成績概要書 (作成平成13年1月)
課題の分類 研究課題名:「ハックナイン」内部褐変発生要因と対策 (「ハックナイン」の内部褐変要因解析と発生防止技術の確立) 予算区分:道費 研究期間:平9〜11年度 担当科:中央農試 農産工学部 農産品質科 作物開発部 果樹科 協力・分担関係:なし |
1.目的
「ハックナイン」の内部褐変障害の発生要因と機作を検討し、発生軽減の方策と褐変果混入を回避するための貯蔵期間を明らかにする。
2.試験方法
1)貯蔵方法
10樹から1樹当たり50果収穫し、それぞれを無作為に5等分して10樹分を合わせ100果とし1回の調査区とした。調査は11月20日からほぼ15日おきに行った。貯蔵庫内温度は4℃、湿度90%である。
2)調査項目
項目 |
表示 |
調査方法 |
備考 |
内部褐変程度 |
0〜3 |
果実横断面を目視 |
2以上をクレームの対象となる 程度とした |
蜜入り |
0〜4 |
果実横断面を目視 | |
地色 |
1〜8 |
果頂部を「ふじ」の地色 チャートを用いて測定 |
熟度指標値。数値が高い(黄色が 濃い)ほど熟度が進行している |
3.結果の概要
1.貯蔵中に果肉硬度が低下、地色が増加し、内部褐変が増加した(図1)。内部褐変の発生しやすい果実は、蜜が入ったもの、熟度が進んだもの(地色の上がったもの、貯蔵中に果肉硬度の低下したもの)であった。また、大玉も内部褐変が出やすかった(表1)。
2.果肉の成分に関して膜強度の指標である水溶性K含有率(値が高いと膜強度が弱い)、膜透過性が高いと言われているソルビトール(蜜の成分)およびミトコンドリアCaとり込み活性(膜成分とのCa競合の可能性がある)と内部褐変の間に正の有意な相関関係が認められた。これらのことから、内部褐変発生機作は、膜強度の低下に誘発される酸化酵素と基質(ポリフェノール)の接触によるものと想定された(図2)。
3.弱樹勢樹の果実は強樹勢樹のものより地色が高いことによって内部褐変が発生しやすいこともあったが、同程度の地色であれば強樹勢樹の果実の方が褐変しやすかった(表2)。
4.収穫時期が遅れると内部褐変が発生しやすかった(表3)。
5.Ca資材の散布は内部褐変抑制の効果が低かった。
6.「ふじ」用蜜入り判定機は、「ハックナイン」の蜜入り果をある程度選別できたが、実用化には判定精度の向上が必要であると考えられた(表4)。
7.以上の結果から、内部褐変対策を以下の様にまとめた。
1) 内部褐変軽減のための栽培上の注意事項
①同程度の地色では、強樹勢樹の果実の方が弱樹勢樹のものよりも褐変が出やすいので、樹勢が強くならないように努める。
②収穫直後〜11月中旬に販売する場合は地色4を越える果実を収穫する。12月上〜中旬まで貯蔵する果実の場合は褐変対策として地色4程度の果実を収穫し、採り遅れないようにする。なお、未熟果は褐変の発生が少ないが、食味が劣るので、早もぎは慎む。
③8月下旬〜9月上旬の気温は果実の蜜入りと関連する。低温年は蜜が入りやすく、褐変が出やすいため、出荷・販売時期を早める。
2) 内部褐変回避のための貯蔵期間を表5にまとめた。
表5 内部褐変果混入回避のための貯蔵期間
貯蔵期間 |
内部褐変の発生の |
注意事項 |
収穫期(10月下旬) 〜11月中旬 |
無 |
この時期、酸味が強く感じられることがあるので、 収穫時地色4を越える果実を出荷、販売する |
11月中旬〜11月末 |
ほとんど無 |
この時期、蜜入りの多い果実は褐変の兆候が見られる ことがある。蜜入り果の多い年は出荷、販売を急ぐ。 |
12月上旬〜中旬 |
発生の危険性有 |
この時期、問題となる褐変果発生の危険がある。 出荷・販売の対象は収穫時地色4の果実とする |
12月中旬以降 |
内部褐変果の混入の |
この時期、問題となる褐変果の混入が心配される。 また、大果、完熟果、蜜入り果は硬度も低下し果実 品質の低下が認められる。原則として12月中旬頃で 出荷・販売を終了する |
4.成果の活用面と留意点
「ハックナイン」の栽培および出荷・販売において利用する。
5.残された問題点とその対応
蜜入り判定機の精度向上