成績概要書(2002年1月作成)
研究課題:ねぎのハウス簡易軟白栽培(冬〜春どり)における品種特性と花芽分化条件 担当部署:道南農試 研究部 園芸環境科 協力分担:農産園芸課・北檜山町農業センター 予算区分:道費 研究期間:1999〜2000年度 |
1.目的
ねぎのハウス簡易軟白栽培(冬〜春どり)における品種特性を明らかにする。また、本作型で問題
となる花芽分化・花蕾抽出の時期について検討し、冬期のねぎ栽培ハウス管理上の資料とする。
2.方法
(1)作型:ハウス簡易軟白(冬〜春どり)
(2)標準品種:長悦
(3)栽培概要(道南農試)
試験年次 |
播種期 |
定植期 |
供試品種数 |
軟白処理開始 |
収穫期 |
H11年 |
6/29 |
9/3 |
18 |
(翌)1/13 |
3/16〜4/13 |
H12年 |
7/7 |
9/12 |
21 |
12/13 |
3/22〜4/20 |
(4)花芽分化条件に関する調査
温度条件:(5℃、7.5℃、11℃;暗黒下16時間/日)×{25日(400時間)、40日(640時間)、60日(960時間)}
供試品種:平成11および12年度に共通して供試した13品種および系統(60日処理は一部品種のみ)
3.成果の概要
(1)標準品種と評価が高かった品種の特性概要
「長悦」:本試験における標準品種。供試した品種の中では葉鞘の伸長が遅く、花芽分化・花蕾抽出時期
も遅い。分げつが多く発生することがある。軟白開始後も葉鞘の太りは良好で、収量は多い。
「NS-9811」:「長悦」と同様生育、花芽分化・花蕾抽出時期は遅い。分げつの発生が少なく、軟白開始後の
太りは良好で、多収である。
「SK5-13(冬扇3号)」:軟白開始後は葉鞘の伸びが早く、早期に収穫できる。花芽分化は「長悦」より早い
ため、収穫が遅れると花蕾が抽出する。収量はやや少ないが、分げつの発生は無く、製品の揃いが良い。
(2)花芽分化条件
1)花蕾抽出時期は品種により異なり、多くの品種は3月中旬から多く発生した。
2)栽培ハウス内では、5〜10℃の温度に最も多くの時間遭遇していた(図1)。
グロースキャビネットを使用した
温度処理試験から、多くの品種は5〜10℃の条件下に640時間(低温処理40日間)以上遭遇すると
花芽分化が促進されると思われた。実際の圃場条件下では12月下旬に花芽分化を確認していることから、
10〜12月上旬の低温に感応していると考えられた。
3)花芽分化に必要な温度条件は、品種により異なった。グロースキャビネットを使用した温度処理試験の
結果から、花芽分化の条件により5つのタイプに分類した(表2)。
これらのうち、タイプ1の
「NS-9811」「いさお」「長悦」は、他品種よりも極めて花芽分化が遅く、花蕾抽出が遅い品種であった。
図1 パイプハウス内の気温(平成11年度)
ハウス内の気温を5℃毎に6段階に分け、
それぞれの遭遇時間を累積して示した。
表 1 2ヵ年供試した全品種・系統の特性一覧(冬〜春どり)
品種および |
生育の |
花芽分化 |
収穫時の |
分げつ |
外観 |
製品 |
収量性 |
|
長悦 |
□ |
□ |
□ |
□ |
□ |
□ |
□ |
|
NS-9811 |
□ |
□ |
□ |
◎ |
□ |
□ |
□ |
|
SK5-13 |
◎ |
× |
○ |
◎ |
○ |
◎ |
□ |
|
WN-552 |
○ |
× |
× |
◎ |
□ |
□ |
△ |
|
いさお |
□ |
□ |
□ |
△ |
□ |
□ |
△ |
|
せなみ |
○ |
× |
△ |
◎ |
□ |
□ |
△ |
|
金長3号 |
◎ |
× |
△ |
□ |
□ |
△ |
△ |
|
元蔵 |
○ |
× |
× |
○ |
△ |
□ |
△ |
|
秀逸 |
○ |
× |
△ |
◎ |
○ |
□ |
△ |
|
耐寒全州 |
○ |
× |
× |
◎ |
△ |
△ |
△ |
|
冬扇2号 |
◎ |
× |
△ |
◎ |
○ |
◎ |
△ |
|
竜宮一本 |
○ |
× |
△ |
○ |
△ |
△ |
△ |
|
龍翔 |
◎ |
× |
△ |
◎ |
○ |
◎ |
△ |
|
評価 |
◎ |
早 |
遅 |
少 |
少 |
良 |
良 |
良 |
表 2 花芽分化条件による品種の分類1)
タイプ |
感応しやすい |
花芽形成に至る |
該当する品種 |
特徴および収穫時期に関する注意 |
1 |
5℃ |
左記の夜温条件に 960時間以上遭遇 |
NS-9811 いさお 長悦 |
花芽分化時期が遅く、収穫時の花蕾抽出が少ない。 4月上旬頃までは収穫可能と思われる。 |
2 |
5〜7.5℃ |
左記の夜温条件に 640時間以上遭遇 |
WN-552 金長3号 竜宮一本 耐寒全州 |
11℃程度の温度管理で花芽分化がやや遅くなる。 花芽分化時期はタイプ1より早く、花蕾抽出が無くとも 花茎は生長しているので、早期に収穫するのが望ましい。 |
3 |
7.5℃ |
左記の夜温条件に 640時間以上遭遇 |
SK5-13 秀逸 |
花芽分化時期はタイプ1より早く、花蕾抽出が無くとも 花茎は生長しているので、早期に収穫するのが望ましい。 |
4 |
11℃以下 |
左記の夜温条件に 640時間以上遭遇 |
元蔵 龍翔 |
5つのタイプのうち、最も容易に花芽分化する。花蕾抽出が 無くとも花茎は生長しているので、できるだけ早く収穫する のが望ましい。 |
5 |
− |
試験結果からは 判然としない |
せなみ 冬扇2号 |
実際の栽培条件でタイプ2と同時期に花蕾抽出する品種が 該当した。タイプ2〜4と同様、できるだけ早く収穫するのが 望ましい。 |
4.成果の活用面と留意点
産地における品種選択の資料とする。
5.残された問題点とその対応
1)花蕾抽出抑制技術の検討
2)分げつ発生条件の検討