成績概要書(2002年1月作成)
研究課題:メロンハウス栽培における保温性強化農業用
       ポリオレフィン系フィルム「クリンテートDX」の実用性       
担当部署:上川農試 研究部 畑作園芸科、花野技セ 研究部 野菜科
協力分担:
予算区分:受 託
研究期間:1998、2001年度

1.目 的
農業用ポリオレフィン系フィルムは焼却時に有害ガスの発生が少ないが、保温性は
農業用塩化ビニル フィルムに比較して劣るとされてきた。保温性を強化した農業用
ポリオレフィン系フィルム(資材名「クリンテートDX」) についてメロンハウス栽培における
温度や湿度の推移の特徴、それがメロンの生育や収量に及ぼす影響を 農業用
塩化ビニルフィルムと比較、検討し、その実用性を確認する。
 
2.方 法
1)調査実施年次および場所
  1998年 上川農業試験場、 2001年 花・野菜技術センター
2)調査資材(各資材ハウス1棟)
  検定資材:保温性強化農業用ポリオレフィン系フィルム「クリンテートDX」
  対照資材:農業用塩化ビニルフィルム「ノービエース」、厚さは両資材とも0.1mm
3)供試品種と栽培期間(栽培は両農試標準栽培法による)
  上川農試:キングメルテー・キングナイン、定植日;5月15日 収穫日;8月2,18日
  花野技セ:ルピアレッド、定植日;5月25日 収穫日;8月10〜18日
4)温湿度の測定
  栽培期間中ハウス内中央部マルチ上10cmと1mの温湿度(上川農試、花野技セ)
  10月上旬閉鎖ハウス内中央部地上10cmと1mの温湿度(花野技セ)
 
3.成果の概要
1)上川農試における5月中旬定植、8月上・中旬収穫のメロンハウス栽培の調査では、
「クリンテートDX」ハウス内の気温は「ノービエース」に比較して、マルチ上1mでは
やや低かったが、マルチ上10cmでは差が無く、このためメロンの生育、収量には
明らかな差は認められなかった。
2)花野技セにおける5月下旬定植、8月中旬収穫のメロンハウス栽培の調査では、
ハウス内の気温の推移、メロンの生育、収量ともに「クリンテートDX」および「ノービエース」に
明らかな差は認められなかった。
3)花野技セの10月上旬の閉鎖状態ハウスの調査では、夜間および曇雨天日の気温には
両資材の差は認められなかった。しかし、晴天日・日中の気温上昇が地上10cmでは
差が認められなかったものの地上1mでは 「ノービエース」で大きかった。これは、
農業用塩化ビニルフィルムの光線透過が「直達光型」であるのに対して農業用
ポリオレフィン系フィルムでは「拡散光型」であることに起因したと考えられ、上川農試での
マルチ上1mの気温の差異に原因した可能性も考えられる。
4)農業用ポリオレフィン系フィルムハウスでは農業用塩化ビニルフィルムハウスより
乾燥しやすいとの指摘もあるため、ハウス内湿度の測定を行ったが、「クリンテートDX」で
相対湿度が明らかに低いという事例は認められなかった。
5)その他、従来から上げられている農業用ポリオレフィン系フィルムと農業用塩化ビニル
フィルム間の物性の差異は   認められたが、「クリンテートDX」に展張作業時や栽培期間中の
作業性、強度などで特に実用上支障となる問題点は観察されなかった。
6)以上、夜間および曇雨天時の気温の推移から「クリンテートDX」の保温性は「ノービエース」
と同等であり、日中晴天時の閉鎖ハウスの中上層部の気温上昇には光線透過性の違いによる
と考えられる差も認められるが、日中晴天時の換気が通常行われる時期のメロンハウス栽培
では「クリンテートDX」は「ノービエース」と同等のハウス被覆フィルムとしての実用性を有すると
判断される。
 
 
 表1 メロン栽培中のハウス内平均気温の推移
期間 上川農試(1998) 花野技セ(2001)
マルチ上1m マルチ上10cm マルチ上1m マルチ上10cm
クリンテートDX ノービエース クリンテートDX ノービエース クリンテートDX ノービエース クリンテートDX ノービエース
5月下旬 21.9 22.6 21.7 21.9 23.5 23.2 22.8 22.5
6月上旬 20.5 21.5 20.7 21.1 23.0 22.8 22.6 22.3
中旬 19.9 20.5 20.1 20.0 21.1 21.1 21.1 20.6
下旬 22.4 23.5 22.9 22.5 25.3 25.2 25.0 25.1
7月上旬 21.7 22.3 22.0 21.7 23.4 23.1 23.2 23.5
中旬 22.1 22.9 22.4 22.5 24.4 24.3 24.3 24.7
下旬 23.1 23.7 23.7 23.2 24.7 24.6 24.9 25.1
8月上旬 22.1 22.0 23.1 23.1
中旬 25.4 25.4 27.2 26.8
全期間 21.7 22.4 21.9 21.9 23.6 23.5 23.8 23.7
 
 
 表2 メロンの生育、収量
試験
場所
年次
品種 資材 着果期
(月/日)
着果率
(%)
成熟
日数
(日)
ネット1)
密度
果径2)
1果重
(g)
糖度
(Brix)
収量
(kg/a)
上川農試1998 キングメルテー クリンテートDX 6/13 100 51 3 1.20 1640 15.2 356
ノービエース 6/13 97.8 52 3 1.20 1801 15.1 391
キングナイン クリンテートDX 6/17 92.5 63 3 1.15 1814 17.4 387
ノービエース 6/17 95.5 62 3 1.14 1778 17.3 374
花野2001 ルピアレッド クリンテートDX 6/26 98.2 50 2.8 1.08 1972 14.4 329
ノービエース 6/25 96.7 50 3.0 1.05 1929 13.5 310
 1)1;粗〜5;密   2)縦径/横径
 
 
図1 晴天日における密閉ハウス内の温度推移(2001/10/7花野技セ)

4.成果の活用面と留意点
1)5月中・下旬定植、8月上・中旬収穫のメロンハウス栽培において主に得られた成績である
2)摩擦強度がやや劣るなどの取り扱いの注意点は他の農業用ポリオレフィン系フィルムと同様である
 
 
5.残された問題とその対応
1)加温を必要とするような低温期のメロンハウス栽培における適応性の検討
2)耐用年数の検討