成績概要書        (作成 平成13年1月)
課題の分類
研究課題名:免疫クロマトグラフィー法による牛ロタウイルスの簡易検出法     
          (牛ロタウイルス簡易検出キットの有用性)
予算区分:受託
研究期間:平成11年度
担当科:道立畜産試験場 畜産工学部感染予防科
協力分担:

1.目的
 近年、畜産農家一戸あたりの家畜飼養頭数が増大し、感染症の増加が問題となっているため、臨床現場における病原学的診断が重要視され、臨床獣医師が検査を行うことが多くなっている。これまでは、子牛下痢症の原因となるロタウイルスの検索には人体用に開発されたロタウイルス検出キットが使用されていたが、Sinovus社の開発した動物用ロタウイルス検出キットは免疫クロマトグラフィー法に基づいた診断キットで、操作が簡便なため臨床現場での使用に適していると考えられる。そこで、ロタウイルス実験感染子牛および野外での下痢発症子牛の糞便中ロタウイルスを本キットで検出し、ラテックス凝集法(人体用ウイルス検出キット)と比較し、本キットの有用性を明らかにした。
 
2.方法
1)牛ロタウイルス実験感染子牛におけるウイルスの検出
 生後3〜5日齢の初乳未摂取ホルスタイン新生子牛4頭に牛ロタウイルス1×107 TCID50 を経口投与し、ウイルス投与後12時間ごとに7日間糞便を採取した。免疫クロマトグラフィー法(ラピッド・ロタディップスティック、Sinovus Biotech 社、スウェーデン)、ラテックス凝集法(ロタレックス・ドライ、Orion Diagnostica 社、フィンランド)および電子顕微鏡法(電顕法)により、子牛糞便中の牛ロタウイルスの検出を行った。
2)野外の下痢発症子牛におけるウイルスの検出
 十勝および胆振管内の23農場で1999年3〜5月に下痢を発症した78頭の子牛糞便を用い、免疫クロマトグラフィー法とラテックス凝集法によりロタウイルスを検出した。検出結果が一致しない検体については、ロタウイルスRNAのポリアクリルアミド電気泳動法(RNA-PAGE)によりウイルス遺伝子の検出を行った。
 
3.結果の概要
1) 牛ロタウイルス実験感染子牛において、免疫クロマトグラフィー法とラテックス凝集法による糞便中ウイルスの検出時期は一致した。ウイルス投与後12時間〜3日目から子牛糞便中にウイルスが検出され、ウイルスの排泄は3〜5日間持続した。陽性と判定された検体はすべて電顕法でロタウイルス粒子が確認された(表1)。
2) 野外での下痢発症子牛において、免疫クロマトグラフィー法とラテックス凝集反応法による糞便中ロタウイルスの検出結果の一致率は83.8 %であった(表2)。ウイルスの検出率は免疫クロマトグラフィー法の方が高かった。
3) 免疫クロマトグラフィー法による牛ロタウイルス検出キットは、操作が簡単で総検査時間も短く、検査室以外の場所でも使用可能であった(表3)。
 

4.成果の活用面と留意点
 免疫クロマトグラフィー法に基づいた本キットは臨床現場での迅速診断法として活用できる。

5.残された問題とその対応