成績概要書(2002年1月作成)
研究課題:小鉢シクラメンのセル成型苗直接定植栽培       
担当部署:花・野菜技術センター研究部花き科、園芸環境科
協力分担:
予算区分:道単
研究期間:1996〜2001年

1.目的
 消費が伸びている小鉢シクラメンを大量生産するためには、低コストで省力的な
栽培法の確立が必要である。そのためには多大な労力を要する鉢上げ作業を
行なわないセル成型苗の直接定植栽培が有効と考えられる。そのため、
小鉢シクラメンのセル成型苗直接定植栽培法体系化の一環として、育苗のための
セルサイズ・播種期・定植期の設定と直接定植後の肥培管理法とについて検討する。
 
2.方法
 1.発芽試験
  1)供試品種:ミニ系 5品種、中大輪系 3品種  2)温度:10、15、20、25、30℃
 2.セルサイズ・播種期・定植期の設定
  1)供試品種:ミニ系12品種、中大輪系4品種  2)試験区:3.5号鉢直接定植:セルサイズ3水準
   ×播種期6水準×定植期7水準、慣行(1回鉢上げ)、供試個体数 1区5〜100鉢
  3)栽培 C鋼によるひも利用底面給水、ガラス温室
 3.肥培管理法
  1)供試品種:「シューベルト」、「ディキシーピンク」
  2)処理:定植1週後から、液肥(N;0、25,50,75,100,150,200ppm)を1週間毎に
  100ml/鉢を施用し、適宜給水。 一週間当たりの窒素施用量は濃度100ppmでN10mg/鉢に相当。
  3)育苗:Ⅰに準ずる 4)鉢上:4月24日・4号鉢(2000年)、5月22日、3.5号鉢(2001年)
 
3.成果の概要
 1) 発芽適温は15〜20℃で、品種によっては25℃でもよく発芽した(図-1)。
 2)セル成型苗直接定植栽培により早生系のミニ系シクラメンは11月以降、極早生系の
ミニ系シクラメンは、 10月中旬以降の出荷が可能である。
 3)セル成型苗直接定植栽培における育苗には72穴セルの使用が安全であると考えられるが、
「ディキシーピンク」 などの極早生系品種では200 穴セルを利用できる(図-2)。
 4)3.5鉢号仕立てに適したセルサイズ・播種期・定植期の組み合わせは次のとおりである。
  「プチエンジェルライトピンク」(早生系):1月中旬〜下旬に72穴セルに播種し、5月下旬に
直接定植する(図-3、7)。
  「ディキシーピンク」(極早生系):1月下旬に72穴から200穴までのサイズのセルに播種し、
5月下旬に直接定植する(図-4、7)。
 5)1週間当たり窒素施用量N10mg/鉢で開花始め期の葉数が最も多くなり、それ以上濃度が
高くなると減少した。供試した「シューベルト」と「ディキシーピンク」も同様な傾向を示すことから、
シクラメンの小鉢栽培に対する底面給水法の窒素施用量は1週間当たりN10mg/鉢(100ppm;100ml)が
適当と思われた(図-5)。
 6) 展開葉10〜15枚の生育ステージで、葉柄の硝酸態窒素含有率は50ppm、75ppm区でも
100ppm区とほぼ同じ値を示したことから、生育の若い段階での供給量は100ppmより低いレベルで
管理する必要があると思われた(図-6)。
 
 

図-1 温度別発芽率(「プチエンジェルライトピンク」、1997)
 
 

図-2 直接定植と1回鉢上げとの出荷可能鉢数割合の比較(「ディキシーピンク」、2001)
 
 

図-3 播種期・定植期別開花数(「プチエンジェルライトピンク」、1999)
 
 
 
図-4 セルサイズ別開花数(「ディキシーピンク」、2001)
 
 

図-5 液肥の窒素濃度と開花始めの生育(2001年)
 
 

図-6 液肥の窒素濃度と葉柄硝酸の推移(2001年)
 
 
 
4.成果の活用面と留意点
  1)本試験における灌水は、ひも利用底面給水方式により行ったことに留意する。
  2)小鉢シクラメンのセル成型苗直接定植は、当面、ミニ系の極早生〜早生系品種に適用する。
 
 
5.残された問題点とその対応
  1)新品種への対応
  2)簡易診断にもとづく生育ステージに対応した肥培管理法