成績概要書(作成 平成12年2月4日)

課題の分類:
研究課題名:道央・上川地方における大豆の高品質コンバイン収穫技術
        −大豆の省力・多収栽培技術(補遺)−
予算区分:道費(豆基)
担当:中央農試 農業機械部 機械科、畑作部 畑作第一科、上川農試 研究部 畑作科
研究期間:平成11年
協力・分担関係:なし

1.目 的
 豆用コンバインおよび汎用コンバインでの収穫損失、汚粒発生程度、大豆クリーナでは子実水分の相違による汚れ除去程度を検討し、その利用法を明らかにする。また、コンバインやクリーナの利用実態調査、簡易茎水分計によるコンバインの収穫時期の判定法を検討する。

2.方 法
1)試験期日 平成11年(平成8〜10年)
2)試験場所 北村、追分町、士別市
3)試験方法
 (1)供試品種 トヨムスメ、十育233号、スズマル、中育47号、トヨコマチ
 (2)栽植密度 標準(60cm×20cmまたは66cm×18cm)および1.5倍密植、2本立て
 (3)供試機 汎用コンバイン2機種、豆用コンバイン3機種、大豆クリーナ2機種
 (4)調査項目 損失、汚れ指数、組成分析など

3.結果の概要
1)コンバイン収穫
(1)4条刈り汎用コンバイン2機種および2条刈り豆用コンバイン3機種で大豆収穫試験を行った。汎用コンバインでは主茎長が55cm以上であれば穀粒損失割合は5%以下である。豆用コンバインでは主茎長が40〜45cm程度と短い場合でも穀粒損失割合は少なかった。
(2)汎用コンバインでは「最下着莢位置と刈り高さの差」が5cm以上であれば刈り取り部損失は4%以下と少ないが、5cm以下では損失が急増する危険性が高い。豆用コンバインではその差が5cm以下の場合でも刈り取り部損失は概ね5%以下であった。
(3)汎用コンバインでは茎水分40%以下であれば汚れの発生が少ないが、40%を越えると汚れ指数2.0以上の著しい汚粒が発生する危険性が高い。豆用コンバインでは茎水分が50%を越えても汚れ指数は2.0以下に留まり、茎水分が高いときでも収穫できる可能性が認められた。
(4)コンバイン収穫後の大豆の汚れ指数が0.5程度の時、汎用コンバインと豆用コンバインの汚れ指数はほぼ同じであった。汚れ指数が1.0以上の時、汎用コンバインより豆用コンバインの汚れ指数が小さく、汚れの発生が著しいときほどその指数差は大きかった。

2)大豆クリーナ
(1)湿式クリーナ(J-18S)および乾式クリーナ(MC-45)で大豆汚れ除去試験を行った。処理前に子実を粗選機にかけ、夾雑物や土塊などを取り除くことが必要である。
(2)J-18Sでは概ね600〜800kg/hの連続運転が可能と考えられ、処理時の大豆はコンバイン収穫直後が望ましく、クリーナ処理後の外観品質は良好である。
(3)J-18Sで処理した大豆の汚れ指数は平均1.44(0.13〜3.60)、処理後の汚れ指数の低下は平均0.74(0.10〜1.77)であり、汚れが著しい大豆ほど汚れ指数の低下が大きかった。
(4)MC-45では概ね300〜400kg/hのバッチ式連続運転が可能と考えられ、処理時の大豆水分は16%以下が望ましく、クリーナ処理後の外観品質は良好である。
(5)MC-45で処理した大豆の汚れ指数は平均1.72(0.13〜3.38)、処理後の汚れ指数の低下は平均0.97(0.10〜1.86)であり、汚れが著しい大豆ほど汚れ指数の低下が大きかった。
(6)MC-45のクリーニング時間は7〜10分程度、クリーニング回数は1回で十分と考えられる。

3)大豆茎水分の簡易測定法
 簡易水分計(改良コンクリート・モルタル水分計)により茎水分の推定が可能である。水分計では茎表面の「ぬめり」を表示できない。

4)コンバインによる大豆の作業可能面積
 汎用および豆用コンバインの大豆の作業可能面積を試算した結果、汎用コンバインでは11.3ha/年、豆用コンバインでは5.7ha/年であり、作業可能面積の増加を図るには作業能率を低下させない大豆栽培、早生品種の導入による作業期間の拡大、作業効率や実作業率の向上、汎用利用、効率的な利用計画の立案などが必要である。

 

表1 汎用・豆用コンバインの利用方法

 

項目

望ましい条件およびその対策

作物条件

主茎長

50〜70cm程度が望ましい。豆用コンバインでは45cm程度まで対応可能。

倒伏

倒伏がない、あるいは倒伏指数2.0以下。

最下着莢位置

12cm程度。培土の形状や高さが異なっても、汎用コンバインでは「最下着莢位置と刈り高さの差」が5cm以上であること。豆用コンバインでは5cm以下でも対応可能。

茎水分

40%以下。茎表面に「ぬめり」があるときはコンバイン収穫を止める。水分が高いときは「高刈り」を行い、汚粒発生の低減を心がける。

子実水分

20%以下。最適は16%以下。

その他

汚粒発生原因となる雑草がないこと。わい化病の防除は的確に行う。

コンバイン

刈り高さ

通常、7〜8cm。「刈り高さ12cm程度の高刈り」は損失や汚粒発生状況を見ながら刈り高さの調整を行う。

速度

0.8m/s程度。良好な条件では1.0m/s程度で収穫可能。主茎長が短い場合や倒伏程度などにより、作業速度を低くする。

汚粒防止

汎用コンバインでは豆用キットに交換する、オーガによる排出を行わない。刈り取り部で土砂を食い込ませない。籾殻の利用方法を検討する。

その他

内部の清掃を行う。特に、そば、水稲などの収穫後は念入りに清掃を行う。収穫は晴天日中に行い、時間帯は午後がより望ましい。午後4時頃までには収穫を終了する。

 

表2 大豆クリーナの利用方法 

 

型式

処理方式

使用資材

処理量

(kg/h)

適応する子実水分

汚れ指数

の低下

利用方法




J-18S

湿式、連続式

コーンコブ

600〜800

18〜24%

コンバイン収穫直後

0.74

(0.10〜1.77)

最初コーンコブへの加水は均一に行う。しわ粒に留意して加水量を調節する。

MC-45

乾式、連続バッチ式

特殊研布

300〜400

16%以下に乾燥後

0.97

(0.10〜1.86)

処理回数は1回、時間は7〜10分程度とする。

共通

処理前には粗選を行い、夾雑物や土砂などを取り除く。汚れ指数の低下は平均0.74〜0.97程度であるため、コンバイン収穫では汚れ指数2.0以下で収穫することが望ましい。

 

図1 豆用および汎用コンバインの汚れ指数

4.成果の活用面と留意点
1)道央・上川地方における大豆のコンバイン収穫に利用できる。
2)大豆クリーナによる汚れ除去に利用できる。

5.残された問題とその対応
1)利用体系と連携したコンバインおよびクリーナの経費計算は行っていない。
2)大豆収穫後の乾燥方法の検討は行っていない。