成績概要書  (作成平成12年1月)
課題の分類:北海道 畜産・草地 畜産
研究課題名:アルファルファの生育による栄養価の変動と蛋白質及びミネラルの動態
(予乾アルファルファの低水分サイレージ調製・貯蔵技術の開発)
予算区分:実用化促進(地域総合)
研究期間:平成8〜11年度
担当研究室:北海道農試畜産部飼料評価研
担当者:久米新一,野中和久,大下友子
協力・分担関係:マメ牧育種研

1.目的
 北海道では高泌乳牛の増加に伴い,粗飼料も従来より栄養素を多量含有した高品質粗飼料が求められている。高エネルギー飼料としてトウモロコシのホールクロップサイレージが北海道ではよく利用されているが,それに加えて蛋白質,ミネラル,ビタミンの補給源として,アルファルファなどのマメ科牧草の有効利用が今後重要性を増すものと予想される。しかし,アルファルファは分解性蛋白質やK含量が高いため,その特性を踏まえて乳牛に給与することが必要である。
 そこで,アルファルファの有効利用のために,アルファルファの生育ステージによる栄養成分の変動と,アルファルファの分解性・溶解性蛋白質やミネラル含量などの特性を粗蛋白質を基準にして評価する。

2.方法
 北海道農業試験場の圃場で1995年6月に播種したアルファルファ3品種(マキワカパ,ヒサワカバ,5444)から,3年間(1996年5月から1998年9月)にわたり,1番草,2番草,3番草をほぼ毎週採取(計108点)し,草丈,一般成分(水分,灰分,粗蛋白質,NDF,ADF),蛋白質分画(分解性蛋白質,非分解性蛋白質,溶解性蛋白質,ADIN),ミネラル合量(Ca,P,Mg,Na,K,Fe,Zn)などを測定した。なお,施肥量はN-P205-K20で初年目:5.0-19.0-7.5㎏/10a,および2年目以降:4.4-13.0-17.4kg/10aとした。

3.成果の概要
1)アルファルファの草丈はヒサワカバとマキワカバが5444より高かったが,粗蛋白貫含量は年度により異なっているものの,マキワカバが他の品種より高かった。 2)アルファルファは草丈の伸長とともにNDF・ADF含量が急激に増加するため,粗蛋白實含量は草丈の伸長とともに急減した(図1)。
3)アルファルファの蛋白質含量と分解性・溶解性蛋白質には正比例の関係があり,粗蛋白質含量に占める分解性・溶解性蛋白貫の比率はそれぞれ68.7%と43.2%であった(図2)。
4)アルファルファのCa含量と粗蛋白質含量間には明確な関係は認められなかったが,K含量は生育初期の高蛋白質含量時に高く,2.11-4.20%の範囲にあった。

[具体的データ]


図1、アルファルファの草丈と粗蛋白質含量との関係

図2、アルファルファ生草中の粗蛋白質含量と他の成分との関係

 

4.成果の活用面と留意点
1)本データは札幌の生草のデータである。
2)道央地域ではアルファルファの利用や飼料設計における基礎データとして活用できる。
3)アルファルファの施肥量・播種量は栽培基準に従うことが必要であるが,草丈と粗蛋白質含量の関係は地域性や気候による変動が大きいことを配慮しなければならない。
4)分娩前の乳牛には高カリウム含量のアルファルファ給与を避けることと,アルファルファサイレージ多給時には分解性蛋白質が適切な範囲になるように飼料設計することが必要である。

5.残された問題点とその対応
 アルファルファのサイレージ調製法,周産期の乳牛や高泌乳牛へのアルファルファ給与技術などを確立して,アルファルファの有効利用を図ることが必要である。これらについては,「予乾アルファルファの低水分サイレージ調整・貯蔵技術の開発:地域総合,平10〜13」で対応していく予定である。