課題の分類 研究課題名:ハウス野菜(トマト)の灰色かび病の薬剤感受性の低下に伴う反応 (総合的病害虫管理技術実証事業) 予算区分:補助 担当科:病害虫防除所 予察課 担当者: 研究期間:平成10−12年度 協力・分担関係: |
1.目的
灰色かび病の耐性菌の全道分布と発生推移を把握し、農薬の使用回数をできるだけ減らすため、耕種的防除法を検討する。
2.方法
(1)耐性菌の全道分布調査、
(2)耐性菌の推移、
(3)薬剤の散布回数と耐性菌の出現、
(4)ハウス資材・管理法による発病の違い、
(5)胞子の飛散状況
3.結果の概要
(1)耐性菌の全道分布調査
①道内における灰色かび病のジカルボキシイミド系(P:プロシミドン,I:イプロジオン)剤耐性菌の分布は、主要なハウス野菜・花卉栽培地域のほぼ全域に及んでいた(図1-1)。ジエトフェンカルブ・チオファネートメチル水和剤(G剤)に対する耐性菌もかなりの地域で認められた(図1-2)ので注意が必要である。
(2)耐性菌の推移
①冬期間ビニールを張りっぱなしにしていたハウスでは、越冬後もチオファネートメチル(T)剤、 P、I剤に対する耐性菌はほとんど低下しなかった(図2-1)。
②冬期間ビニールを除去または新規ハウスでは、はじめはいずれの薬剤に対する耐性菌率とも低かったが、薬剤を1,2回散布すると耐性菌率はほぼ100%になった(図2-2,3)。
③P、I剤の使用は、耐性菌が確認されていない地域、また確認された地域では新規ハウスや冬期間ビニールを除去したハウスで1作期1回とする。また、T剤は本病に対してほとんど効果がない。
(3)薬剤の散布回数と耐性菌の出現
①I剤散布の前歴がなく耐性菌が0%のハウスでは、1回散布で耐性菌が出現し、散布毎に耐性菌率が増加し、その後薬剤散布しなくてもそのレベルは長期間低下しなかった。 (図3-1)。前歴があり耐性菌が散布前から認められたハウスでは、防除効果は認められなかった(図3-2,3)。
②耐性菌が確認された地域では、その薬剤の効果は期待できないため、それ以外の薬剤でローテーション散布を行う。
(4)ハウス資材・管理法による発病の違い
①灌水方法では、マルチの下に灌水チューブを設置するのが最も発病を抑制した(図4-1)。風通しが悪かったハウスでは灌水方法によってあまり差が見られず発病は多かった(図4-2)。
②屋根資材がキリナインのほうが夜間〜早朝の湿度を低く抑え、ノービエースより発病が抑えられた(図4ー3)。
③ハウス管理で最も重要なことは、風通しを良くすることである。また、枯死葉や罹病茎葉の除去およびハウス資材の選択も有効である。
(5)胞子の飛散状況
①胞子は湿度が高いと飛散が多くなる。特に、湿度の増加に反応して飛散量も増加する。
②曇雨天時や湿度の高い場合は、胞子の飛散を抑えるため、特に換気に注意する。
図1-1 P,I剤に対する耐性菌の分布
図1-2 G剤に対する耐性菌の分布
図2-1 冬期間ビニール張りっぱなし(無散布)
図2-2 冬期間ビニール除去(6月定植)6/4定植前6/18I剤
図3 薬剤散布と耐性菌率(1999年)
図4-1 灌水方法と発病果率
灌水チューブ | 罹病茎葉などの除去 | |
A B C |
マルチ下 下向き 上向き> |
無 無 無 |
a b c |
マルチ下 下向き 上向き |
有 有 有 |
図4-2 ハウス環境と発病葉数
図4-3 資材の違いと発病果率
4.成果の活用面と留意点
(1)本試験成績はハウス野菜栽培地域の灰色かび病防除に適用する。
5.残された問題とその対応
(1)微生物農薬の効果的な使用方法