成績概要書 (作成平成12年1月)
研究課題名:牛ふん堆肥化過程における石灰窒素の大腸菌殺菌効果 予算区分:受託 担当科:新得畜試 生産技術部 環境資源科 研究期間:平成10〜11年 協力・分担関係:なし |
石灰窒素の添加による牛ふん中大腸菌の殺菌効果、堆肥化に及ぼす影響、および適切な添加量を検討した。
2.方法
1) 石灰窒素の添加による牛ふんおよび牛ふん尿オガクズ混合物中大腸菌殺菌効果の検討(試験1)。
牛ふんおよび牛ふん尿オガクズ混合物に対し石灰窒素を混和し、4〜60℃の恒温槽内で培養し、大腸菌に対する殺菌効果および適切な添加割合を検討した。
2) 石灰窒素の添加が牛ふん尿の堆肥化過程における大腸菌の消長および発酵に及ぼす影響(試験2)
肉用牛肥育牛舎より排出された牛ふん尿オガクズ混合物を供試材料とし、石灰窒素を添加し堆積、発酵させた。試験は季節をかえて3回おこなった。
試験2-1(冬期) |
試験2-2(春期) |
試験2-3(夏期) |
|
堆積期間(日数) |
2/8〜7/27(169) |
4/2〜7/27(116) |
8/3〜10/6(65) |
石灰窒素添加量 |
0、2% |
0、1、2、3% |
0、1、2、3% |
堆積規模 |
約6t→約700kg |
180kg |
200kg |
切返し |
14、60、78、99、127日後 |
14、21、47、74(89)日後 |
21、36日後 |
サンプリング |
開始・終了時 |
開始・終了時、 |
開始・終了時、 |
測定・分析項目 |
品温、水分、pH、 |
試験2-1と同様 |
試験2-2と同様 |
3.結果の概要・要約
1)牛ふんおよび牛ふん尿オガクズ混合物中大腸菌は石灰窒素を約1%添加した場合、20℃以下の培養温度条件下では速やかに検出限界以下となったが、30℃および37℃培養では試験期間中残存した。37℃培養では約2%以上の添加が必要であった。無添加区では50℃以上、24時間の培養で検出限界以下となった。
2)堆肥化過程における大腸菌は、試験2-1では、2%区で堆積2日目、無添加区では堆積49日目に検出限界以下となった。試験2-2および2-3では、1〜3%添加区で1回目の切返し、無添加区では2回目の切返し時で検出限界以下となった。好気性中温細菌数は石灰窒素の添加により添加直後で1〜2オーダー減少した。(表1)。
3)石灰窒素の添加は寒冷期において品温上昇の開始を遅らせ、その程度は添加量が増すにつれ大きかった。試験2-1および2-3では品温上昇後に最高温度で無添加区を10℃程度上回った(図1)。
4)堆肥化期間中の有機物減少率は無添加区において、試験2-2で30.5%、試験2-3では35.5%であった。石灰窒素添加区では、試験2-2の1%区で無添加区を上回る32.7%を示したが、そのほかの区はほぼ20%以下であった(表2)。
5)堆肥化期間中のTN減少率は無添加区では、試験2-2で10%、試験2-3で約2%であったのに対し、石灰窒素添加区では約20〜40%と高い値を示した(表2)。
以上の結果、牛ふん尿オガクズ混合物への石灰窒素の添加は、堆肥化の際に、特に寒冷期において品温上昇の開始や有機物の分解を抑制するものの、牛ふん中大腸菌を速やかに死滅させる効果が認められた。大腸菌は石灰窒素約1%の添加でおおむね検出限界以下となったが、30℃および37℃培養試験では残存し、37℃培養では大腸菌の死滅には約2%の添加が必要であった。また、実用場面では均一な混合が難しいこと等を考慮すると、その添加量は2%程度が望ましいものと考えられた。
4.成果の活用面と留意点
1)石灰窒素(粉状・防散)の添加による牛ふん堆肥中大腸菌の殺菌は、速やかな殺菌を必要とする場面で、50℃以上の発酵温度が期待できない場合の利用が望ましい。
2)石灰窒素の添加により全窒素含量が高まることから、堆肥の利用にあたっては成分含量を測定することが望ましい。
3)石灰窒素は「使用上の注意」を参照し、畜体に直接かかったり、飼料に混入することのないようにする。
5.残された問題点とその対応
1)石灰窒素のふん尿への添加・混合方法
2)スラリー中大腸菌に対する石灰窒素の殺菌効果
3)各種病原菌に対する石灰窒素の殺菌効果