成績概要書                   (作成 平成13年1月)
課題の分類
研究課題名:泥炭分布地域における大区画水田の適正規模と管理対策
      (寒冷地大規模水稲作における省力・安定生産技術)
予算区分:補助(地域基幹)
担当科:中央農試 農業環境部 環境基盤科
担当者:
研究期間:平10-12年
協力・分担:なし

1.目 的
 泥炭分布地域の大区画水田における地盤条件から見た適正規模の区分を行う。また、大区画水田の営農作業上の問題点を明らかにし、今後のほ場整備と管理の改善点を提案する。

 2.方 法
1)石狩川水系における土質地盤条件から見た大区画ほ場の適正規模
 (1)大区画ほ場の均平精度調査:造成後1〜5年目の1.0〜4.4ha・27ほ場で継続測量
 (2)石狩川水系における泥炭層厚分布図および安定地盤分布図:上川・空知・石狩地域ボーリング資料を基に泥炭層累層区分と泥炭層厚分布図、安定地盤深分布図を作成大区画水田の適正規模を泥炭層累層と泥炭層厚で区分した。
2)大区画ほ場整備と利用の状況
 (1)整備状況調査:各地区の担い手育成基盤整備(区画整理型)計画概要資料を収集
 (2)大区画ほ場整備に対する農業者の考え方のアンケート(北海道農政部実施)11市町村の受益者309戸、経営形態や大区画化の影響に関する項目
 (3)大区画ほ場での農作業性:9農家で大区画と標準区画の作業時間の聴取り調査
3)大区画ほ場の用排水管理調査:妹背牛町1ほ場、深川市4ほ場、長沼町5ほ場(用排2系統化、地下かんがい、額縁明きょ)、平取町3ほ場(地下かんがい)で入水、排水状況を調査

3.結果の概要
 1)大区画ほ場の均平精度は、区画面積と長辺長、土壌型が影響しており、泥炭土では年々均平精度が低下し、3年程度で均平化対策が必要となった(図1)。特に、長辺長が長いほど均平精度の低下が顕著で、区画面積が2ha以上になると均平精度の確保が困難であった。
 2)石狩川水系において泥炭分布地域の地盤特性を評価するため、泥炭層の集積状況を表層集積型、中下層集積型、互層型で累層区分するとともに、深層までの泥炭分布を示した泥炭層厚分布図および農業基盤整備で利用される安定地盤深分布図を作成し(図2)、これらにより区分した大区画ほ場の適正規模を示した(表1)。
 3)ほ場整備実態調査から最近では大区画ほ場は区画の面積が1〜1.25ha、長辺長が170m程度での整備が主流で、2haを超える大区画ほ場は少なくなっていることが明らかとなった。
 4)アンケート結果から大区画ほ場整備実施農家の整備事業参加理由は、用排水路や暗きょ、客土を実施するためが半数を占め、必ずしも大区画化だけを期待していなかった。また、大区画ほ場は均平性の維持や用排水管理について半数近くが大変になったと回答した。
 5)大区画水田の実際の農作業性では、耕起・収穫などは土壌や気象条件に左右され効率を落とす場合もあった。一方、代かきや田植えは作業効率が20%程度向上した。
 6)大区画ほ場の管理対策として、用排水管理の改善点(表2)とほ場整備上の改善点(表3)を提案した。


図1 土壌別均平精度の経年変化

表1 石狩川水系における大区画ほ場の適正規模

  泥炭層累層区分
 
泥炭層厚区分
10m以上 10m未満5m以上 5m未満 未分布
  
 Ⅰ:表層集積型
 
長辺長 130〜170m
短辺長 40m   
面 積 0.5〜0.7ha
長辺長 130〜170m
短辺長 40〜60m
面 積 0.5〜1ha
長辺長 170m  
短辺長 40〜60m
面 積 0.7〜1ha
長辺長
170〜250m
短辺長
40〜80mm
面 積
0.7〜2.0ha


 
  
 Ⅱ:中下層集積型
 
長辺長 130〜170m
短辺長 40〜60m
面 積 0.5〜1ha
長辺長 170m
短辺長 40〜60m
面 積 0.7〜1ha
長辺長 170m  
短辺長 40〜80m
面 積 0.7〜1.4ha
  
 Ⅲ:互層型
 
長辺長 130〜170m
短辺長 40〜60m
面 積 0.5〜1ha
長辺長 170m
短辺長 40〜80m
0 面 積 0.7〜1.4ha
長辺長 170〜250m
短辺長 40〜80m
面 積 0.7〜2.0ha
 注)   メッシュ内の区分は大区画化が困難
 
  表2 大区画ほ場の営農上の管理対策
項 目      営農上の管理対策
用水管理
・長辺長が200m以上では、額縁明きょを設置
排水管理
 
・50a程度にほ場内明きょが必要
・落水口敷高を田面下15〜20cmとする
防除方法
 
・防除効率化のため乗用型管理機導入
などの検討が必要
 
 表3 大区画ほ場の基盤整備上の改善点 
 項 目    留意点および改善点
長辺長 ・泥炭層厚、現有機械性能を考慮
短辺長 ・整備後の防除法や作業体系を考慮
水口
  
・用水量が不足しやすい地域では、50aに1カ所、長辺長が200m以上
では両端短辺(2カ所)に配置  
落水口
 
 
・区画面積が1ha以上では50aに 1カ所、長辺長が200m以上では 
両端短辺(2カ所)に配置   
暗きょ排水
  
・区画面積が1ha以上では、集水域を50a程度にする      
・長辺長が200m以上では、水甲を両端短辺(2カ所)に配置   


図2 富良野盆地の泥炭層厚および安定地盤深分布図

4.成果の活用面と留意点
 1)本成績では石狩川水系を対象としたが、他の水田地帯においても本成果を活用できる。

5.残された問題とその対応
 1)大区画ほ場の低コスト造成法および土壌物理性改善対策
 2)田畑輪換への影響とその対応