成績概要書(2002年1月作成)
研究課題:トルコギキョウの11〜12月定植加温5〜6月切り栽培
担当部署:道南農試 研究部 園芸環境科
協力分担:
予算区分:道費
研究期間:1999〜2000年度
|
1.目 的
道内におけるトルコギキョウの主な出荷時期は8〜9月であるが、産地形成には
長期間にわたり高品質の花が安定的に供給できることが必要である。一方、
栽培方法に関しては秋期切り栽培の検討は既になされているものの、春期切り
については検討されていないため情報が極めて少ない。そこで本試験では
採花期を早めるための条件を探り、効率の良い加温方法を検討することを目的とした。
さらに、播種期が高温に遭遇する可能性があることから、株のロゼット化の問題等に
ついても検討した。
2.方 法
1) 定植期・加温温度と採花期、切り花品質
(1) 試験処理 加温温度 5処理系列(単位:℃)
|
定植〜1月31日 |
2月1日〜3月16日 |
3月17日〜 |
処理1 |
5 |
12 |
15 |
処理2 |
10 |
12 |
15 |
処理3 |
10 |
12 |
18 |
処理4 |
10 |
15 |
15 |
処理5 |
10 |
15 |
18 |
(2) 播種期(定植期) 1999年8月16日(10月12日)、9月16日(11月15日)、10月15日(12月15日)
(3) 供試品種 あずまの波、ネイルマリンネオ
2) 播種期の違いとロゼットの発生
(1) 試験処理 育苗時温度管理 2水準(夜温成り行き育苗、冷房育苗(夜温15℃))
播種期 4水準(2000年8月16日、9月1日、9月18日、10月2日)
(2) 夜温15℃育苗条件 夜間19時から翌5時までの間は15℃に設定し、日中は成り行きとした。
3) 明期延長処理と採花期(照度に関する試験)
(1) 試験処理 照度2水準(無処理、40Lux(16時間日長))
(2) 定植期 2000年11月16日
4) 加温方法が採花期、切り花品質に及ぼす影響
(1) 試験処理 加温方法3水準(無処理、地中加温トンネル、温風加温トンネル)
定植期3水準(2000年10月12日、11月16日、12月25日)
5) 品種の早晩性と採花期
(1) 供試品種 あずまの波、ネイルマリンネオ、あずまの萌黄、あすかの調、ニュースモールバイオ
レット、マイテレディ
3.成果の概要
1) 厳寒期(定植から1月下旬)には加温温度を10℃に設定し、2月以降に加温温度を
上げることが必要と考えられた。
2月以降の加温温度が高いほど、定植から採花までの
日数が短くなった。特に、5月中に採花するには2月〜3月上旬を
15℃に、3月中旬〜採花
までを18℃に設定する必要があった(表1)。12月定植系列は11月定植系列と比べて
切り花
品質が向上すること、11月定植より暖房コストがわずかに低いことを考慮し、
6月に採花する場合においては12月に定植することが望ましい。
2) 育苗時においては高夜温(20℃以上)の他に日中の高温(30℃以上)も株のロゼット化の
原因となりうるため、
自家育苗をする場合は9月中旬以降に播種(11月中旬以降に定植)する
ことが望ましい(表2)。
3) 加温温度を12℃以上に上げる時期(2月上旬)以降に電照の効果があり、この場合
40Luxの照度でも電照の
効果があった(データ省略)。
4) トンネルを用いた加温方法(地中加温、温風加温)のいずれも採花期を早めた。しかし、
地中加温を選択する場合は
葉先枯れを起こしにくい品種を選ぶ必要があると考えられた。
また、色流れの発生しやすい品種を選択時に
避ける必要がある(データ省略)。
5) 中生〜中晩生の品種は切り花品質に優れたが、早生系品種に比べて採花期が3〜4週間遅く、
本作型には不適であった(表3)。
6) 本作型は作期拡大による有利販売が見込めるものの、生産費に占める暖房費の割合が高く、
燃料単価が所得に
影響していた(図)。そのため、導入に当たっては加温コスト等収益性に影響を
与える事項を考慮する必要があった。
表1 加温温度の違いと採花期・切り花品質(1999年定植)
定植期 |
加温温度 |
採花期 |
切花重 |
切花長 |
分枝数 |
有効 |
|
(月.日) |
(g) |
(cm) |
|
花蕾数 |
10月 |
5-12-15 |
5.28 |
49.6 |
86.1 |
3.0 |
11.1 |
10-12-18 |
5.30 |
46.8 |
79.5 |
2.9 |
11.6 |
10-12-18 |
5.23 |
45.7 |
72.7 |
3.2 |
11.6 |
10-15-15 |
5.22 |
55.6 |
78.6 |
3.1 |
12.9 |
10-15-18 |
5.7 |
61.6 |
85.6 |
4.0 |
12.4 |
11月 |
5-12-15 |
6.7 |
68.5 |
88.0 |
3.6 |
13.1 |
10-12-18 |
6.8 |
77.3 |
85.8 |
4.8 |
15.7 |
10-12-18 |
6.8 |
51.2 |
75.0 |
3.1 |
12.6 |
10-15-15 |
5.28 |
58.7 |
76.6 |
3.3 |
13.0 |
10-15-18 |
5.21 |
47.2 |
72.2 |
2.5 |
11.8 |
12月 |
5-12-15 |
6.14 |
95.5 |
92.0 |
4.8 |
18.9 |
10-12-18 |
6.13 |
83.8 |
88.2 |
4.2 |
18.1 |
10-12-18 |
6.7 |
64.7 |
79.0 |
3.6 |
14.3 |
10-15-15 |
6.10 |
63.1 |
82.2 |
4.0 |
14.7 |
10-15-18 |
5.28 |
71.1 |
85.7 |
3.4 |
15.4 |
※加温温度 定植〜1月31日-2月1日〜3月16日-3月17日〜採花期数値は2品種の平均
表2 播種期・育苗時の温度管理の違いとロゼット発生率(2000年定植)
播種期(定植期) |
ロゼット発生率(%) |
夜温成り行き育苗 |
|
夜温15℃育苗 |
ハウスA |
ハウスB |
平均 |
ハウスA |
ハウスB |
平均 |
8月16日(10月12日) |
13.3 |
1.7 |
7.5 |
11.9 |
0.0 |
6.0 |
9月1日(10月31日) |
11.7 |
37.0 |
15.8 |
6.7 |
6.7 |
6.7 |
9月18日(11月16日) |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
10月2日(12月6日) |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
※品種:あずまの波。ハウスA:ポリカーボネート硬質ハウス、ハウスB:簡易パイプハウス
調査日:2001年3月23日
表3 採花期に関する品種間差(2000年定植)
品種 |
早晩性 |
採花期(月.日) |
ハウスA |
ハウスB |
平均 |
あずまの波 |
早生 |
5.24 |
6.4 |
5.30 |
ネイルマリンネオ |
早生 |
5.21 |
5.28 |
5.25 |
あずまの萌黄 |
早生 |
5.21 |
5.30 |
5.26 |
あすかの調 |
中生 |
6.11 |
6.25 |
6.18 |
ニュースモールバイオレット |
中晩生 |
6.14 |
7.2 |
6.26 |
マイテレディ |
中晩生 |
6.7 |
7.2 |
6.20 |
※ハウスA:ポリカーボネート硬質ハウス、ハウスB:簡易パイプハウス
加温条件 定植〜1月31日:10℃、2月1日〜3月10日:
15℃、3月11日〜採花期:18℃、内張農ビ、ポリトンネル
表4 トルコギキョウの11〜12月定植加温5〜6月切り栽培におけるポイント
作業内容 |
5月切り栽培 |
6月切り栽培 |
定植期
加温温度 |
・11月中旬(9月中旬播種)
・定植〜1月下旬:10℃
2月〜3月上旬:15℃
3月中旬〜採花:18℃ |
・12月中旬(10月中旬播種)
(特に、定植時の地温確保に努める。) ・定植〜1月下旬:5℃
2月〜3月上旬:12℃
3月中旬〜採花:15℃ |
品種選択
加温方法
電照処理 |
・極早生〜早生の品種の中から、色流れや葉先枯れの出にくい品種を選択する。
・3重被覆(外張農ビ、内張農ビ、ポリトンネル)とし、温風ダクト等をトンネル内に設置する。
・加温温度を上げる時期(2月)から電照を開始する(40lux程度、電照時間 16:30〜23:00)。 |
4.成果の活用面と留意点
1) 本成績は11〜12月定植加温5〜6月切り作型に適用する。
2) 適用地域は道南地域およびこれに準じた地帯とする。但し、暖房費が生産費に占める割合が
高 いので、収益性を判断した上で導入する。
5.残された問題とその対応
1) 品質向上のための条件の検索