成績概要書       (作成 平成13年1月)
課題の分類:
研究課題名:精密農業のための圃場マップ作成と収量センシング技術       
        (大規模農業向け精密自律走行作業支援システムの開発研究)
予算区分:受 託
研究期間:平成10〜12年度
担  当:中央農試 生産システム部 機械科
       十勝農試 生産研究部 栽培システム科
       根釧農試 研究部 酪農施設科
協力・分担関係:北大、ISRC、はこだて未来大学、(株)サークル鉄工、東洋農機(株)

1.目 的
 精密農業に必要な土壌および収量マップの作成・評価法を検討するとともに、収量マップ作成のためのばれいしょ収量センサを開発する。

2.方 法
1)小麦収量マップの評価
(1)試験場所:芽室町農家圃場
(2)試験区画160×100m、1.5ha
(3)供試コンバイン:普通型コンバインLEXION440, CLAAS社, 刈幅4.5m
(4)GPS:RTK-GPS RT-2, NovAtel社, 測位精度2cm

2)ばれいしょ収量測定システムの開発
(1)試験場所:十勝農試
(2)供試ポテトハーベスタ:TPH7-U, 東洋農機(株)
(3)供試センサ:光学式ラインセンサ SF1-F32, サンクス(株), 光軸距離2cm, サンプリング周波数100Hz
(4)供試ばれいしょ:芽室町産「メークイン」など

3)土壌マップに基づく施肥手法の検討
(1)試験場所:芽室町農家圃場
(2)対象作物:てんさい
(3)試験区:マップ施肥区260×63.4m, 1.6ha, 96畦、慣行区260×31.7m, 0.8ha, 48畦
(4)土壌サンプリング:メッシュサイズ20×20m、採土深15cm
(5)土壌分析項目:熱水抽出性窒素、有効態リン酸、交換性カリ
(6)使用肥料:複合硝化燐安S182(慣行区・マップ施肥区)、苦土重焼燐1号(マップ施肥区)
(7)施肥設計:慣行区N:P:K=22:36:24kg/10a、マップ施肥区N:P:K=16.0〜19.2:32.5〜37.5:17.5〜20.9kg/10a
  (「北海道施肥標準」および「熱水抽出性窒素水準に対応した窒素施肥」に準拠)
(8)供試施肥機: 4畦用施肥機(開発機) CFC-4, (株)サークル鉄工
(9)GPS:RTK-GPS MS750, Trimble社, 測位精度2cm

3.結果の概要
1)圃場内のコンバインの位置計測にRTK-GPSを用い、普通型コンバインに搭載した収量測定システムの計測精度の検討を行った。収量測定システム出力と実測値の差は-2〜-9%であった(表1)。
2)コンバイン収量データからセミバリオグラムを作成し(図1)、クリギング法を用いて収量マップを作成した。供試圃場における適正なサンプリングメッシュサイズは約80m以下であった。
3)光学式ラインセンサを使用したばれいしょ収量センサは平均値に対するRMS誤差が約10%でばれいしょ重量の計測が可能であった(図2)。
4)マップに従って2種類の施肥量制御が可能な4畦用施肥機を開発した。てんさい圃場でのマップ施肥区の実施肥量は設定値の94〜95%であった(表2、図3〜4)。マップ施肥区の窒素施肥量は慣行区より約20%少ない設計であるが、根重はマップ施肥区が5.86t/ha、慣行区は5.96t/haであり、有意差はなかった(表3)。

表1 小麦収量センサの精度


図1 小麦収量のセミバリオグラム


図2 ばれいしょ収量センサの精度

単位:mg/100g
図3 てんさい圃場の土壌成分マップ
(熱水抽出性窒素、移植前)

表2 マップ施肥区の設計施肥量と実施肥量

(分析値:熱水抽出性窒素1.2〜3.6mg/100g)

用肥料:S182 単位:kg/10a  マップ施肥区のみ
図4 てんさい圃場の施肥量

表3 施肥量とてんさいの根重

4.成果の活用面と留意点
1)開発した技術要素は精密農業研究に活用できる。

5.残された問題とその対応
1)土壌成分の省力的かつ迅速な分析法およびサンプリング手法の開発。
2)実証データの蓄積とその解析。