成績概要書       (平成13年 1月)
研究課題名:デルフィニウムの夜冷育苗利用による秋切り栽培技術の普及       
予算区分:道費 研究期間:平成12年度 担当科:花・野菜技術センター 技術普及部
                研究部 花き科
      空知東部地区農業改良普及センター
協力・分担関係:農業改良課、空知支庁、滝川市、JAたきかわ

1 目 的
 地域課題である米価低迷による水田農業経営の収益減を補填すべく、収益性の高い花き栽培の導入を図る。道央部の夏期高温条件に対応したデルフィニウムの夜冷育苗利用による秋切り栽培技術の現地実証を図り普及を目指す。

2 取り組みの方法
 (1) 活動体制と活動状況
   地域協議会とプロジェクトチームによる、元気づくり事業を活用した実施計画の作成支援と技術指導支援の実施。夜冷育苗は共同育苗体制による産地システムを構築。
   播種(6月1・2日、72穴トレイ3粒まき)後催芽(15℃)13日間、育苗開始6月15日シルバー遮光資材(50%)外張り被覆、間引き6月29日(セル2本立ち)、夜冷開始7月1日〜最終8月4日(夜冷17℃前後、17時から6時:熱交換機冷房(13℃地下水利用)稼働、夜冷時遮熱遮光資材(98%)内張り被覆)。
活動体制
①地域協議会 ②プロジェクトチーム ③道立 花・野菜技術センター
  技術体系化チーム運営会議
JAたきかわ花き部会
滝川市
JAたきかわ
空知支庁
空知東部普及センター
花・野菜技術センター
生産者リーダー、
JAたきかわ農産園芸課
空知東部普及センター
 (区域及び専門担当)
花・野菜技術センター
 (技術体系化チーム)
議長(技術普及部長)
副議長(研究部長・総務部長)
事務局長(次長)
運営委員(総務課長・主研・各科長)
◎チーム長(次長)−専技・主研・科長・研職

(2) 取り組み集団と農家戸数
 JAたきかわ花き部会20戸、うちデルフィニウム作付け14戸、モデル実証取り組み11戸(新規花き導入2戸)、適切な市場・経済評価を検討するため50aの実証規模で取り組んだ。

3 取り組みの成果の概要
(1) 地域課題に対応した新技術栽培の実証普及プロジェクトチーム活動(普及センターと技術体系  化チームの一体活動)は、地域関係機関との連携のもとに展開し、高度技術の普及には効果的な  現地支援となった。
(2) 地域ニーズにより指導参考技術の地域適応を検討し、次の技術を体系化し実証普及を図った。
 ① 目標とした採花率75%を達成したのは4戸/11戸、また上位規格品率(秀・L以上)70%を達成した  のは5戸/11戸で、産地全体の目標到達度は収量77%、品質99%であった。
   市場評価は11月中旬までは高く、個別の収益性が実証できたところはやや少なかったものの、目標達成者はもちろん未達成生産者の多くも次年度への生産意欲を強く示した。
 ② 秋切り作型における品種選定では、ジャイアント系「ブルーバード」の品質面の適応性が高かった。
 ③ 新技術の夜冷育苗については、セル成型苗(72穴)を用い15℃催芽処理後に育苗開始、夜冷装備  には地下水利用熱交換機を利用、実用的低温(17℃)と4.5葉苗の確保により育苗法の適応性を確認した。
 ④ 夜冷装備は共同育苗システムで導入し、共同作業を組み入れ上記育苗の低コスト化を実証した。
 ⑤ 栽培管理においては、適切に対応できたところもあるが、高温期定植での活着不良の問題につ いて、活着促進対策(遮光や地温抑制マルチ利用と初期潅水)が重要である。また、秋冷期の開花  温度確保と開花遅延もあり、適期定植と保温・加温開始時期の適切な判断が重要であった。
(3) 本技術は地域に定着できる技術であった。しかし、定植後の適切な栽培管理が必要となる。導入した夜冷装備は他品目での応用の可能性も高く、産地の活性化の一助になると期待される。

4 具体的結果

表1 栽培管理技術の普及指導 
  指導技術項目
(技術目標)
対象
戸数
実施
戸数
適正
戸数
課題となった点
(実施しなかった理由等)

・土壌改良、・地温抑制マルチ
・排水対策
11 11  8 ・水稲育苗床のため低pH未矯正
・排水対策不良・マルチ未実施







・適期定植・高温期活着促進(活着90%目標)
・遮光資材利用(遮光50%8月下旬まで)
・灌水(温度抑制を兼ねた多回灌水)
・病害虫防除(立枯対策、ナメクジ)
・葉かき(出蕾後)
・ネット調整(花茎曲がり防止)
・保温と加温(最低気温12℃以下の時から)
・適期収穫と品質保持(適切な保鮮処理)
11
11
10
10
10
10
10
10
11
10
10
10
10
10
 8
10
 6
 9
 8
10
 8
10
 3
10
・定植遅れ・枯死株11%以上5戸、1戸廃耕
・被覆遅れ・被覆幅が短く効果がヤヤ低下
・初期の潅水が不足

・実施時期の遅れ
 
・加温開始期の大幅遅延、判断に迷う
 

表2 現地実証の収量・品質目標到達度
項目 内容 対象戸数 達成戸数 摘要
目標収量
目標品質
定植株数の75%出荷率
上位規格品率70%出荷率
11
11
4
5
全戸平均は58%の定植株出荷率 (目標到達度77%)
全戸平均は69%の上位規格出荷率(目標到達度99%)


図1 個別出荷量と上位規格品率

表3 モデル  技術の収益性(円/10a)

 
 項 目
 
優良事例
4戸平均
実証平均
滝川11戸
地域目標
*標準モデル
道南農試
*試算 H11

出荷本数
平均単価
7,471
182
5,238
177
6,750
200
7,395
250
販売額合計 1,359,722 927,126 1,350,000 1,848,750




種苗費
肥料費
農薬費
生産資材費
動力光熱費
減価償却費
修理費
出荷雑費
出荷包装費
出荷運賃
販売手数料
332,561
18,725
6,481
149,659
112,496
131,000
2,500
11,771
52,283
136,906
114,942
332,561
18,725
5,892
143,523
82,864
114,030
2,500
8,252
36,656
95,986
78,354
332,561
18,725
6,481
149,659
123,328
131,000
2,500
10,635
47,237
123,694
114,093
739,500
25,005
58,814
163,873
120,873
264,999
2,500
(**17,048)
30,320
57,311
258,825
費用合計 1,069,324 919,344 1,059,912 1,753,791
  収益 290,398 7,782 290,088 94,959
注)*実証平均と地域目標は72穴セル育苗、道南農試は鉢上げ育苗
  注)道南農試試算 H11の(**)はハウス共済費

表4 生産者(11戸)の新技術モデル実証取り組み評価
項 目     評 価
本年の取組み良かった7戸(64%)、結果不良4戸
次年作付予定取組む8戸(73%)、未定2戸、断念1戸

5 成果の活用面と留意点
(1) 現地実証は、道央地域でのジャイアント系品種「ブルーバード」を用いた普及事例である。
(2) 普及上留意すべき技術に、ほ場の準備としての基本的な土壌改良の徹底、4.5葉苗の7月下旬
  適期定植、高温時活着管理として50〜60%の遮光と十分な灌水、10月上旬(12℃以下)の加温
  開始時期の判断がある。
(3) 夜冷育苗にかかる経費が大きいので、施設導入に当たっては性能、ランニングコスト等に
  配慮してできるだけ低廉なものを導入し、共同育苗する。

6 残された問題とその対応
  新たな品種・品目での夜冷育苗技術の適応性の検討