成績概要書>                   (作成 平成13年1月)
課題の分類
研究課題名:小豆のタンニン含量の変動要因と食味(渋味)に及ぼす影響
        (小豆の煮熟に伴うタンニン(渋味成分)の変動解析試験
予算区分:道 費
研究期間:平成10−12年度
協力・分担関係:

1.目的
 小豆の渋の原因物質であるタンニンの変動要因として、品種、栽培年次、栽培地や栽培条件、および貯蔵条件による影響について検討を行った。また、タンニン濃度と渋味の関係や、あんの食味に及ぼす影響についても検討し、原料小豆の渋味成分に関する情報を付与するとともに、道産小豆の品質向上と需要の拡大に寄与する。

2.方法
1)供試試料
 ・H9〜12年産小豆:道立農試産小豆10〜11品種・中国産小豆3〜4銘柄
 ・貯蔵小豆:H9年産「エリモショウズ」(5℃恒温庫・15℃以下低温倉庫・常温倉庫;紙袋)
 ・圃場栽培小豆:H9〜12年産「エリモショウズ」(窒素施肥量;N3, N9, N12, N15, N27)
2)タンニン含量の測定
 原粒(粉砕物より熱水抽出)、浸漬液、煮汁のタンニンをフェナントロリン法により測定

3.結果の概要
 1)小豆のタンニン含量は、普通小豆に比べて大納言小豆では低く、中国産小豆では同程度か高い傾向にあった。また、栽培年次や栽培地によって差が認められた(図1)。
 2)施肥量や追肥時期によるタンニン含量への影響は小さかったが、登熟程度の影響は大きく、登熟段階の早い時期(青莢)ではタンニン含量が高かった。同一品種では、小豆の百粒重(粒大)によってタンニン含量は大きく異なり、百粒重が小さいものほどタンニン含量は高かった。貯蔵条件としては、常温貯蔵よりも5℃貯蔵で煮熟過程におけるタンニンの溶出速度が速く、貯蔵温度が低いほど渋が切れやすい傾向にあった(図2)。
 3)小豆の登熟期間の気象条件としては、8月中旬〜9月中旬までの日照時間とタンニン含量の間には有意な正の相関関係(r=0.607**,図3)が認められた。また、百粒重とタンニン含量の間には有意な負の相関関係(r=−0.556**,図4)が認められた。従って、登熟期間の日照時間が長く、百粒重が小さくなるような気象条件ではタンニン含量が高くなる傾向にあった。
 4)タンニン濃度と渋味の関係については、ほとんどの人が煮汁中のタンニン濃度が30mg/100ml以下では渋味を感じないが、50mg/100ml以上では渋味を感じ、85mg/100ml以上では強い渋味を感じることが明らかとなった(図5)。
 5)加糖あんに加工した場合には、タンニン含量の差が食味に及ぼす影響は小さく、加工業者の製あん技術(渋切り等)により、その影響は小さくなるものと考えられた(図6)。

4.成果の活用面と留意事項
 本研究成果は、実需者、生産者および今後の育種や栽培研究に対して、小豆の渋味成分(タンニン)に関する情報として活用し得る。

5.残された問題とその対応
 1)小豆の登熟期間における、タンニン含量の変化と気象要因の関係。
 2)加糖あん以外の加工形態を用いた、実需者による食味(渋味)の評価。