成績概要書        (作成 平成13年1月)
課題の分類
研究課題名:新生子牛の胎便成分の特性と初乳中β−カロテンの役割     
          (母牛の血中代謝成分の胎盤・初乳経由による新生子牛への移行特性の解明)
予算区分:科・重点基礎
研究期間:平成12年度
担当科:北海道農試 畜産部資料評価研
担当者:久米新一,大友友子,野中和久
協力分担:

1.目的
 新生子牛の生存率は飼養管理の改善などにより向上しつつあるものの、疾病が原因で生じる子牛の増体率低下などは現在でも乳牛の生産性低下をもたらす要因の一つである。新生子牛は健康維持に必要な栄養成分を妊娠末期には胎盤経由で、また出生後は初乳経由で摂取しているが、母牛から新生子牛への栄養成分の移行については未解明の部分が多い。
 そこで、新生子牛の胎便・血液成分、母牛の初乳成分の特性を明らかにするとともに、子牛の軟便・下痢状態(糞中乾物含量が20%以下)、貧血症状(血中ヘモグロビン(Hb)濃度が9g/dl以下)発生と代謝成分の関係を明らかにする。
 
2.方法
(1)畜産試験場で採取した子牛52頭(双子5組)の血液成分(出生直後、6日齢の朝)、糞成分(出生直後、6日齢)、直腸温(出生直後、6日齢の朝)とその母牛47頭の初乳成分(分娩直後、分娩4日後の朝)のデータを解析に用いた。
(2)北海道農業試験場で採取した子牛54頭(双子2組)の糞成分(出生直後、6日齢)、直腸温(出生直後、6日齢の朝)とその母牛52頭の初乳成分(分娩直後、分娩1週後の朝・夕の合乳)のデータを解析に用いた。
 
3.成果の概要
(1)新生子牛の出生直後の胎便と6日齢の糞は粗蛋白質と粗脂肪の割合が高く、繊維は非常に少ないが、ミネラルでは出生直後にマグネシウムと鉄含量が極度に低かった(表1)。
(2)糞中乾物含量20%以下を軟便・下痢状態とみなすと、106頭の子牛で糞中乾物含量が
20%以下の子牛は出生直後では5頭なものの、6日齢では23頭に増えた。
(3)初乳中のβーカロテン含量が少ないと6日齢の子牛の血漿中βーカロテン濃度が低く、子牛の血漿中βーカロテン濃度が低いと糞中乾物含量も低下した(図1、2)ことから、初乳由来のβーカロテン摂取量の不足が子牛の軟便・下痢症状の発生に関与している可能性が示唆された。
(4)6日齢の子牛が下痢状態になると、糞中のNaとK含量が増加するとともに、血漿中のNaとK濃度も上昇した。
(5)分娩直後に血中Hb濃度の低い子牛は、6日齢ではさらに低下した。


 
4.成果の活用面と留意点
(1)新生子牛の出生直後における栄養状態に関する基礎データとして活用できる。
                    
5.残された問題点とその対応
 母牛と子牛の代謝成分の移行に関するデータの解明が一部未了のため、それらに関するデータの解析を進める。