成績概要書(2002年1月作成)
研究課題:麦類・大豆・雑穀類の遺伝資源特性情報       
担当部署:植物遺伝資源センター 研究部 資源利用科、資源貯蔵科
協力分担:な し
予算区分:道費
研究期間:1998〜2001年度

1.目的
 麦類、大豆、雑穀類遺伝資源について特性調査を実施し、遺伝資源情報の充実と活用を促進する。
 
2.方 法
供試材料:麦類1,518点〔二条大麦315点、大麦(六条)420点、小麦(春まき)250点、
     小麦(秋まき)407点、ライ小麦(秋まき)126点〕、大豆598点(うち91点は重複)、
     雑穀類539点〔あわ111点、きび252点、栽培ひえ40点、そば136点〕の計2,655点。
試験区設計:1区2.8〜8.8㎡、反復なし(一部作物で年次によっては2反復)。
耕種概要:畦幅66cm、株間9〜20cm、麦類は1点1粒播、大豆・雑穀類は1株1本立
    (雑穀類は年次により2本立以上)、その他は当センターの標準耕種法による。
調査項目:各作物ともに「植物遺伝資源特性分類階級区分」の一次評価項目を調査すると
     ともに、必要に応じてそれ以外の調査も行った。
 
3.成果の概要
1)1998年から2001年の4年間に、麦類(5作物1,518点)、大豆(598点)、雑穀類(4作物539点)の
遺伝資源について特性調査(13〜21形質)を行い、調査形質について特性値の分布を明らかに
するとともに、それぞれ特徴のある品種系統を抽出した。
 
2)道内で育種を実施している作物では、主要形質を考慮して育種上の参考となる遺伝資源を
次のように抽出した。
(1)二条大麦では、「りょうふう」より千粒重が大きく、稈長が低く耐倒伏性が優れるものとして、
「TOKAK」、「CI 14400」、「WEEAH」、「SALKA,PAJBJERG」、「BOMI」、「ND 8886」があった。
(2)小麦(春まき)では、成熟期が早く、稈長が短く、千粒重と1リットル重が大きいものとして、
「寧麦資18号」があった。
(3)小麦(秋まき)では、成熟期が早く、稈長が短く、千粒重と1リットル重が大きいものとして、
「PGR 5989」、「89115」、「BEAU」、「PGR 5110」、「P/C-8」、「P/C-34」があった。
(4)大豆では、成熟期が早く、百粒重が重い遺伝資源として、「西根27」、「PGR 5202」など
27点があった。また、熟期別に分類した中で、収量の目安として計算した百粒重×莢数の
大きい遺伝資源として、早生では「550/96(6)②」など3点、中生では「不作不知(大樹)」など9点、
晩生では「大迫9」など5点があった。
(5)そばでは、千粒重と1リットル重が大きいものとして、普通種の「PGR 2233」、ダッタン種の
「PGR 5937」、「PGR 7243」があった。
 
3)上記以外の作物では、栽培適性等が注目される、次の遺伝資源を抽出した。
(1)大麦(六条)では、草本利用型および子実利用型に適する可能性があるものとして、稈長が
ある程度高く千粒重の大きい、「QUINN」、「マシュウムギ」、「CI 5581」、「CI 9669」、「BEY」があった。
(2)ライ小麦(秋まき)では、草本利用型に適する、稈長の高い「MAD 325」、「PRAG 39/2」があり、
子実利用型に適する、比較的成熟期が早く、1リットル重の大きいものとして、「AD 349」があった。
(3)あわでは、成熟期が早く耐倒伏性が強く、千粒重が重いものとして、「軽米40」、「PGR 451」など
10点があった。
(4)きびでは、成熟期が早く、千粒重が重いものとして、粳性の「PI 173753B」など5点があり、
糯性の「黒きび」など5点があった。
(5)栽培ひえでは、成熟期が早く耐倒伏性が強いものとして、「宮古在来」、「軽米在来」など
10点があった。
 
 

図1 二条大麦における稈長と千粒重の関係および選定された遺伝資源(平成13年)
 
 

図2 春まき小麦における成熟期と千粒重の関係および選定された遺伝資源(平成10年)
  注) ヒカリ:「ハルヒカリ」、ユタカ:「ハルユタカ」、ハルアケ:「春のあけぼの」
 
 

図3 秋まき小麦における成熟期と千粒重の関係および選定された遺伝資源(平成9年播種)
  注) タク:「タクネコムギ」、ホク:「ホクシン」、チホ:「チホクコムギ」、ホロ:「ホロシリコムギ」
 
 
 
 
4.成果の活用面と留意点
 1)麦類・大豆・雑穀の遺伝資源の分類、整理のための基礎データとして利用する。
 2)一部の特性については、育種母材の選定に活用できる。
 3)試験年次により生育等が異なるので、それを考慮した上で使用する。
 4)全調査データはCD−ROMに記録して関係機関に配付する。
 
 
5.残された問題とその対応
 1)一次評価が未実施の遺伝資源については、新規課題を要望して対応する。
 2)育種場所等の要望を把握して、二次評価項目の調査をすすめることが必要である。