作期では病害虫の被害が結球部にまで及ぶことがあるので、被害が予想される場合は病害虫の防除が必要である(表1)。
4)堆肥の3t/10a・年連用により1、2年目では窒素を25%減肥でき、3年目では50%の減肥が可能であり、6t/10a・年連用では2年目まで50%減肥が可能と考えられ、カリの減肥も可能であった。また、堆肥連用と減肥の組み合わせにより糖含量は高まり、硝酸含量は低下する傾向がみられた。しかし、地表下1mの浸透水中の硝酸態窒素濃度(基準値10ppm以下)より堆肥の連用は6tでは2年、3tでも3年が限界と考えられた。以上のことから、レタス栽培における対比連用年数と適正施肥量の指針(表2)を作成した。
表1 中川町における収穫期の病害虫発生状況
定植期 | 収穫期 | 灰色かび病 | 腐敗病 | 軟腐病 | 菌核病 | 健全株率 |
〜6月上旬 | 〜7月下旬 | 1.5 | 0 | 0.8 | 0 | 90.5 |
6月中旬〜 | 8月〜 | 20 | 18 | 4.9 | 2.0 | 48.6 |
定植期 | 収穫期 | ナモグリバエ | スリップス | ウワバ | ヨトウガ | ウリハムシモドキ | アブラムシ |
〜6月上旬 | 〜7月下旬 | 27 | 5.8 | 0 | 3.8 | 0 | 0.2 |
6月中旬〜 | 8月〜 | 45 | 24 | 13 | 0 | 3.1 | 0.3 |
表2 レタス栽培における堆肥連用年数と適正施肥量の指針
堆肥 堆肥連用 施用量 年数 (t/10a・年) 施肥量 |
収量からみた適正施肥量(kg) | 結球葉の内部品質 | 環境負荷 | |||||||
当年 | 2年連用 | 3年連用 | 糖含量 | 硝酸含量 | 施肥窒素 利用率(%) |
浸透水中の硝酸態 窒素濃度(ppm) | ||||
N | K2O | N | K2O | N | K2O | |||||
0 | 12 | 14 | 12 | 14 | 12 | 14 | 対照 | 対照 | 41〜42 | 8.5 |
3 | 9 | 0 | 9 | 0 | 6 | 0 | やや向上 | ほとんど差なし | 48〜51 | 9.5 |
4.成果の活用面と留意点
1)上川北部地域(中川町〜美深町)に適用する。
2)紙マルチ利用によって省力化がはかれ、環境負荷が軽減できる。
3)病害虫防除対策上の資料とする。
4)有機物資源はC/N比10程度の堆肥を施用した。
5)環境負荷軽減対策として後作物を導入する。
5.残された問題点とその対応
1)適用地域の拡大。
2)作期による病害虫被害回避の実証。
3)省力・機械化栽培技術とそれへの対応。
4)有機物連用による蓄積養分の環境負荷軽減。