成績概要書        (作成 平成13年1月)
課題の分類
研究課題名:メドウフェスクの集約放牧適性     

予算区分:経常・畜産対応研究(自給飼料基盤)
研究期間:平成6〜12(〜15)年度
担当科:北海道農試 草地部放牧利用研
担当者:須藤賢司・小川恭男・落合一彦・池田哲也・梅村和弘
協力分担:北農試 草地部イネ科牧草育種研


1.目 的
搾乳牛の集約放牧用草種には嗜好性や再生力に優れるペレニアルライグラス(Pr)が適しているが,土壌凍結地帯での越冬が困難である。これに対して,メドウフェスク(Mf)は耐寒性に優れ,嗜好性も良いとされ,Prの代替草種として期待できる。しかし,Mfは採草地の随伴草種として混播利用される場合が多く,集約放牧条件下での評価がなされていない。そこで当課題では,Prを対照に,Mfの集約放牧適性を明らかにし,その産乳性について検討した。

2.方 法
①利用草高が草地の生産量,栄養価,植生変化に及ぼす影響を明らかにするために,Mf(品種:トモサカエ)およびPr(品種:フレンド)主体1区60のプロット放牧試験区を設け,未経産牛4頭を用いて放牧試験を実施した。
処理区は①Pr区:Pr,入牧時草高20cm②ML区:Mf,入牧時草高20cm③MH区:Mf,入牧時草高25-30cmとした。
②Mf(トモサカエ)およびPr(フレンド)主体のWc(ソーニャ)混播草地各1.6haを23牧区(1区約7a)に区分し,5年間にわたり毎年5月から約180日間,春分娩の搾乳牛各4頭を昼間約9時間,1日輪換放牧した。両草地とも採草・放牧兼用利用とした。夜間は8頭1群とし,オーチャードグラス等主体の0.8haの草地に放牧した(1牧区制)。放牧期間を通じ,Mf草地に放牧される個体(Mf区)とPr草地に放牧される個体(Pr区)を固定し,両区間で産乳性の比較を行った。

3.成果の概要
①草高20cmで放牧を行った場合,ML,Pr両区とも収量(図1)はDM6t/ha,TDN(図2)は70%以上であったが,ML区は植生(図3)が悪化した。これに対し,草高25-30cmで放牧したMH区は植生の悪化も少なく,年間利用回数(表1)がPr区よりも減少するものの,収量はDM8t/haであった。よって,Mfの植生を維持しつつ,集約放牧利用するには,TDNが69%程度まで低下する場合があるものの,利用草高はPrよりも高い25-30cmに設定する必要がある。
②Mf草地における産乳性はPr草地と同等であることが明らかとなった。すなわち,Mf,Pr両区各年の平均日FCM(4%脂肪補正乳量)は28-36kg,乳脂率は3.6%以上,乳蛋白質含量は3.1%以上,無脂固形分(SNF)は8.6%以上で,各項目とも両区間に有意差はなかった(表3)。また,放牧期間中,必要なTDNの50%を放牧草から供給でき,その際の粗飼料給与率(補助飼料のサイレージと乾草を含めた数値)を60%以上とすることが可能であり,ha当たりの産乳量は7600kgに達することが示された(表4)。





4.成果の活用面と留意点
①本成果はMfが栽培可能な地帯で搾乳牛の集約放牧を実施する場合に適用できる。
②Mf放牧草地で出穂があった場合,6-7月の間に1回,掃除刈りを行うことが望ましい。

5.残された問題点とその対応 ha当たり産乳量と放牧強度および利用率との関係,道東など土壌凍結地帯でMfを集約放牧利用した場合の永続性について解明するため,経常研究の予算区分で研究を継続する。