１．目　的
　コナガ発生予測システム(春まき栽培)の道内での適合性を検討し、各種害虫の簡易モニタリング法、薬剤抵抗性の発達をさけるために薬剤の効率的使用方法を明らかにして、キャベツ主要害虫(コナガ)の発生予測システム利用による、他害虫(ヨトウガ、モンシロチョウ、アブラムシ類)を含めた防除技術を確立する。

２．方　法
１)発生予測システム(コナガ)の適合性の検討と改良
　空知、上川、渡島管内圃場(春まき；５月定植)で検討：害虫発生消長、被害推移、収量
２)簡易モニタリング法の検討および実証
　(1)作型別の効率的な調査開始時期、調査間隔、調査方法の検討
　(2)ヨトウガ発生時期に限定したフェロモントラップによる防除開始時期の検討
３)効率的薬剤防除技術の確立
　(1)茎葉散布薬剤の作用特性
　(2)粒剤の有効期間と対象害虫

３．結果の概要・要約
(1)コナガ発生予測システムの適合性
　１)春まきキャベツにおける害虫防除
　1999年発生予測システムによる防除開始日は長沼町６月５日、比布町６月５日で、新食痕による発生対応防除区と同時期であった。新食痕数は１/株前後、株被害・中心結球部被害指数は0.5前後であった。2000年の発生予測システムによる防除開始日は長沼、比布、大野とも５月中であったが、食葉性害虫の発生量は少く防除の必要はないと考えられた(第1、2図)。
　２)発生予測システムによる防除開始時の害虫密度
　発生予測システムによる防除開始時のコナガ密度は少ない年は10頭/10株以下(1998、2000年)、多い年は20〜40頭/10株(1996、1997、1999年)であった。
　３)発生予測システムによる防除開始時期の全道での適合性
　５月中に防除開始日となったのは2000年長沼町、比布町、大野町、芽室町、伊達市、1994年の比布町、伊達市のみで、春期の気温推移は年により全道で大きく変動しないことが明らかとなった。以上のことなどから、北海道の春まきキャベツ栽培における防除開始時期は平成10年度指導参考事項の発生予測システムに準じ、防除開始は６月からに改良する(第3図)。

(2)防除間隔決定のための簡易モニタリング法
　コナガの要防除水準は新食害痕数1に設定されている。春まき栽培(5月定植)で新食害痕数1に対応するのは、結球部被害指数0.4〜0.5、晩春まき栽培(6月定植)で結球部被害指数0.4、初夏まき栽培(7月定植)で結球部被害指数0.4であった｡結球部被害指数0.5を目安に防除した結果、各作型で高い商品化率となった。これらのことから、防除開始時期を決定する簡易モニタリング法として結球部被害指数0.4〜0.5を利用することが可能と考えられる（第4図)。

(3)キャベツ害虫の効率的防除法
　春まき栽培は発生予測システムで6月から防除を開始し、結球部被害指数0.4〜0.5で防除時期を決定する。晩春まき、初夏まき栽培は粒剤施用を基本とし、結球部被害指数0.4〜0.5で防除時期を決定する。害虫の発生量、生育ステージに応じて使用薬剤を選択する。

(4)その他の害虫の防除
　モンシロチョウは、コナガと同時防除が可能である。ヨトウガのフェロモントラップは発　生予測には利用出来なかった。発生時期にはヨトウガ幼虫に効果の高い薬剤を散布する必要がある。アブラムシ類は発生量が多い場合には、食葉性害虫とは別に防除する。

第1図 気温･ｺﾅｶﾞ･被害推移と防除(2000年)

第2図 収量と商品化率

第3図　フェロモントラップとアメダスデータを利用したコナガ防除開始時期予測システム
Ver.２

第4図　新食害痕数と結球部被害指数の関係