成績概要書                    (作成 平成13年1月)
課題の分類  北海道 農業工学 基盤・施設 施設管理−Ⅲ−4
研究課題名:ラグーン等で利用した表面遮水ゴムの耐久性
予算区分:経常
担当科:開発土研・農業開発部・農業土木研
担当者:秀島好昭、小野寺康浩、田鹿秀則
研究期間:平11〜12年
協力・分担関係:なし

1.目 的
 既設ラグーン等で使用されている一般のゴムシートが寒冷な環境下でも充分な耐久性・供用性を長期に維持しているのか判断するため、長期間供用された遮水ゴムの力学的特徴を明らかにする。

2.方 法
 既設の澱粉廃液貯留池(士幌町、堤高5.5m、22年経過)・家畜ふん尿貯留池(標茶町、堤高3.1m、10年経過)に敷設された遮水用ゴムシートについて力学的物性の室内試験を行った。
 試料には、澱粉廃液貯留池南北方向の貯留面上下部の厚さ2.0mmの加硫ゴム(EPDM/ブチルゴム)と底面部の厚さ1.5mmの加硫ゴム(EPDM)を採取した。ゴムシート背面には、砂礫地盤に火山灰を10cm程度敷き均した基盤が設けられている。また、家畜ふん尿貯留池南北方向の貯留面上下部より厚さ1.0mmの加硫ゴム(EPDM)を採取した。ゴムシート背面は、原地盤(火山灰)のみで基礎処理を行っていない(図−1)。

3.結果の概要
 1)澱粉廃液貯留池斜面部ゴムの引張強さ(TB)、切断時伸び(EB)、および引張応力(M100:100%引張時の応力)は、太陽の紫外線の影響を受けやすい南向ゴムの力学性の変化の度合いが大きいものの、TBで4.4MPa、EBで147%以上の特性を有している(図−2、3)。また、家畜ふん尿貯留池斜面部ゴムのTB、EBおよび引張応力も、澱粉廃液貯留池と同様の傾向を示し、TBで8.8MPa、EBで283%以上の特性を有している(図−4、5)。これらの諸数値は、貯留池の水圧等の外力に比べ、充分な強度を維持している。
 2)澱粉廃液貯留池における底面部ゴムのTBは6.5MPa、EBは270%程度の値を示すことが確認された(図−6)。初期値と比べTBは32.4%、EBは46.0% 減少しているが、底面部ゴムは貯留液による温度・紫外線等からの保護作用があることから、ゴムの劣化の度合いは斜面部に比べて低い。


図-1 澱粉廃液、家畜ふん尿貯留池斜面部におけるゴムシート採取箇所


図-2 澱粉貯留池斜面ゴムのTB、EB(1MPa≒10.2kgf/cm2)


図-3 澱粉貯留池斜面ゴムのM100


図-4 家畜ふん尿貯留池斜面部ゴムのTB、EB


図-5 家畜ふん尿貯留池斜面部ゴムのM100


図-6 澱粉貯留池底面部ゴムのTB、EB

4.成果の活用面と留意点
 今回の試験結果から、実際にラグーン等に長期間使用されている遮水ゴムシートの物性・力学性については、敷設時点の諸数値に比べ低下している傾向が認められたものの、20年程度の供用期間を経たものでも設計外力、条件に対して充分な耐性を有していた。ゴムシート接着箇所については、現場接合部の場合、施工条件等による接着強さのバラツキを生じていたため、さらに検討する必要がある。
 試験対象としたゴムは農業用貯水池の遮水材として一般的に使用されている加硫ゴムであるが、本道のような積雪寒冷地においても、20年程度の耐久性は得られるものと考えられる。

5.残された問題とその対応
 ラグーン等に使用する遮水ゴムシートの耐久性を向上させるうえでは、ゴム自体の性状変化の追跡評価と併せて、ゴムシートへの損傷を軽減するための維持管理作業上の方策の検討が必要である。