新品種候補 (作成 平成14年1月)
てんさい新品種候補
     「KWS9226」の概要
            道立十勝農試、北見農試、中央農試、上川農試、根釧農試、北農研
              北海道てん菜協会(日本甜菜製糖㈱、北海道糖業㈱、ホクレン)
1.特性一覧表
系統名 KWS9226
来歴 「KWS9226」は、ドイツのKWS種子株式会社が育成した三倍体単胚の
一代雑種である。平成10年に日本甜菜製糖株式会社が輸入し、
平成11年より各種試験を行った。
特性
長 所 1)根中糖分が高く、糖量が多い。
2)不純物価が低く、品質が良好で
ある。
短 所 1)褐斑病抵抗性が“弱”である。
2)根腐病抵抗性が“弱”である。
3)耐湿性が“やや弱”である。
普及見込面積   平成14年度 5,000ha   平成15年度以降 10,000ha
         系統・品種名
形 質
KWS9226 モノホマレ
(標準品種)
め ぐ み
(対照品種)
の ぞ み
(対照品種)
倍数性
葉姿
葉長
葉数
葉形
クラウンの大小
根形
分岐根
露肩
三倍体
やや開平


楕円

やや短円錐

二倍体
直立

やや多
皮針

円錐

三倍体
やや開平
やや短

楕円

円錐

二倍体
直立
やや短
やや多
皮針

やや短円錐

根重 (t/10a)
根中糖分 (%)
糖量 (kg/10a)
7.08(105)
17.11(104)
1,208(109)
6.76(100)
16.40(100)
1,105(100)
6.85(101)
16.56(101)
1,131(102)
7.08(105)
16.64(101)
1,175(106)
有害性
非糖分
(meq/100g)
アミノ態窒素
カリウム
ナトリウム
1.90( 86)
3.56( 82)
0.48( 79)
2.22(100)
4.32(100)
0.61(100)
2.19( 99)
4.56(106)
0.65(107)
1.93( 87)
3.83( 89)
0.47( 77)
不純物価 (%) 3.87( 80) 4.82(100) 4.92(102) 4.16( 86)
特性検定 褐斑病抵抗性
 
根腐病抵抗性
 
耐湿性
抽苔耐性




やや弱
やや弱
(やや弱)
やや弱
(弱)
やや弱


やや弱

やや弱




やや弱
 注1)特性検定は担当農試の成績で、褐斑病抵抗性、根腐病抵抗性における「モノホマレ」の
   ( )内は品種登録時の評価。
   2)形態的特性は十勝農試の成績。その他は十勝、北見、中央、上川、北農研、
   てん菜協会(3カ所)の計8カ所平均で、試験年次は中央農試は2カ年(H11、13)、
   他は3カ年(H11〜13)であり、( )内は「モノホマレ」に対する百分比。
 
 
2.「KWS9226」の特記すべき特徴
 根重は「めぐみ」より多く「のぞみ」並で、根中糖分は「めぐみ」、「のぞみ」より高く、
糖量が「めぐみ」より多く、「のぞみ」よりやや多い。また、不純物価は「めぐみ」より低いので、
品質が良好である。
 
 
3.奨励品種に採用しようとする理由
 昭和61年の糖分取引開始後、糖分が高く根重の少ない糖分型品種と、根重、糖分ともに
やや高い中間型品種が普及した。平成10年に優良品種に認定された「めぐみ」は、主要品種の
一つとして作付され、平成13年では約1万haに達している。その後、、中間型品種の糖分を備えて
根重が多い「のぞみ」が平成12年に優良品種に認定され、約5千ha作付されている。しかし、
近年、低糖分年が3年連続するなど農家の収益性が低下してきている。一方、最近の砂糖の
価格情勢は厳しく、砂糖製造コストの大幅な低減が求められている。これらのことから、根重が多く、
根中糖分の高い品質良好な品種が切望されている。
 
 「KWS9226」は、「めぐみ」と比較して根重が多く、根中糖分が高く、糖量が多い。「のぞみ」と比較
して根重は同等であるが、根中糖分が高く、糖量がやや多い。また、不純物価が「めぐみ」より
かなり低く、「のぞみ」よりやや低いので、品質が良好である。
 以上のことから、「KWS9226」を「めぐみ」と「のぞみ」に替えて北海道一円に普及することにより、
てんさいの安定生産に寄与できる。
 
 
4.適地
   北海道一円。
 
 
5.栽培上の注意
1)褐斑病抵抗性が“弱”なので、適切な防除に努める。
2)根腐病抵抗性が“弱”なので、適期防除に留意する。
3)排水不良な圃場での栽培は避ける。