成績概要書(作成 平成12年2月4日)

研究課題名:菜豆(金時類)の高品質収穫乾燥技術
予算区分:道単(豆基)
担当科:十勝農試 研究部 農業機械科、豆類第二科、中央農試 農産化学部 品質評価科
研究期間:平成9〜11年度
協力分担関係:なし

1.目的
 菜豆(金時類)の収穫乾燥時に発生する被害粒の発生要因と加工適性を収穫法別に解明し、その軽減対策を検討する。

2.方法
1)ピックアップ収穫時の被害粒発生要因の解明
(1)被害粒発生要因解明試験:「大正金時」、「福勝」、作物水分、脱穀部周速度(低速:5、高速:7m/s)、被害粒割合
(2)品質、加工適性(煮豆)に及ぼす影響:種皮色、成分含有率、吸水特性、煮熟特性
(3)成熟期の葉落ちに関する試験:「大正金時」、「福勝」、標準、密植、追肥量(N:0-12kg/10a)、子実重、残葉量
2)ピックアップ収穫技術に対する適応性確認試験
(1)収穫条件と被害粒発生に関する試験:ピックアップスレッシャ、脱穀周速度(5.0〜6.4m/s)、被害粒割合
(2)乾燥・一時貯留に関する試験:通風温度・湿度、風量比、重量変化、堆積条件と変形量、組成・損傷
3)ニオ積み特性調査:ニオ形態、集積脱穀時作物水分、ニオ内部温度、被害粒割合、子実品質

3.結果の概要
1)収穫時期における茎葉水分は、地干しを行うことにより、立毛状態よりも速やかに低下した。また、平均子実水分は立毛・地干しに関わらず1日当たり1.6%程度低下し、収穫時期が遅くなるほど子実水分のばらつきは小さくなった(図1)。
2)「未着色粒」、「へこみ・潰れ粒」は平均子実水分が高い(収穫時期が早い)ほど、また「色流れ粒」、「裂皮・割れ粒」は平均子実水分が低い(収穫時期が遅い)ほど、発生程度は大きかった。さらに、「へこみ・潰れ粒」、「裂皮・割れ粒」は高速脱穀で発生程度は大きかった。収穫適期は子実水分が18〜26%、すなわち完熟期(熟莢率ほぼ100%)から6日以内と考えられた。
3)収穫時期による煮熟特性の差異は、概して小さかったが、脱穀時の子実水分が著しく低い場合には皮切れ率が上昇する傾向にあった。地干しによる子実品質への明確な影響は認められなかったが、高速脱穀では皮切れ率がやや高まる傾向にあった。
4)被害粒の煮豆加工適性については、「潰れ粒」、「裂皮粒」など、種皮や子葉に障害のあるものは煮熟時に整粒率が著しく低下した。「へこみ粒」では正常粒よりも皮切れ率がやや高く、「かすり粒」では煮熟後も正常粒よりも薄い色となった。「色流れ粒」では煮豆加工過程で正常粒と色の差は小さくなったが、加糖後の色のばらつきは大きかった。
5)ピックアップ収穫では子実水分が高い場合に押傷粒の発生が増加し、低い場合には機械裂皮粒の激増が懸念されることから、脱穀部周速度は子実水分19〜23%範囲では5.0〜6.0m/s程度、19%以下あるいは23%以上では5.0〜5.4m/sが最適と考えられた(図2)。
6)ピックアップコンバイン(軸流型)収穫では、ピックアップスレッシャ収穫に比べ、被害粒の発生が多かった。
7)無加温通風乾燥では子実水分の低下にともない乾燥速度も低下するが、平均乾燥速度は0.15〜0.17%/hであった。また、無通風で5cmに堆積し1日に1回攪拌した場合の乾燥速度は0.17〜 0.19%/hであった。一方加温通風乾燥では、低温であっても連続通風は品質に好ましくないことが確認された。
8)子実表面に発現するへこみ変形粒の発生は、堆積高さが高いほど甚だしく、貯留中に水分が増減した子実に生じやすいことが確認された。
9)機械集積の場合、ニオ自重による下部への圧密抑制と集積下部の通気性を確保した改良型のニオ台を使うことにより、積み替えすることなく十分乾燥させることが可能であった。ニオ台を使用した場合の乾燥速度は0.25%/日程度であった。
10)ニオ積み方法の違いが子実品質に及ぼす影響については、手積みであってもニオの部位によっては品質にばらつきがみられたが、改良型のニオ台を使うことにより品質のばらつきは小さくなり、加工適性の面からも良好であった。
11)以上の結果より、「菜豆(金時類)収穫乾燥の要点」を作成した(表1)。

 


図1 成熟期以降の子実水分の分布と平均子実水分の推移

 


図2 脱穀部周速度別にみた子実水分と損傷粒発生割合の関係

 

表1 菜豆(金時類)収穫乾燥の要点

 

4.成果の活用面と留意点
1)子実水分の低下速度は気象等によって変動するので、子実水分を簡易水分計等で測定することが望ましい。
2)収穫適期間中の気象等を考慮し、色流れ粒の発生を回避するよう心掛ける。
3)追肥により収穫時期の葉落ちが悪くなる場合がある。

5.残された課題とその対応
1)成熟期の葉落ちが不良で、乾燥も不十分な場合の収穫・脱穀方法の検討。
2)コンバインの脱穀様式と搬送法が損傷に及ぼす影響。