成績概要書 (作成 平成12年 1月)
課題の分類:北道道 畜産・草地 畜産 栄養飼料飼養−滝川試畜 研究課題名:フ−ドミ−ルの養豚飼料としての評価 予算区分:受 託 担当科:滝川畜試 研究部 畜産資源開発科 研究期間:平11年度 協力・分担関係: |
1.目 的
都市においては、レストラン、学校、ホテル、ス−パ−マ−ケット、食品加工場など食材調理加工施設から食品残渣物が比較的まとまって排出されている。現在はそれを生ゴミとして焼却や埋立で廃棄していることが多く、焼却によるダイオキシンの発生など環境汚染や処理コストがかさむことから、資源としてのリサイクルが重要な方策である。
食品残渣は、従来から残飯養豚に利用されてきたが、水分が多く、保存性や流通性に劣ることが問題点とされてきた。食品残渣物を熱油浴減圧処理により効率よく乾燥し、これを粉砕処理した製造物(「フ−ドミ−ル」仮称)は、食品残渣物の利用性を改善し、そのリサイクルを進めるものとして期待される。こうした処理を行う実用規模のプラントが札幌で稼働している。そこで、本試験では、フ−ドミ−ルの養豚飼料としての栄養価および肥育効果を明らかにし、その評価を行った。
2.方 法
(1)フ−ドミ−ルの飼料成分
フ−ドミ−ル18点について飼料成分の変動を調べた。
(2)肥育豚によるフ−ドミ−ルの栄養価
大ヨ−クシャ−去勢豚8頭を使い、基礎飼料を豚産肉能力検定飼料とし、フ−ドミ−ルを 20%混合して全糞採取法で、消化試験を実施した。
(3)フ−ドミ−ルの豚による肥育効果
大ヨ−クシャ−去勢豚24頭を6頭づつ4群に分け、豚産肉能力検定飼料のみ給与した群を対照区とし、その15、20、30%をフ−ドミ−ルで単純代替した群をそれぞれフ−ドミ−ル15、 20、30%区とし、体重30kgから110kgまで不断給餌で単飼した。
3.結果の概要
(1)製造バッチを異にするフ−ドミ−ル18点の一般飼料成分を調査した。熱量を除いた各成 分の変動幅はいずれも広かった。平均水分含有率は4.6%と低く、保存性や流通性は良好であるといえる。フ−ドミ−ルの原物中粗蛋白質含有率は21.2%、粗脂肪含有率も11.2%と高かった(表1)。
(2)フ−ドミ−ルの粗蛋白質消化率は47.0%で、従来の乾燥残飯のそれに比べかなり低かった。フ−ドミ−ルの原物中DCP含有率は9.5%で、TDN含有率は76.8%であった(表2)。
(3)フ−ドミ−ルは嗜好性がよく、フードミールで15〜30%代替しても発育で劣ることはなかっ た(表3)。しかし、フ−ドミ−ル区で枝肉脂肪の質が低下する傾向であった(表4)。
(4)以上より、フードミールのDCPの変動幅を考慮して、肥育前・中期は配合飼料の20%代替が可能である。肥育後期では、給与飼料中の粗脂肪含有率が軟脂豚発生防止のための目安とされる5%以下となるように、フ−ドミ−ルの代替率は10%までとする。
表1 フードミールの一般飼料成分含有率(原物中)
区分 | 水分 | 粗蛋白質 | 粗脂肪 | NFE | 粗繊維 | 灰分 | 熱量 |
% | kcal/g | ||||||
最小 | 2.5 | 18.5 | 9.6 | 42.2 | 3.3 | 5.6 | 4.59 |
最大 | 7.0 | 25.5 | 13.8 | 56.4 | 6.9 | 10.0 | 4.92 |
平均 | 4.6 | 21.2 | 11.2 | 50.9 | 4.9 | 7.2 | 4.74 |
標準偏差 | ±1.06 | ±1.82 | ±1.14 | ±3.66 | ±0.86 | ±1.09 | ±0.10 |
変動係数(%) | 23.0 | 8.6 | 10.2 | 7.2 | 17.6 | 15.1 | 2.1 |
表2 成分消化率と栄養価(%)
飼料 | 成分消化率 | 熱量 | 栄養価 | |||||
乾物 | 粗蛋白質 | 粗脂肪 | NFE | 粗繊維 | DCP | TDN | ||
フ−ドミ−ル | 75.0 | 47.0 | 90.7 | 86.8 | 43.3 | 73.0 | 9.5 | 76.8 |
基礎飼料 | 86.6 | 81.8 | 60.0 | 93.1 | 49.7 | 84.9 | 12.7 | 74.8 |
表3 発育成績
処理 | 対照区 | フードミール15%区 | フードミール20%区 | フードミール30%区 | |
供試頭数 (頭) | 6 | 6 | 6 | 6 | |
開始体重(kg) | 30.1 | 30.0 | 30.1 | 30.0 | |
終了体重(kg) | 110.4 | 110.5 | 110.4 | 110.5 | |
所要日数(日) | 80.5 | 78.3 | 79.8 | 74.3 | |
日増体重(kg/日) | 1.02 | 1.04 | 1.01 | 1.09 | |
摂 取 量 |
乾物(kg/日) | 2.88 | 2.91 | 2.98 | 3.15 |
DCP(kg/日) | 0.43 | 0.42 | 0.42 | 0.43 | |
TDN(kg/日) | 2.48 | 2.50 | 2.55 | 2.69 | |
飼料要求率 | 3.27 | 3.19 | 3.34 | 3.25 |
表4 背内層脂肪の性状
処理 | 対照区 | フードミール15%区 | フードミール20%区 | フードミール30%区 | ||
融点(℃) | 35.5 | 34.9 | 33.8 | 34.2 | ||
色調 | L | 69.6a | 67.6ab | 67.4ab | 66.1b | |
a | 2.3 | 1.8 | 1.8 | 1.6 | ||
b | 5.7 | 5.5 | 5.5 | 5.6 | ||
飽和脂肪酸(mol%) | 46.5a | 44.0ab | 42.9ab | 41.5b | ||
不飽和 脂肪酸 |
一価(mol%) | 45.4 | 44.5 | 45.6 | 44.6 | |
多価(mol%) | 8.2a | 11.5b | 11.6b | 14.0c | ||
計(mol%) | 53.6a | 56.0ab | 57.2ab | 58.6b |
4.成果の活用面と留意点
5.残された問題とその対応
1.フ−ドミ−ルの製造バッチによって飼料成分含有率の変動が大きいので、複数のバッチの製品を混合するなど変動を小さくする工夫が望まれる。
2.フ−ドミ−ルに夾雑物が1〜2%混入しているといわれているが、さらに少なくすべきである。
3.フ−ドミ−ルを飼料として製造販売するため「飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律」に基づき届出中である。