成績概要書(2002年1月作成)
研究課題:剥離型連続紙筒育苗(バイピッチ移植システム)によるたまねぎ栽培       
担当部署:花野技セ 研究部 野菜科、北見農試 作物研究部 畑作園芸科
協力分担:
予算区分:受 託
研究期間:1999〜2001年度

1.目 的
剥離型連続紙筒育苗(バイピッチ移植システム)は、連続紙筒(チェーンポット)の紙を
引き剥がしながら 移植する方式で、任意に株間が設定できるため各種移植作物での
利用が可能である。この育苗法では発芽 の安定、苗質の向上と圃場における生育促進
も期待できることから、たまねぎの通常の春まき普通播種栽培での 実用性に加えて、
より育苗、定植時の環境条件が厳しい春まき早期播種や秋まき栽培での実用性も検討する。
 
2.方 法
 表1 供試育苗ポットの規格
供試ポット サイズ(mm) 1冊・トレー
口径 高さ 苗数(本)
剥離型連続紙筒BP303 30 30 264
25 30 364
22 30 480
(参考)慣行紙筒ソ-1-B 19 43 646
(参考)みのる成型 16 25 448
 注)培土は専用培土を使用

表2 供試作型、品種
場所 年次 作型 品種
花野 99,00,01 春まき普通播種 カムイ
技セ 99,00 秋まき 北早生3号
北見 00,01 春まき早期播種 北早生3号
農試 00,01 春まき普通播種 カムイ
 
3.成果の概要
1)「剥離型連続紙筒」育苗では、「みのる成型」育苗に較べて発芽率や成苗率が安定
して高く、苗生育や   定植後の生育も良好な傾向が認められた。この傾向は口径の
大きな紙筒ほど強く、葉部の生育量増大、肥大期や倒伏期の前進、一球重の増加など
への効果も認められた。
2)この効果は、厳寒期に育苗を開始する春まき早期播種栽培や夏期高温期育苗で
成苗率の確保・越冬前の   生育量確保による越冬率向上が求められる秋まき栽培で、
より高い傾向が認められた。
3)「剥離型連続紙筒」育苗では球肥大が旺盛な場合に分球、変形球や裂皮球の発生が
増加する傾向が認められ、球肥大が最も旺盛となる「BP303」では規格内収量が低下
する事例もあった。
4)以上の様に「剥離型連続紙筒」育苗は、通常の春まき普通播種栽培において生育促進、
増収効果を示すが、春まき早期播種あるいは秋まき栽培でより高い効果が認められる
ことから、早期出荷などを目指したたまねぎの作型でより適応性の高い育苗方法と
判断される。より大きな生育促進、球肥大効果を求める場合には「BP303」あるいは
「BP253」、苗床所要面積も考慮する場合や良好な球肥大が想定される条件下などでは
「BP223」あるいは「BP253」の選択が適当と考えられる。
 
 
 表3 各作型での生育、収量に関する剥離型連続紙筒育苗の評価
作型 ポット種類 成苗率 苗生育 圃場生育 越冬率 倒伏期 一球重 規格内率 規格内収量
春まき BP303
普通 BP253
播種 BP223
春まき BP303
早期 BP253
播種 BP223
秋まき BP303
BP253
BP223
 注)みのる成型育苗を基準として ◎優れる、○やや優れる、□同等、△やや劣る、×劣る
 
 
 表4 各作型における育苗方法と生育、収量
作型
 場所
 年次
育苗方法 発芽1)

(%)
定植苗
葉鞘径
(mm)
圃場生育2) 越冬
株率
(%)
倒伏期

(月日)
平均
一球重
(g)
規格内3)

(%)
規格内
球重
(kg/a)
草丈
(cm)
葉数
春まき普通播種栽培
花野1999 BP253 5.1 94 7.2 7/31 183 99 583
(参)ソ-1-B 3.7 82 6.3 8/6 135 100 425
(参)みのる成型 4.0 90 7.0 8/3 151 97 489
花野2000 BP303 98 4.8 88 10.3 7/30 200 94 561
BP253 96 4.3 85 10.3 7/30 189 97 539
BP223 98 4.1 84 10.2 7/30 172 98 443
(参)ソ-1-B 98 3.9 83 10.0 7/29 170 93 429
(参)みのる成型 97 4.0 84 10.1 8/1 166 95 470
花野2001 BP303 97 5.6 90 10.5 7/29 244 100 595
BP253 97 5.0 92 10.6 7/31 226 96 589
BP223 95 4.6 85 9.8 8/1 228 99 518
(参)ソ-1-B 98 4.0 85 9.1 8/8 196 99 531
(参)みのる成型 91 4.3 85 10.1 8/6 215 97 579
北見2000 BP303 99 4.0 64 7.0 7/30 235 95 694
BP253 99 3.7 59 6.9 7/31 214 96 644
BP223 98 3.7 58 6.6 7/31 226 97 684
(参)みのる成型 97 4.0 35 5.7 8/9 134 98 399
(参)地床 3.4 35 5.6 8/7 151 99 454
北見2001 BP303 100 4.4 79 9.0 8/11 223 79 505
BP253 99 3.9 76 8.7 8/11 185 88 437
BP223 100 4.0 74 8.5 8/14 183 92 441
(参)みのる成型 89 3.0 36 5.9 8/26 136 93 365
(参)地床 2.9 36 5.5 9/4 120 93 284
春まき早期播種栽培
北見2000 BP303 95 3.3 83 9.3 7/15 278 92 793
BP253 94 3.6 90 9.6 7/14 278 90 757
BP223 96 3.0 87 9.1 7/14 248 95 723
(参)みのる成型 89 3.2 81 9.4 7/15 198 98 590
(参)地床 4.1 84 9.3 7/17 189 96 549
北見2001 BP303 92 3.3 71 9.4 7/21 259 58 463
BP253 95 2.9 72 9.4 7/21 250 69 528
BP223 96 2.5 70 9.2 7/22 231 73 530
(参)みのる成型 88 2.4 52 7.8 8/4 145 71 319
(参)地床 2.6 56 7.7 7/29 165 83 398
秋まき栽培
花野99-00 BP303 93 4.1 27 4.5 97 6/27 229 92 643
BP253 96 3.9 26 4.1 95 6/26 188 91 492
BP223 93 3.9 24 3.9 96 6/28 206 98 598
(参)みのる成型 69 4.1 25 3.9 96 6/27 196 97 582
花野00-01 BP303 89 3.8 25 3.0 92 7/6 211 99 442
BP253 94 3.2 26 2.7 88 7/6 179 97 316
BP223 92 3.0 23 2.7 79 7/7 155 94 234
(参)みのる成型 81 3.6 19 2.2 58 7/11 172 95 201
 1)秋まきでは成苗率
 2)春まきでは7月の生育最盛期、秋まきでは越冬前生育
 3)北見2001年普通播種、北見2000,2001年早期播種および花野99-00年秋まき栽培の
「BP303」や「BP253」での低下は主に分球、変形、裂皮球の発生による
 
 
4.成果の活用面と留意点
1)導入の検討にあたっては4条移植機が普及している「成型ポット式」育苗に較べて移植作業能率の
  劣る点、「BP303」や「BP253」では苗床所要面積が大きい点に留意する
2)球肥大が旺盛となる条件では「BP303」や「BP253」で分球等規格外球の発生が多くなることがある。
  この様な条件下では早めの根切り処理の実施などに留意する
 
5.残された問題とその対応