成績概要書 (作成平成12年1月)
研究課題名:ダイコンバーティシリウム黒点病の緊急防除対策 予算区分:道費 担当科:中央農試 病虫部 土壌微生物科 研究期間:平成9〜11年 協力・分担関係:南羊蹄地区農業改良普及センター |
1.目的
ダイコンバーティシリウム黒点病に対する防除対策を確立し、だいこんの安定生産に資することをことを目的とした。
2.方法
発生実態、発生生態、抵抗性品種の選抜、土壌消毒剤による防除、土壌消毒剤の実用的処理方法、抵抗性品種と土壌消毒剤の組み合わせによる防除、発生状況に基づく防除対策
3.結果の概要
1)発生実態
調査しただいこん作付ほ場のうち発病株率20%以上のほ場が15、V. dahliae 微小菌核密度10個以上のほ場が17あった。本病の発生または微小菌核密度検出ほ場は調査地点の約40%になり、本病が広く道内で発生していることが確認された。
2)発生生態
本病の発生程度は6月中〜下旬播種、7月中〜下旬播種の栽培で高くなる傾向がある。
本病の発生と土壌中の微小菌核密度には正の相関が認められ、その関係は品種により異なっており、発病株率20%に達する乾土1g当たり微小菌核密度は、本病に対し抵抗性弱品種「T340」で6.5個、やや強品種「T901」「健志総太り」で14個と推測された。
3)抵抗性品種の選抜
春まきだいこん品種では、供試69品種のうち、本病に対する抵抗性が強いと考えられたのは「YR夏信」「KR4118」「夏得」「重信」の4品種である。夏まきだいこん品種では供試65品種のうち、本病に対し抵抗性が強いと考えられたのは「夏つかさ」「健勇総太り」の2品種である。
4)土壌消毒剤による防除
(1) ダゾメット粉粒剤の本病に対する防除効果は、全面被覆と耕起によるガス抜きを伴う処理で、20・30kg/10a通常耕(20〜25cm耕起深)処理がそれぞれ防除価が60・70以上で薬害もなく実用性があると考えられる。深耕(35〜40cm耕起深)処理では20・30kg/10a処理ともに通常耕処理と比較して同等から高い防除効果を示した。特に30kg/10a深耕処理は防除価が80以上と高く、薬害もなく実用性が高い。
(2) ダゾメット粉粒剤の20・30kg/10a深耕マルチ畦内処理は、それぞれ防除価が70以上で、薬害もなく実用性がある。
(3) ダゾメット粉粒剤の30kg/10a根雪前無被覆処理は80以上の高い防除価を示し、薬害もなく実用性が高いと考えられる。しかし、降雪が見込まれる時期に混和処理が可能な地域に限定されることおよび処理後の鎮圧とできる限り速やかな降雪が必要であることに注意する。
(4) 処理法ごとの防除効果と経済性・環境負荷・労力などを考慮すると、20〜30kg/10a深耕マルチ畦内処理が実用性が高い処理と考えられる。
5)抵抗性品種と土壌消毒剤との組み合わせによる防除
ダゾメット粉粒剤のマルチ畦内処理において、抵抗性品種を組み合わせることにより防除効果が増大した。
6)発生状況に基づくダイコンバーティシリウム黒点病の防除対策
①少発生ほ場および微小菌核密度10個以下のほ場:抵抗性品種の作付けにより被害を回避する。
②中発生以上のほ場および微小菌核密度10個以上のほ場:ダゾメット粉粒剤による土壌消毒により防除する。
表1.ダイコンバーティシリウム黒点病抵抗性判定
抵抗性 | 春まき品種 | 夏まき品種 |
強 | YR夏信・KR4118・夏得・重信 | 夏つかさ・健勇総太り |
やや強 | T901・KA189・天麗・役者紀行・AD165 ・YR鉄人・春北海 |
夏元太・JT28・健志総太り・YD506・献夏青首 |
弱 | 貴宮・T340 | たくみ総太り・清宮・YRあきしの・玄武・YRは つらつ・YR聖者・天宮・T414 |
表2.ダゾメット粉粒剤による土壌消毒の効果と実用性の評価
処理法 | 耕起 深度 |
ダゾメット 処理量 |
平均 防除価 |
防除 効果 |
経済性 | 環境負荷 労力など |
実用性 |
通常処理 | 20〜25cm | 20kg/10a | 66 | △ | ○ | × | ある |
30kg/10a | 75 | ○ | △ | × | ある | ||
通常処理 | 35〜40cm | 20kg/10a | 73 | ○ | ○ | × | ある |
30kg/10a | 87 | ◎ | △ | × | ある | ||
マルチ畦内処理 | 35〜40cm | 20kg/10a | 71 | ○ | △ | △ | 高い |
30kg/10a | 75 | ○ | △ | △ | 高い | ||
根雪前処理 | 35〜40cm | 30kg/10a | 81 | ◎ | ○ | ○ | 非常に高い |
表3.ダゾメット粉粒剤のマルチ畦内処理と抵抗性品種の組合せ効果
処理法 | 耕起 深度 |
ダゾメット 処理量 |
品種による防除効果の変化 弱 →やや強 |
組合せ 効果 |
マルチ畦内処理 | 35〜40cm | 20kg/10a | 68→80 | ○ |
30kg/10a | 83→90 | ○ |
表4.発生状況に基づくダイコンバーティシリウム黒点病の防除対策
発生状況 | 微小菌核密度 | 防除対策 | 備考 |
未 | 0 | 適切な輪作 | 輪作体系の中でバーティシリウム病害の侵入に注 意する。特に発生を見過ごしやすいジャガイモ半 身萎凋病に注意する |
少 | 10個以下 | 抵抗性品種の作付け | 罹病株が若干発生する |
中以上 | 10個以上 | ダゾメット粉粒剤による土 壌消毒 |
効果の増大には深耕処理および抵抗性品種の選定 が併せて必要 |
4.成果の活用面と留意点
1)ほ場における過去のジャガイモ半身萎凋病およびダイコンバーティシリウム黒点病の発生状況を見定めて対策を講じることが必要である。
2)抵抗性品種は地域の特性に合った品種を選定する。
3)ダゾメット粉粒剤の30kg/10aは未登録である。
5.残された問題点とその対応
1)だいこん作付け前におけるほ場の微小菌核密度の迅速な診断方法の確立
2)輪作体系における耕種的防除法の確立